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第162話:切り替え

「それでは10分間の休憩です」


 2回戦目終了。筒井のスタートダッシュの良さは相変わらずで、小百合は今度は3位に終わった。今度は控室に戻ってきたが、見るから意気消沈しているのが分かる。何を語る訳でなく、ただ座り込んでそこにいた。

 これで立川南はポイント的にはかなり不利な状況なった。

 重苦しい空気のそんな中、今日子が沈黙を破る。


「ねえ、アンタってさ。麻雀で負けたことあるの?」


 和弥は即座に答える。


「あるに決まってんだろ」


 また新しいガムを和弥はゆっくりと噛み始めた。


「俺は牌効率重視だが、それでも負けるのが麻雀だ。基本アプリゲーのガシャと同じだって麻雀なんて。紅帝楼(こうていろう)で未だに点数計算が出来ないオッサンに負けた事もあるしな」


 たった3試合。『捨て試合』を作れないこのシステムは綾乃や、そしてトータルでデータを積み上げていく小百合には本当に不利だ。 

 ただしそこは、培った理と経験で何とかするしかない。副将として座る以上、残り1試合は勝つしかない。負けるとかなり厳しい状況に追い込まれてしまう。


「そう、アンタでも負けることあるのね」


 普段は不仲。そして対戦相手は尊敬する筒井。そんな状況でもやはり今日子としては空気を変えたかったのだが───

 以前も聞いた「麻雀なんてアプリゲーのガシャ」だが、この控室の状況でそれを聞くとは。小百合は随分と心が軽くなった気がした。


「行ってきます」


 和弥のおかげでリラックス出来たのか。世界の終わりがきたような表情になった小百合は、スクッと立ち上がった。


「行ってきます」


 第3回戦目に備え、控室を出ていく小百合。


「アンタってさ……」


「ん? なんだ」


「西浦さん以外には何も話してないよねそういえば?」


 小百合が出て行った後の、意外な今日子の言葉である。


「それそれ! 負けた事あるなんて初めて聞いた! 小百合ちゃんだけじゃなく、私も竜ヶ崎くんの事知りたいな〜!!」


 案の定、会話に挟まってきたのは綾乃だった。


「ありゃ嘘ですよ」

 

「「……はぁっ!?」」


 ずっこけそうになる今日子と綾乃である。


「そりゃ紅帝楼で負けはない、って事はありません。でも点数も計算出来ないオッサンに負けたってのは別の人の話です」


 高レートではまだ負けてはいない、と言いかけたがそこは敢えて言うのは辞めた。

 対して、最早乾いた笑いすら浮かべる今日子と綾乃である。


「和弥クンの過去とか何やらって聞いてもいいのかなって。和弥クン、聞いてもいつもはぐらかすじゃない?」


 今度は由香までが会話に入ってきた。


「……別に。なーんにも話す事なんかぇぞ?」


 とはいえ、6歳で母親を失い、今年に入ってから父・新一を失い文字通りの『孤独の身』になってからさらにやさぐれている和弥の事は、秀夫だけでなく龍子も心配しているのだ。

 少し微笑んだように、龍子の口からは笑い声が吐息のように漏れた。


「それぐらいにしておけ南野。竜ヶ崎のプライベートだ。それより3回戦目が始まるぞ」


『では、副将戦3回戦目を開始します!』


 場内アナウンスが控室にも響いた。

月・水・金曜日に更新していきます。

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