第134話:隙を見せない少女
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東2局一本場。ドラは七索。勿論歩美の親番は継続である。
(この女…。兄貴同様に、俺の打ち筋を相当研究してるな…)
しかし和弥は、またも10巡目に聴牌。
(関係ねぇ、この手のタイプには攻め続けるしかない…。いつも通りの麻雀打たなきゃ、見える光も見えなくなる)
「リーチ」
果敢なまでの和弥のリーチ。上家と下家が一瞬で真顔になる。
「竜ヶ崎、全然スピードが衰えないじゃん…。でも純チャン・ドラ1だし。これはダマでも良かったんじゃ…」
「いや、竜ヶ崎先輩に負けないレベルで凄いですよあの人の読み…。多分先輩も『ダマにする意味はない』って思ったんじゃないですかね。第一アレなら安目じゃ和了れませんし」
最早驚嘆しかない今日子と紗枝であった。
「敵は対面だけじゃないんだけどね…。ま、この局はトップ取らないとマズイって思ってるんでしょ。あたしもしっかり目に焼き付けとこ」
由香のこの言葉の意味を、今日子と紗枝はこの時は何も不思議には思わなかった。
◇◇◇◇◇
(またまた高そうな手だこと)
歩美は和弥の河を確認する。
(認めるよ。戦前のデータ通りだ。本当にマシーンみたいな男ね。正確な手作り。でもね…)
歩美はツモってきた七索をそのまま捨てた。
(正確な分、捨て牌に誤魔化しや迷彩がないから。分かりやすいったらないわ。全帯公系…。早々に自風牌の西を捨てたところ見ると純チャンかな。六索を切った時点で索子の上は完成…)
ゆっくりと牌山に手を伸ばす歩美。
(連続ツモ切りから萬子の下が完成して五萬切り。一巡待って七萬の対子に八萬か九萬がくっついてリーチ。六・九萬かカン八萬しかない)
平然とする歩美だが、上家も下家もゲッソリだ。
(平和系の捨て牌じゃないとはいえ…)
(良くそんな無スジばっか切れるな…)
11巡目。
「これも通るわよね? リーチ」
今度は六筒を横に曲げて切る歩美。『リーチデス』という女性の電子音がB卓に鳴り響く。
「ツモ。2,700オール」
またも歩美の和了り。完全競技ルールのため一発も裏もないとはいえ、立川南控室はため息に包まれた。
「なんなのあの子一体…。今わざわざ待ってからリーチかけたワケ?」
「完全に和弥クンの心を折りにきてる、って事じゃない?」
今日子と由香が控室でそんな会話をしているとは無論知る由もなく、和弥は歩美に3,000点分の点棒を渡し、おつりの300点を受け取る。
「竜ヶ崎にとってあの程度はどうという事はない。あいつは一発で局面を変えられるハードパンチャーだ」
「しかし」
と言いながら龍子はミネラルウォーターのペットボトルに口をつけた。
「その一発が炸裂するのは相手にも隙があるからだ。五条歩美が、その隙を最後まで見せるかどうか…」
「どっちの味方なんですか先生っ!?」
龍子の言葉に、思わず立ちあがる紗枝である。
東2局二本場。ドラは六筒。
8巡目。
(張った…)
またしても歩美の聴牌。
(それにしても対面の男も、スピード衰えないわね……。ドラ側だし、ここもダマでいいわ)
歩美はそっと九筒を置く。
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