第138話:ラストチャンス・2
牌効率打法の和弥がドラ含みの両面塔子を崩してまで最初に三萬を切った事で、立川南控室は大騒ぎだ。
しかし龍子は冷静である。
「対子3個のあの配牌で最高の和了りを目指すならば、七対子・ドラドラしかない。だったらドラ表はいらないと判断したんだろう」
「で、でも…ラス親なんだし、まず連荘じゃ…?」
不安そうな表情で紗枝が訪ねた。
「普通はな。手を安くしても連荘優先だ。最下位なんだし。しかし竜ヶ崎も分かっているんだろう。あの五条歩美に安手での連荘なんて、なんの意味もない事を…」
ため息をつくように大きく息を吐くと、やれやれというようなゼスチャーを取る。
「ま、私にも絶対切れないがな。あの三萬は…」
5巡目。歩美のツモ。
(白が鳴ければ楽勝だと思ったんだけど…。なんかどんどん筒子が集まってくるわね…)
歩美は和弥と下家の捨て牌を確認する。
(竜ヶ崎の息子はチートイ…。南家は萬子染めか…。まあ白は出にくいかぁ…)
三萬に手をかける歩美。
(だったらこうよっ!!)
「チ、チーッ!!」
早速南家が鳴く。
(混一色・ドラ1でも和了れば2位なんだ! もうなりふり構ってられん!)
南家は相当焦っていた。
止めていた一筒を手の内から切る。
「ポン!」
今度は歩美が鳴き返す。
さらに一萬を切って筒子のホンイツの一向聴。またも南家が今度はポンをし、立川南の控室では騒然とする。
「うっわぁ…。全然絞らないじゃん…」
モニターを見ながら、今日子はイライラが収まらないようだ。
「それはそうよ…。五条さんは竜ヶ崎くん以外には、ハネ満振り込んでもトップなんだから…」
「分かってるけど、やるせないですね…」
小百合と紗枝も、もうモニターを直視出来ない。
しかしこの鳴き合戦の反動か。
「あ…ドラ重ねたっ!!」
思わず由香が叫ぶ。
和弥の手の中にドラの四萬が重なり、こちらも一向聴。
迷わず五筒を切る和弥。
「さて、ここからだ…」
モニターを凝視する龍子だが、ピンとくる台詞を吐いてくれる訳でもなく。
全員ついに黙り込んだ中……眉を顰めながら龍子が、ようやく重い口を開く。
「未だに三元牌が場に一枚も見えない。そして上家と五条歩美は、それそれ萬子と筒子の染め屋さんっぽい」
それは口には出さぬが、全員が思っている事だった。
一体和弥が三元牌をどう処理するのか。
いつもの通りの『ブレずに打つ』という和弥の方針とはやや違う。しかし本当にミスは許されない。
そんな和弥の緊張感が、モニターを通して伝わってくる。
(本来七対子は攻めの役じゃない。先に聴牌出来ればいいけど、先手を取られると苦しくなるわ……。和了り辛くもなる。それが今の竜ヶ崎くんの状況……)
文字通り小百合は、祈るような心境だった。
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