第167話:敗退危機
「ご、ごめんなさい…」
結局3回戦目も最下位になり、控室に戻って来た小百合の顔面は文字通り蒼白だった。
「そんなトイレットペーパーとペーパータオルを間違って買ってきたような、しんみりしたような顔してんなよ」
(なんでトイレットペーパーとペーパータオル買い間違えてしんみりするワケよ…)
和弥の慰めに対し、思わず心の中で突っ込む今日子である。
これで立川南はポイントは3位に転落。決勝3回戦の内2回はトップが必要になった。
しかも相手には花澤麗美、さらに陵南渕の発岡恵までいるのだ。
「ねえ竜ヶ崎くん」
「ん?」
「…勝ってね?」
いつも作り笑いを浮かべてる綾乃が、珍しく真剣な表情だ。
「勝つ気がないなら卓に座らねぇし、第一ここに入部してないって」
『これより団体戦・大将戦を行います。出場選手は受付までお願いします』
アナウンスが控室に鳴り響く。
「だとさ。行ってくる」
◇◇◇◇◇
「よ! 君とまた打てるのを楽しみにしてたんだよ!」
和弥を見るなり、不敵な笑みを浮かべる麗美。それは恵も同様だった。
「明後日の個人戦の決勝でも会うだろ」
はあ、とため息を付くと目線も合わせず椅子に座る。
かくして1回戦目、東1局が始まった。起家は麗美。和弥は西家スタート。
ドラは北。
9巡目。
(ラッキーだ。先にカンチャンが入ってくれた)
「リーチ」
先手を取ったのは和弥だった。
「リーチリーチって、よく毎回そんなに手が入るね」
和弥のリーチを受け、下家の恵も皮肉っぽく呟いた。
「日頃の行いがいいんだろうな。ちゃんと燃えるゴミと燃えないゴミは分けて出してるんだ」
(…本当にいい根性してるわね、この子)
思わず苦笑いを浮かべる麗美である。
(俺は格段ツモがいい訳じゃない。捨て牌選択がいいんだよ)
心の中で麗美を一瞥する和弥だった。
「………リーチ」
上家も負けじと追っかけリーチ。
12巡目。今まで軽快に摸打を繰り返していた上家に異変が訪れた。彼女はツモった牌を見るなり、動きを止めてじっと和弥の捨て牌を見つめ始めた。
麻雀打ちがこのような動きをするときはだいたい決まっている。他家の危険牌を掴んでしまったときだ。
しかしリーチをかけた以上、和了り牌でないなら捨てるしかない。相手はそっと、河に五萬を置いた。
「ロン」
和弥が手牌を倒し、裏ドラを確認する。
「メンタンピン・裏1。7,700」
234の三色の安目だったが、まずは和弥が先制に成功した。
(掴んだ主導権は絶対に渡すな)
和弥は自分に言い聞かせる。そのまま和弥は和了り続け、南4局。
「ツモ。500・300」
1回戦は和弥の圧勝で終わった。
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