第178話:小賢しい連携
「ツモ。1,300・2,600は1,400の2,700」
東1局一本場。
今度は恵が和了った事で、あっという間に下家は飛んでしまった。
「悪く思わないでよ。優勝の為には2位キープも大事だから」
指をアルコールで拭く恵。
「私と花澤さんは別に組んでる訳じゃない。でも優勝への足掛かりはなんだって利用するわ」
「……はいはい。そうですか」
下家が飛んでしまったせいで、結局1回戦目は和弥は3位に終わった。
「それでは2回戦目まで10分間の休憩です!」
係員の声が鳴り響く。
(まあいい…。やっと麻雀打っている気になってきたぜ…)
ゆっくりと控室に戻る和弥である。
◇◇◇◇◇
「ただいま」
ドアを開けるなりそのままドカリ、と座り込む和弥。
先ほどの闘牌を見ていただけに、小百合・由香・今日子・紗枝は何とも言えない。
やはり麗美も恵も、今日はエンジン全開での参加である。団体戦決勝のようなふざけた麻雀は打たないハズだ。彼女達を相手に、私は勝ちきれるのだろうか……。
「……」
和弥は深呼吸をした。
(───1回戦目が終わったばかりで弱気になってどうする。俺にできることは、余計な感情を捨て、その場その場で最善の一打を打ち続けること。それ以外には何もねぇ)
首や指の骨をパキパキと鳴らす和弥。その様子を見ていた龍子は安心したような表情を浮かべる。
「君の表情が私と打った時のように戻って、ちょっと安心したよ」
「……そんなしょぼくれた顔に見えましたか」
勿論龍子には団体戦で麗美と恵が手を抜いたのは知っていた。
だからこそ、和弥の精神状態が心配になっていたのだ。
「舐めすぎですよ先生。俺があんなので取り乱すワケがない」
「へぇ。そんなこと言ってるようじゃ、私と恵ちゃんに潰されるわよ?」
声の主は、いつの間にか控室に入ってきていた麗美だった。
「……他校の控室によくもまあ、ノックも無しに入ってくるな」
麗美と目線も合わせず一瞥する和弥。
とはいえやはり、極道の娘らしいふてぶてしさに安堵は隠せなかった。そう、こういう勝負がしたいのだから。
「綾乃は?」
「いないという事はまだ打っているという事だろう。不正防止のため競技中に他校の生徒の控室に入ってはいけない、という規約を知らないワケではあるまい?」
龍子もすかさず麗美をけん制する。
「はいはい。んじゃ、邪魔者は出ていくね」
「ああ。今日はこっちも熱くなれるようで安心したよ」
麗美は最後に微笑みかけてくれてから、外へと出ていった。
(上等だ。その余裕をぶっ壊してやる)
未だに小百合・由香・今日子・紗枝の4人は事情を呑み込めずオロオロするばかりである。
『個人戦完全競技ルール決勝戦・2回戦目を行います。各校代表は受付に集合して下さい』
控室にアナウンスが響き渡った。
「んじゃ行ってくる」
和弥もゆっくりと立ち上がり、部屋から出ていく。
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