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第15話:対抗心

 翌日───

 授業も昨日までと同じ様に、和弥には退屈だった。特に変わった事はないし、学校生活に何の変化も求めていない。

 そして全授業を終え放課後。和弥の席にはまた、小百合が近づいてくる。


「竜ヶ崎くん。今日はジムは無いのよね?」


 クラスの女子も男子も、この光景を若干不快な思いをしながら見ていた。

 女子がいつも自分達がカラオケなどに誘っても、「用事がある」「バイトがある」で断りを入れてしまう和弥。

 立川南高校三大美少女の一人で、男子の高嶺の花の小百合。

 和弥は男子から、小百合は女子からそれぞれヘイトを集める。


「ああ。今日はないぜ」


「じゃあ、行きましょう。選手権に向けて、そろそろ本腰も入れたいし」


 その小百合の言葉に、女子から一斉に不満の声が上がる。


「ねぇ………。あの2人ってさ、付き合ってるの?」


「違うよ。和弥クン、麻雀部に入ったんだって」


(チッ…!)


 女子達も小百合に対し、わざと聞こえる様に言っているのだろう。和弥は内心イラッとするが、さすがにそれは表には出せない。


「分かった、部室に行くか………」


 お互いが男子と女子から、それぞれヘイトを買っているこの状態では、教室に長く(とど)まるのは利口ではない。和弥は小百合と一緒に、麻雀部の部室へとさっさと退散した。


◇◇◇◇◇


 部室のドアを開けると、既に由香と今日子の姿があった。

 由香はソファーに座り黙々とスマホをタップし、昨日部室を飛び出した今日子は、何事も無かったかのように奥のテーブルの上にノートPCを置いて、何やら操作している。

 ノートPCからは「ツモ!」という声が聞こえてきた。どうやら今日子が先日「自分は十段だ」と自慢していた、鳳凰荘というゲームらしい。


(あれが北条が自慢してたゲームか………)


『鳳凰荘の高段位プレイヤーにとっては、鳳凰荘の段位だけが正義の世界』


 今日子が飛び出した後の、由香の台詞を改めて思い出す和弥である。


「やあやあ。遅れてごめんごめんっ!」


 いつもの調子で、クールな外見からは想像の付かない部長の綾乃が部室に入ってくる。その後ろには、顧問である龍子の姿もあった。


◇◇◇◇◇


「今一度、皆にも言っておく。昨日より入部した竜ヶ崎だが、私は彼の御父上の事を良く知っている。

まあ、先日対戦したようだし。竜ヶ崎の雀力については、私が今更説明するまでもなかろう」


入部届

私、竜ヶ崎和弥は麻雀部への入部を希望します。保護者の承諾も得ています。部員として節度ある行動・責任ある発言を心掛けます。よろしくお願いいたします。


 龍子は秀夫が車で届けてくれた用紙に顧問としての承諾を記入し、綾乃に手渡す。

 他の4人はただ、そのやりとりを見ているだけだ。先日挨拶だけはしていたが、これで正式に和弥も麻雀部の部員となった。

 龍子はプリントを卓の上に置くと、いつもは綾乃が座っているゲーミングチェアに着席した。そしていつもの鉄仮面ではなく、柔和な笑顔で語りだす。

 生活指導を兼ねている事と、部長である綾乃がいるため龍子が部室に顔を出す事は滅多にない。

 しかし来週には、麻雀高校選手権の西東京地区予選のメンバー表を提出しなければならない。そのこともあり、選手権についての最終確認をする事が目的だ。

 麻雀のインターハイともいえる大会、それが麻雀高校選手権だ。メンバー表の5人目に『竜ヶ崎和弥』の名が記される。

 ついに立川南高校麻雀部は西東京地区の予選出場条件を満たし、エントリー出来る事になった。

 龍子は前年度の西東京地区代表校の一覧表を卓上に置くと、説明を始める。


「綾乃と西浦以外の3人は、当然だが団体戦へは初めての出場だろう」


(ほぉ~。先輩の事は白河ではなく『綾乃』って呼ぶくらいには信用してるのか先生は)


「はい。あたしはこの部活に入ったのは1年の冬休み近くになってですから。選手権はとっくに終了していましたし」


「あたしも今日子と同じです。さゆりんが男女総合個人戦で優勝したのだけは知りましたー」


 その小百合も、当時は自分と綾乃以外の部員が完全に大会の緊張の空気に飲まれてしまい、結局団体戦は初戦敗退だったのは、悔しい思い出として記憶に残っている。


「そうか………」


 入部したての和弥でも、小百合と今日子があまりソリが合わず、由香や綾乃がかろうじて仲を取り持っているのが分かった。

 仮にも選手権のU-16チャンピオンである小百合に、ゲームの十段なだけで大きな態度に出ている今日子だ。小百合は大口を叩くタイプではないが、今日子に好印象をもってないのは和弥にも見ていて分かる。

 前途多難だが、入部してしまった以上は仕方がない。龍子はさらに話を続ける。


「あの大会は、学生の大会としては極めて珍しい団体戦が主体なんだ」


 団体戦は個人戦と違い、各学校の麻雀部員を先鋒・次鋒・中堅・副将・大将と最低5名出場させなければならない。


「もしウチが西東京地区の団体代表になれば、今年はそのまま全国制覇のシャーレを(かか)げられる自信はある」


 龍子はチラリと和弥を見る。

 激戦区である東京は東東京代表が2校、西東京代表校は1校だ。早い話、東東京代表は決勝で2位以内なら出場が決定だが、西東京代表は決勝も1位にならなくてはいけないのだ。


「しかし我が校は去年団体戦は予選敗退した関係で、残念ながら地区予選のグループ4からのスタートになる」


 西東京地区団体戦の予選グループは、人数さえ揃っていれば出場出来る。しかし、予選グループを突破した12校に、決勝トーナメントからシードの4校が加わる仕組みである。

 龍子は今年の麻雀高校選手権の事を語りつつ、「団体戦に関する説明は明日話す」と付け加えた。

月・水・金曜日に更新していきます。

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