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第169話:不気味な沈黙

「やるじゃない」


 8,000点を手渡した恵は、牌を落としながら笑う。


「最初から精が出るわね」


「そりゃあ、勝つためにここに来てるんだしな」


 親倍を和了アガったというのに恵も、そして麗美もまるで焦った様子などない。


(随分とまあ、余裕だな。ひょっとしてマジで団体戦捨てているのか…?)


 ハッタリではないのかもしれない。しかし、それも関係ない事だ。

 だったら自分が和了り続けるだけ。

 トン2局・一本場。


 最高のスタートを切った一本場となった卓上。しかし…


「ツモ。500・300は600・400」


 和了ったのは上家カミチャである。


(………ここまできて、まだ久我崎と陵南渕に目立った動きはなしか。ま、楽に優勝出来るならそれに越した事はない。あと6局、このまま黙っててくれればいいんだがな)


 東2局。親は恵。


「ツモ。500・1,000」


 今度は麗美の安手和了りだった。しかしタンピン三色の手を鳴いて落としている。

 少なくとも麗美は東1局で親倍を和了った相手に対し、こんなヌルイ麻雀は打たない筈だ。


(………)


 和弥は純チャン三色の一向聴イーシャンテンだった手牌を、パタリと伏せる。


(どういう事だ…。優勝する気がないのか?)


 控室でも立川南麻雀部の部員は一斉にザワつく。


「久我崎の部長って、本気出してる?」


「親流しだけであんな勿体ない…。一発も裏もあるのに」


 流石に今日子と紗枝も違和感しか感じなかった。

 しかし、それは今日子と紗枝だけではない。麗美と付き合いは長い綾乃も、流石にワザと手を落としているような麗美の打牌に違和感を感じ始める。


(何を考えてるのハナちゃん…? ひょっとして本当に手を抜いてるの…?)


 もっとも副将戦の敗北が未だに尾を引いてる小百合だけは、もう必死に応援していたが。

 唯一チャンスと見たのか必死になっているのは上家カミチャだけである。


(久我崎も陵南渕も不調なのか…? だったらこれはチャンスだ!)


 東3局。ドラは二萬。


「ポン!」


 威勢良く鳴く上家。次巡。


「チ―!」


 2面子(メンツ)(さら)しである。


(張ったなこいつ…。それにしても久我崎の部長、全然牌を絞る気がねぇな)


 7巡目。


「ツモ! 3,900・2,000!」


(……間違いねえ。遊んでるだけかこの2人)


 別に舐められたとは感じない。だったら敵は上家一人という事になるのだから。

 東4局(トンラス)


「ツモ! 2,000オール!!」


 完全に上家が勢いづいている。


「一本場だな」


(……こんな繰り上げで決勝進出したような奴に、大きな顔されるのも気分いいもんじゃないな…)


 手牌はバラバラである。


(……)


 16巡目。


(立川南の手は完全に国士か…。普通トップなんだから南場ナンバに備えてポイント確保だろうに…)


 赤五筒も平然とツモ切りする和弥。聴牌テンパイ気配が濃厚だ。


「!?」


 上家の彼の手にきたのは、4枚目の一索である。


(こ、これだけは絶対切れん…!)


 仕方なく平和聴牌を崩して降りる上家。


「ラス前ツモか」


 和弥はツモ牌を確認もせず、先に西シャを切った。


(よし! 奴もオリてくれたっ!!)


 最終巡。上家がツモったのは二筒。

挿絵(By みてみん)

(張り直した!!)


 安心して一索を捨てる上家だったが───


「ロン」


 無表情に手牌を倒す和弥。


「はあ?」


「「!?」」


 これには上家だけではない。麗美と恵も驚いた。


「お前! ツモ牌確認もせず西を切ったろ!?」


「だってそうでもしないと一索切ってくれないだろ」


 思わず声を荒げ、係員に注意される上家。


「……。それが中張牌チュンチョンパイだったらどうすんの? チョンボだよ?」


 麗美も半ば呆れたような表情を浮かべている。


「じゃあ見てみるか」


 ツモった牌をめくる和弥。めくった牌はチュンだった。

挿絵(By みてみん)

「32,300」

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