第153話:会心の一撃
次鋒戦1回戦目。ドラは一萬。
4枚目のツモ───筒子。
これで七索を捨てて、手牌は字牌と五索それぞれ一枚を除いて、全てて筒子だ。混一色どころか清一色も見えてきた。
次の陵南渕高校の次鋒は、手牌から三筒を切った。彼女の捨て牌にはドラの一萬もある。まだ断定はできないが、おそらく索子染めだろう。
(陵南渕の捨て牌には、一索が一枚あるだけ…)
しかし、自分も勝負手である。さあ、どうする? 勿論紗枝の答えは“勝負”の一択だ。
紗枝は牌山に手を伸ばし、グイっとツモる。
次に引いてきたのは六索だった。
これでさっきの七索と合わせれば順子を作れていたが、後悔はない。迷わずツモ切りする。
(満貫まで持っていける手を安手に落として和了ったら、この人たちに舐められるだけ…。今はとにかく、打点を伸ばさないと!!)
上家が手牌から四筒を切ってくる。彼の河にはニ筒、四筒が並んだ。しかもすべてが手牌から出たものだ。
皆明らかに紗枝を警戒してきての早切りだ。
再びツモ牌を引く紗枝。
(来た…)
ツモったのは赤五筒である。七筒を切れば多面待ちだが、大して枚数は残ってない。
(ならば…)
点棒箱を開け、リーチ棒を手に取る準備をする紗枝。
そして捨て牌を横に曲げ、河の最後尾へとくっつける。
選んだのは打・八筒。
「リーチッ!」
点棒が宙を舞い、河の向こうへと音を立てて横たわる。
もはやスケスケのクリアケースといっても過言ではない状況での、リーチ。
紗枝は喉の奥に、異様に重たいものを感じた。体が熱いような冷たいような感覚に襲われる。
(オリる気がないならこれでいいんですよね、竜ヶ崎先輩…)
控室では紗枝のリーチにざわつく。
「…まあ。ダマテンでもどうせ出ないしね」
控室の全員、綾乃の意見に同調だった。
「何より七筒はもう死んでるしな。だったら平和と一通を捨ててでも、残り3枚の四筒とまだ2枚ある九筒が山にいると信じた方がいい」
とはいえさすがに和弥も、気が気ではない。
(……中野は本当にここまでは『数合わせ』で戦力になってない。それは本人も分かっているだろうし、だからこそ、かなり申し訳ないって気持ちがあるはずだ。一発デカい手でも和了って弾みつけてほしいが…)
「リーチ」
陵南渕の次鋒もリーチ。明らかに索子の染め手なのが分かる。
「ツモッ!!」
一発ツモ。叩きつけるようにツモを卓に置く紗枝。
リーチ・一発・ツモ・面前清一色・イーペーコー・赤。
「6,000・12,000」
今大会初めてと言っていい、紗枝の大物手だった。
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