第150話:上々のスタート
いよいよ高校選手権・団体戦決勝開始。
東1局。今日子の起家でスタート。
「ツモッ! 6,000オール!」
親ッパネを引き和了がって迎える一本場。またも好配牌である。
ドラは七萬。いきなりドラ含み順子も入っている贅沢な手だ。現状雀頭候補は三索だが、完全に確保はできていない形。索子索子のが伸びれば自然とクリアできそうだが、ここから一索切りか。否。
これは何も考えず567の三色を見据えた平和一直線でいいだろう。今日子は中切りからスタートさせた。
「ポン」
その中を、今度は上家の陵南渕の先鋒が仕掛けた。───決勝に出てくるのような相手が、役牌を一鳴きするのはかなり珍しいことだった。そして第一打は二筒。
間違いなく今日子が昇り調子と見てブラフをかけてきたのだろう。しかし今日子は相変わらず淡々と、怯むことなく牌を切り続ける。
8巡目だ。筒子の安目を引いてしまったが、聴牌。理想の入り目。索子はまだ9枚ほど山に残っている。今日子は迷わず、リーチをかけた。
さて、今度はどうか。
次は他家もそんなことはなかった。上家は堂々と裏スジをツモ切り、続く対面、下家も色は違うが通っていないところをバシリと切ってくる。
「……」
全く動じない今日子。こちらは三面張だ。久我崎の先鋒の捨て牌に九索が一枚切られているだけであり、待ち牌はまだたんまりと残っているハズ。3人が攻め続けるなら、討ち取れる可能性だってある。
(上等!)
今日子は3人を迎え撃つつもりで強気を維持した。
しかし、それからツモはかすりもせず、6巡が経過した。徐々に湧き上がってくる焦燥感に虚勢を揺さぶられるなか、私にとって不都合な事態が再び発生する。私がツモ切ったドラの六筒を下家が赤五・七索という絶好の形でチーし、そして初牌の發を切ってきた。これでおそらく、いや、確実に聴牌しただろう。
さらに対面の久我崎先鋒が、陵南渕が切った發を仕掛けた。彼女の捨て牌は索子が一枚も切られておらず、私の当たり牌を抱えているうちに索子の混一色が完成したという雰囲気を醸し出している。
副露したのは2人だけだが、残る一校にもオリの気配はなかった。次巡に切ったのは抱えていたらしい發だったが、手の内は既に整いつつあるのではないかと思われる。それまでの切り出しが濃いところばかりだからだ。
(これはまずいかもしれない……)
今日子はツモりにいく動きがやや緩慢かんまんになってしまった。自分のアガリ牌ではなく、相手の当たり牌を持ってきてしまう可能性のほうが高くなっている気がしてならない。
直後に引いてきたのは、初牌の白。
和了り牌でない以上切るしかないが、しかし、その白に声はかからなかった。既に暗刻か、それとも雀頭使いで奇跡的に助かったのか。
以降、流局一歩手前のところで繰り上げ高校が何かを引いてきて手出しした以外は、全員がツモ切りを繰り返していた。
そして結局、和了り発生せずの流局。繰り上げ高校の一人ノーテンだった。
などいつ持ってきてもおかしくなかった気がする。加えて、後半に持ってきた白は本当にスレスレだったようだ……
しかしこうして見てみると、三面張だろうとあれだけ持たれてしまっていてはツモれるハズがないと思えてしまう。前局のツモ和了りは本当にただの幸運だったが、結局両面だろうと三面張だろうと、この面子相手ではさして有効とはいえないのかもしれない。
二本場である。
月・水・金曜日に更新していきます。
「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。
していただいたら作者のモチベーションも上がります!