表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
157/248

第154話:しぶとさ

「凄い! 三倍満よ三倍満!!」


 興奮気味にまくしたてる今日子とは対照的に、中堅戦に備えた由香は静かにモニターを見つめる。


(………)


 いつもなら今日子と一緒に騒ぐ由香の冷静さに、何か違和感を覚えた和弥だった。

 怪訝けげんな表情を浮かべながらもガムの包みを開け、新しいガムを口中に放り込む。

 結局紗枝は3試合でトップ、2位、トップとポイントで立川南が圧倒的に有利になった。


「ただいま戻りました!」


 元気良く控室に戻って来た紗枝。

 全員が戦いを労う前に、再びドアが開く。


「おや、ハナちゃん!?」


 久我崎高校部長の麗美である。


「近くを通りかかったので、寄ってみたのよ。おめでと」


「はぁ……。ところで何の用事だ? もう中堅戦だっていうのに、大将自らとは随分と余裕だな」


 思わず少々皮肉を込める和弥。ちょうど奥から綾乃が出てきて、彼女がその質問に答えてくれた。


「今更ハナちゃんが偵察とかする柄じゃないよ。───多分賑わってたから覗いてみた、程度じゃない?」


「褒めてるの? バカにしてるの綾乃?」


 クスクスと笑いながら、勝手に控室の椅子に座る麗美。


「半々!」


「あっそ……」


 麗美は呆れた様子で溜め息をつき、和弥を見た。


「よっ。元気してた?」


「あンたに俺の健康状態をイチイチ報告する義理なんざねえよ」


 麗美と目線を合わせようともしない和弥である。


「うわーん! 綾乃! あんたんトコの部員が私に冷たいんだよ〜」


 ワザとらしい嘘泣きをしながら綾乃に泣きつく麗美。


「いや、一体何しに来たんだよマジであンた?」


 会話が途切れるのを待っていた和弥は、ここぞとばかりに麗美を睨みつけた。


「うーん。それは今はここでは言わない方がいいかな?」


 だったら最初はここに来るな…と言いかけた和弥だが、麗美の真意はすぐに分かった。チラリとだけ見た目線の先には、龍子がいた。龍子がいると言えない話なのだろう。


「まあ、余計な事を言うとヘンな心理戦とも取られかねないしね。大会が終わってから話すよ」


「そうしてくれ。あンたは白河先輩とダチってだけで俺から見たら赤の他人。どこの馬の骨ともわからないような人間となんて、仲良く話すつもりはねえよ」


 少々控室に白けた、気まずい空気が流れる。


「なーんか歓迎されてないね、私。ま、今度ゆっくり話しましょ」


 自分の言いたい事だけ言って、さっさと控室から出ていく麗美。


「それじゃ、そろそろ中堅戦が始まりますので…」


 逃げるように由香が控室から出ていく。


(何を言いたかったんだ…)


 ま、いずれにせよ、直にわかるだろう───和弥は深呼吸をして気持ちを宥め、ガムを噛み始めた。

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ