第115話:進化
「じゃあ行ってくる!」
団体戦がスタート。先鋒の今日子は、吹っ切れたかのように控室を飛び出していく。
「……」
そんな今日子を見送った和弥は、全員と顔を会わせないようにモニターを眺める。
そして改めて、ルール表を見直した。
「ほぅ……。決勝のみ一人半荘3回戦なのか」
「そういう事。勿論勝てるよね竜ヶ崎くん?」
体をくっつけるように、和弥の隣に座るのは綾乃だった。
その光景には小百合も、そして由香も紗枝も思わず眉を顰める。
「………先輩にも散々言ってるだろ。競技麻雀だろうが、やるからには勝つ。てか離れてくれ」
「んもー。こんな美少女が隣に座ってあげてるのに」
相変わらず内心の見えない笑顔でワザとらしくポーズを作りがながら、和弥から離れる綾乃。
「ねね。和弥くんはあの4人の中で、今日子ちゃんが何位になると思う?」
「勝負事…………というか赤ドラルールに絶対はないけど。北条レベルならあの中で、最低2位はキープ出来ると思いますよ」
「んー……なんだかあっさりした答えで。拍子抜けしちゃったな」
カバンからキャンディーを取り出し食べる綾乃である。
「というか陵南渕を退けた以上、もう決勝の久我崎くらいでしょ。強い学校って先輩から必ず名前が出る筈ですし」
「あっはっは。お見通しってワケだ!」
部長である綾乃の事は勿論尊敬している小百合だが、時々綾乃に不快に感じる時がある。それがこういう場面だ。
まるで自分と和弥が関係を持っているのを分かっているかのように、ヤケに和弥に馴れ馴れしい。
小百合は気紛らわそうと、モニターを見つめた。
「リーチッ!」
今日子が親でリーチをかける。
次の巡。
「ツモ!!」
一発で西を引けた。
裏ドラ表示牌は一萬。すなわち二萬である。
「8,000オール」
やはり一発・裏ドラ・槓ドラ・赤有りルールになると、手が巨大になりやすい。
その事を実感する和弥である。
(うーん、なんというか)
「竜ヶ崎。『あっさり大きな手になる』とかってるだろう?」
「い、いや、そんなことは……」
龍子に内心を言い当てられ、ドキリとする和弥。かなりなポーカーフェイスな自負はあるが、思っていたことが顔に出てしまっていただろうか。
「プロだから、良い手が入る訳ではない。逆にド素人でもバンバンいい手が入る。ただ、そこから適切な手を取り続けられるかどうか。それも麻雀の魅力とは思わないか?」
ノッてきた、と言わんばかりに腕をグルグル回して肩のコリを解す今日子。セーラー服の下に隠れていた透き通った肌と、ブルンブルン揺れる爆乳に他校の男子生徒達やカメラマンの視線も思わず釘付けになっている。
南4局。
「ロン。1,300」
最後は出和了りで締めくくった。以前の今日子ならば、親のリーチに放銃するのだけは御免と、一も二もなくベタオリの局面だっただろう。
「結構押してましたね北条先輩。五萬とか、危なくないですか?」
という紗枝の疑問。
「親にデカい手が入っている。ツモられて逆転される可能性を考えたんだろ」
「え?」
和弥の指摘通り。親はメンタンピン・三色・赤1の親ッパネだった。
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