表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Raptor 〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜  作者: MIX
第五章:絶対に負けられない戦い
114/244

第111話:縮まる距離

「……終了(ラスト)だな」


「参ったな。役満和了(アガ)って勝てなかったって、これが初めてだよ」


 恵は眼鏡を直しながら、ゆっくりと立ちあがる。


「あンただって2位だったろ。ベスト4には出れそうじゃないか」


「あー、時間だね。すまないが、ここは退散させてもらうよ」


 10分の休憩のあと続いて2回戦が始まるが───

 2回戦から5回戦まで。2位になった3回戦以外、全てトップは和弥だった。

 準決勝進出を決めたが、いつものように顔色を変えず控室に戻った和弥。


「竜ヶ崎くん!」


 和弥が控室に戻ると、小百合に声をかけられた。


「何だ?」


「今、いいかしら……?」


「……ああ」


 そう返事をすると、和弥は控室の隅に座った。小百合も隣に座る。


「………」


 しばらくの沈黙の後。小百合が口を開いた。


「……そ、その……竜ヶ崎くん。準決勝進出、おめでとう……」


 見ると小百合の表情は、誰が見ても真っ赤である。


「ああ。サンキューな」


 和弥は表情も変えず、小百合にそう返す。


「……きょ、今日もバイクの後ろ、いいかしら?」


 何か言いたげだが、うまく言葉が出ない様子の小百合。そんな小百合を横目で見ながら、和弥は心の中で呟いた。


「構わないぜ」


 実は和弥も小百合に声をかけられるのを期待して、キャップ型ヘルメットは持って来ていた。

 いいムード───になりかけたところで、龍子がやって来た。


「準決勝進出おめでとう、竜ヶ崎!」


「……ありがとうございます」


 小百合は和弥に対する態度とは打って変わって、つんけんした口調で恵に答えた。

 龍子は苦笑しながら、続ける。


「次は準決勝か。不慣れなルールにも、あっという間に適応するとはな」


 いいムードだったところを龍子に邪魔され、小百合は少々不機嫌を隠し切れない。

 さらにそこに。


「はあ…ベスト8どまりかぁ」


「あたしも。イケルと思ったのに~」


 どうやら敗退したらしい由香と今日子も、ドカドカと入ってくる。

 小百合は更に不機嫌になった。


「竜ヶ崎」


 龍子が和弥に向き直る。


「準決勝、頑張れよ。応援しているぞ」


「ありがとうございます」


 龍子は控室を出て行った。


「……さてと」


 もうそろそろ時間である。和弥も立ち上がった。


「んじゃ、委員長。また駐輪場まで歩くけどいいか?」


 小百合の顔がパアァ、と輝く。


「えぇ、勿論!!」


 和弥は小百合と共に控室を出て行く。


(頑張れよ……竜ヶ崎)


 龍子は一人、心の中で呟くのだった。


◇◇◇◇◇


 駐輪場にてヘルメットを被った和弥に、キャップ型ヘルメットを付けた小百合は、ジッと和弥の顔を見つめる。


「どうしたんだよ? 委員長?」


「竜ヶ崎くん……私、今日このまま貴方(あなた)のマンションに行きたいんだけど…」


 小百合はか細い声で呟く。


「!?」


 和弥は小百合の真意が分からない。いや、敢えて気付いてないフリをしている、という方が正しいだろう。


「竜ヶ崎くん……私、西浦小百合は……貴方の事が好きです」


 思った以上に直球な、小百合の告白であった。


「いや、それは…」


「お願い! どうしても!!」


「……お袋さんにはちゃんと言ってあるんだろうな?」


 コクリと頷く小百合。

 和弥がヘルメットのシールドを下ろすと、小百合も慌てて自分のヘルメットの顎紐を嵌める。


「じゃ、行くか」


「うん!」


 2人を乗せNinja400は、和弥のマンションへと向かうのだった。

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ