第132話:互角の読み
「では、これよりB卓の2回戦目を始めます!」
個人戦完全競技ルール・準決勝のB卓2回戦目開始。今度は和弥は北家スタートである。
今度は歩美は対面となった。
東1局が始まる。ドラは三筒。
9巡目。
「リーチ」
和弥が早速、先制攻撃を仕掛ける。
(ふむふむ。競技ルールでもタンピン系メインなのは変わらないわね)
鼻で笑うような歩美の表情だ。
(何笑ってやがる。こっちはツモ和了り前提だ。誰かが出してくれるなんて期待しちゃいねぇよ)
シゲシゲと、和弥の捨て牌を確認する歩美。
(本当に戦前のデータ通りね。正確な牌効率で押すトコは押し、退くトコは退くバランス型………。でも牌効率の宿命だね。捨て牌に余計な小細工しないから、読みやすいったらこの上ないね)
(典型的なタンピン系………。萬子は四萬を切った時点で完成している。ケアすべきは筒子の連続形と索子。問題はリーチ宣言牌の三索と、その前の六筒ね。多分ドラをツモって入れ替え。これで筒子の面子も完成)
手を伸ばし、ツモ牌をめくる歩美。二索だった。
(うわっ……早速アタリ牌を掴まされたわ。この勝負、この男を勢いに乗せちゃいけない)
仕方なく雀頭の八筒を落としていく。
「強いな」
珍しく、思わず和弥がつぶやいた。
「別に。これでも安全牌切ってるつもりなんだけど?」
確かに、根拠無しの全ツッパとは思えない。
(きっと確信があって止めたんだろうな)
和弥は思った。
(一索を捨ててる以上ニ・三・三から三索を切る可能はない。間違いなく三・三・四索からの両面リーチ。二・五索待ち一点!)
さらに11巡目。四萬をツモった。
(あーあ。雀頭落とししなきゃ、これで和了りだったのに。でも張り直し)
「リーチ」
今度は聴牌し直した歩美のリーチだ。
14巡目。
「おっと。こんな残り1枚みたいなのツモちゃった。1,000・2,000」
和了ったのは歩美である。
(……こいつ。委員長と打った時とは全然違う。どうやら聴牌即リーだけじゃないようだな)
パタリと手牌を伏せる和弥。
立川南の控室でも、由香、今日子、紗枝の3人がモニターを見て茫然としてた。
「な、何あの子…。一手違いで567のタンピン三色なのを、雀頭落として三面単騎にしたの?」
今日子が呆れたように零す。
「先に聴牌してたよね? あれ…」
「ですね…。7巡目からツモ切り2回でしたし」
まさか和弥、綾乃レベルの鋭い読みを歩美も持っているのか?
由香と紗枝も狐につままれたような思いで、お互いの表情を見つめるばかりだ。
「3人とも、あの子の読みが気になるようだな」
のっそりと立ちあがった龍子である。
「は、はい…。気にならないって言えばウソになっちゃいますよ」
今日は私服で来た今日子が、思わず龍子に問い返した。
「あの兄妹の読み…父親譲りなんだ。戦前に対戦者のデータを集め、徹底的に打ち筋などを分析にする。相手のちょっとしたクセや表情の変化もな」
「………」
「いうなれば。竜ヶ崎と綾乃のイイトコ取りなんだよ。あの兄妹の麻雀は」
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