表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
128/244

第125話:この時のために

新章スタートです。

「ただいま」


 何とも浮かない表情で、控室に戻った和弥。


「やったじゃん和弥クン!!」


 和弥を見るなり声をかける由香。紗枝も今日子も声をかけようとしたが、3人とも“異変”に気付いた。

 普段からあまり感情を表には出さない和弥だが、いつにも増して面白くも何ともなさそうな表情なのだ。


「………」


 なにも言わな和弥に、小百合も心配になる。

 分かっているのかいないのか、綾乃は笑みを浮かべたまま首を傾げた。


「どうしたの竜ヶ崎くん?」


 和弥は正直に答えた。


「先輩、それに先生……団体戦の決勝、丸子高校は棄権だそうです」


「……ああ。さっき昭三さんから連絡があった」


 龍子の事だ。和弥のモチベーションが下がらぬよう、知っていて口にしなかったのだろう。


「ふふ……キミにしては珍しく、ガッカリした様子だな」


「別に。そういうワケでは……」


 とは言え実力的には龍子、麗美、恵クラスの実力者だ、五条治は。無論その妹である歩美も。


「そうガッカリするな。歩美の方は個人戦、完全競技ルール出場だそうだ」


「別にガッカリなんてしちゃいませんがね。これで団体戦の決勝は、少なくとも久我崎だけマークしてればいいんですから」


 いつもの通りの和弥だが、そんな彼の顔を見て、クスクスと笑うのは綾乃である。


「でも良かったじゃん。個人戦はお金賭けなくても楽しめてるでしょ?」


「……ですね」


 小百合だけは、彼になんと声をかければいいのかがわからず、言葉に詰まってしまった。

 正直金のかかっていない勝負に、和弥がここまで力を入れてくれているのはありがたい事である。


「以前だがな。陵南渕の発岡恵の御父上がこんな事を言っていた」


 突然立ち上がった龍子は、大袈裟なゼスチャーで語りだした。


「『───麻雀なんて負けた方が破滅するから面白いんだ』とな。そして新一さんに挑んだ」


 もう龍子の話は聞かなくても分かった。


「んで、オヤジに負けて全てを失った、って訳ですか」


 類は友を呼ぶ、まさにこの事なのだろう。

 その狂気との紙一重だけが、生前の新一が唯一相容れない部分だったとは秀夫の弁である。


「敗北すれば、今まで積み上げてきたものすべてが一瞬にして無に帰してしまう。しかし勝てば、それに見合うモノを手にすることが出来る。新一さんがホームレスとの1,000点10円の勝負にも応じたのは、そういうのもあるんじゃないかな」


「………とても麻雀部の顧問が言っていい発言じゃないと思いますが」


「ふふ。あの頃の私達にとって、新一さんはそれだけの存在だったという事さ。それに……」


「それに?」


 ニコニコと笑いながら和弥に近づく綾乃。


「面白いでしょ? 総当たりのリーグ戦と違い、負けたら終わりのトーナメント大会って」


「確かに。それは言えるな」


 和弥は個人戦のベスト4に上がった8名を確認する。

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ