第177話:ギア全開
「竜ヶ崎くん。私ももう決勝に行くから。頑張ってね」
裏ドラのみ有りの準競技ルールに出る綾乃は、立ち上がって控室から出ていく。
「ああ。頑張れよ先輩も」
目線も合わせず綾乃を激励する和弥。
準決勝で3位に転落、敗退した小百合は気が気ではないのか、やはり和弥に近づいてきた。
「竜ヶ崎くん…。団体戦では圧勝したんですもの、大丈夫よね?」
やはり小百合は麗美と恵が、決勝では手を抜いて打ったのに気が付いていないのだ。
「大丈夫だってさゆりん! あたし達のエースが負ける訳ないじゃん!!」
こちらも一日おいてもまだ興奮が冷めきってない由香である。
その光景を見ていた龍子は複雑な表情を浮かべたが、和弥の視線に気が付いたのか慌てて目を逸らした。いつも感情を露わにしない龍子にしては珍しい。
(頼むぜ先生。余計な事は言わんでくれよ…)
「俺が負ける訳ねぇだろ。それじゃあ行ってくる」
和弥はゆっくり控室の扉を開けて出ていった。
◇◇◇◇◇
個人戦・完全競技ルール決勝。
いよいよその幕が開ける。
仮親の和弥がサイコロボックスのスイッチを押す。目は2と2の4である。和弥は南家からスタートになった。上家に座った麗美のツモ山から牌を取っていく。
ドラは九筒。和弥の配牌。
(悪くはない…。この女の事だ。今回もワザと手を抜く、なんてことは絶対ないはずだ。起家では連荘して、周りとの差を広げてくるはず…)
その麗美の第一打はなんと、五萬である。
(チ。ブラフじゃなさそうだな。いきなり国士はないだろうが全帯公か純チャンならあり得る)
7巡目。ドラをツモって麗美の聴牌。
(ドラ引きで聴牌…。六萬か六筒なら即リーだったけど、この手は伸びる。いつもなら親だから平和・ドラ3でOKだけど。『押さば押せ、引かば引け』よね、新一さん…? 完全競技ルールで7巡目なら全然イケイケだわっ!!)
麗美は迷わず五索を切ってダマテンを選択。
(張りやがったな…)
8巡目は無駄ヅモだったが───。
9巡目。ツモは一索だった。
(来てくれた…)
すかさず四索に手をかける麗美。
「リーチ!」
やはり予想通り。団体戦決勝は流していただけらしい。
(一度様子を見て、五索・四索落として手替わりしてからのその捨て牌でリーチか。萬子の上は勝負にはいけないな)
まだ東1局。ここは我慢の時だ。和弥は現物を合わせ打つ。
しかし同順。下家もタンヤオ・三色の勝負手をテンパっていた。
多少迷う下家。
しかし競技である以上、打牌に時間をかけてもいられない。
(あの捨て牌に九萬は危ない…。けど、萬子の上は完成してる可能性に賭けるしかないっ!!)
カチャリと点棒箱を開ける。
「リーチッ!」
横に曲げた打牌は九萬だった。
「ロン」
ゆっくりと手牌を倒す麗美。高めのメンピン・純チャン・イーペーコー・ドラ3の親倍。
「24,000」
「……はい」
弱々しく点棒を渡す下家。あっという間に下家は飛ぶ寸前である。
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