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The Raptor 〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜  作者: MIX
第五章:絶対に負けられない戦い
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第124話:あっけない王手

「………ロン」


 高目なので一発ついてハネ満。


(この下駄(げた)顔野郎。しかし今のは明らかに、俺の待ちを読みきっての打牌だ……)


 対して治は余裕シャクシャクである。


(理事長の話に聞いてた通りだ。素直な打ち方だよ。勿論赤ドラ麻雀はそうした方が勝率が上がる)

挿絵(By みてみん)

 今一度和弥の捨て牌を確認しながら、鼻歌混じりに収納口に牌を落とす治。後ろの係員も顔をしかめる。不正を疑われても仕方のない一打だからだ。

 しかし立川南の控室でも、今の一打にザワついていた。


「な、何あれ……」


「ど、どう考えてもワザとですよね…」


「うん、完成面子から捨てたよ今…」


 龍子もこれまでとは全く異彩を放つこの男に、顔をしかめる。


(明らかに竜ヶ崎の待ち、自分の読みを確認するための一打だな。今のは…)


 東2局。競り上がってくる牌を、親になった治は平然ととっていく。


「これまでのデータ通りだ。普通の順子(シュンツ)手…萬子(マンズ)筒子(ピンズ)は上で完成している」


「………」


 突然語りだす治に、和弥も含めた卓の全員唖然とした


「問題なのはどうして一・九筒なんて牌をリーチ直前まで持ってたかって事だ。最初は一通(イッツー)と三色の両天秤だったの、牌の寄り具合から678の三色に変更したんだろ?」


 第一打で(ナン)を切る治。


「表情を見たらドラ絡みじゃないのは分かった。それで五・八索って読んだんだが。合ってるか?」


「君! いい加減にしなさい!」


 一人でしゃべりまくってる治に、流石に大会係員から注意が入った。


「へいへい。分かりやした」


 8巡目。


「さーて。12,000点のハンデつけちまったしな。リーチ」

挿絵(By みてみん)

 現物を切る南家(ナンチャ)。そして和弥のツモである。


「!?」


 和弥の打牌に、今度は治は目を疑った。


「あんなの差し込みと変わらんだろ。脇の2人も不愉快だろうし、いくらか返してやるよ」


 打・二萬。治の当たり牌である。


「ロ…ロン」

挿絵(By みてみん)

 手牌を倒した裏ドラを確認するが、裏は乗っていなかった。


「…7,700」


「はいよ」


 治に点棒を渡す和弥。


(そっちこそそんなに難しい読みじゃないだろ。そのタンピン系の捨て牌で最初に出てきた中張牌(チュンチョンパイ)が赤五索。そっちより萬子や筒子の方が大事ですって宣言したようなもんだ。

 四・四・五筒から345の順子が完成。これで四暗刻(スーアンコ)断念。最後はニ索も枯れたので三暗刻(サンアンコ)も諦めて両面リーチ、か)


 治は即座に、和弥の力量を見誤っていたことに気付く。

 その後はお互いに勝負手が入らず。しかし両者とも2回戦とも最下位(ラス)だけは避け、決勝進出が決定した。


「よう。楽しかったぜ」


 控室に戻ろうとした和弥に、巨大な手の平を差し出す治。


「………」


 拒否する理由もないと、和弥も握手に応じた。


「でもオメーみたいな奴は、こんな勝負じゃ真剣になれねーな」


「………? 個人戦には出ねーのかあンた?」


「あー、無理無理!」


 治は豪快に笑い飛ばす。


「俺は受験寸前に事故に合っちまってよ! リハビリに2年近く費やしてたんだ。だから18で入学したって訳。当然今ハタチの俺にはU-18の参加資格なんて()ぇ訳よ!!」


「………」


 相変わらず治は笑うが、中々重い話である。


「んで、決勝はその治療の関係で俺は欠席。5人キッカリしかいない丸子高校(ウチ)は当然棄権って訳だ」


 なるほど。こういう事があるから、綾乃もバックアップがほしかったのだろうと和弥は納得した。


「ウチの理事長の言った通りだったな。んじゃな」


「おい」


 去ろうとした瞬間だった。


「俺とまた打ちてぇってんなら。あンたんトコのあの理事長の爺さんに聞きな。多分俺がいつも打ってる雀荘()は知ってると思うからよ」


 背を向けたまま手を上げ、治は去っていた。

月・水・金曜日に更新していきます。

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― 新着の感想 ―
[一言] 無駄に濃いやつw 再登場あるのかな?
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