表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
The Raptor 〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜  作者: MIX
第五章:絶対に負けられない戦い
108/244

第105話:思い出

 第1回戦目は和弥の圧勝で終わった。


「10分間の休憩です。トイレなど行きたい人は早く済ませて下さい」


 終わったA卓に大会係員が声をかけた。


「強いわね」


 眼鏡をかけ直した恵がいう。


「どーも」


 目線を合わせず、和弥はペットボトルの水を飲む。


「本当に動じないけど。それが、あなたのいいところであり、悪いところでもあると思うわ」


「………」


 負け犬の遠吠え、という訳でもないのだろう。恵の雀力は低い訳ではない。和弥は思わず、恵の顔を見つめた。


「相手を恐れないのはいい事よ。ヘンに謙虚な心構えは、同時に相手を恐れることも多くなるし」


「何が言いてぇ……?」


 含みを持たせた恵の言い方に、思わずカチンと来る和弥。


「説明が難しいところね。まぁ要は、相手をナメてもいけないし、相手にナメられてもいけないってことよ」


「───どうとでも解釈してくれ。俺は勝つための最短距離を行く」


「ええ。これからも揺さぶられないか、存分に楽しませてもらうわ」


 第2回戦。

 (トン)1局目は全員ノーテン。

 親流れで東2局・一本場。ドラは三萬。恵の親番である。


(今度は国士でも狙えってか………)


 八種八牌の酷い配牌(ハイパイ)だ。和弥は国士無双(コクシムソウ)を狙いながら、いつでもオリれる体勢を作っている。


「リーチ」

挿絵(By みてみん)

 6巡目で恵がドラ切りリーチ。


(このルールでドラ切りって事はある程度まとまった手か…。捨て牌は完全な手なりの順子系……。どっちにしろこの配牌で助かったぜ)


 静かに(ペー)を切る和弥。ところが………。


「ロン。リーチ・ドラ。3,900の一本場で4,200」

挿絵(By みてみん)

(ぐ…!) 


 流石の和弥もこれには固まった。


(ドラを残せば平和(ピンフ)・ドラドラだろうに………)


「はいよ」


 4,200を恵に支払う和弥。


(この面子でドラスジ両面(リャンメン)なんて出ないに決まってるもの。それにあなた───その捨て牌、全帯公(チャンタ)七対子(チートイ)か、あるいは国士でしょ? 字牌抱えてる可能性高そうですものね)


 先ほどの宣言通り、和弥を揺さぶりにきた恵。

 これには控室の龍子も、流石に驚いていた。


(手を安くしてでも、竜ヶ崎を狙い撃ちか………。ふ、私も新一さんにやられたトリックプレイだったな。さて、この逆境をどうするのか。見ものだな)


 東2局・二本場。ドラは八筒。

 牌山がせり上がる。 


(大事なのは…俺が崩れない事だ)


 和弥は自分に言い聞かせるように、牌に手を伸ばしていく。

 9巡目。


「ツモ。平和・ドラ。二本場で900・1,500」


(やるねぇ~。ここまで揺さぶられてもまだ冷静でいられるんだ)


 1,500点を和弥に払う恵。


猛禽類(ラプター)………。お父さんを破滅させた男・竜ヶ崎新一。実際に会えたら刺し殺してやろうと思って、手芸セットにはいつも大き目の裁ちバサミを忍ばせてた……。あれほど嫌っていた麻雀のルールも憶えて、紅帝楼(こうていろう)に出入りを始めた……)


『お嬢さん。今の手。ここで一筒を切ったのはどうしてだ?』


 驚く恵。声をかけてきたのは、後ろから見ていた新一だったからだ。


『え? あ、いや……345の三色も見てたんで、両面カンチャン優先で…。西(ドラ)も自風牌ですし、ドラポンに備えて萬子(マンズ)は両面決め打ちにしたくなかったんです…』

挿絵(By みてみん)

 恵はそのあと、実際に二筒をツモって和了(アガ)りを逃したのだ。


『はは。ここは七索切りだよ。筒子(ピンズ)は山にたくさん残ってるし。第一上家(カミチャ)索子(ソーズ)染めだったし。この場面で六索引きを心配する必要はないさ』


(女って単純だよね………。なまじイケオジだったから、手芸セットの裁ちバサミの事も忘れて。私は新一さんの話に聞き入った)


 その日から、恵もまた麻雀にのめり込んでいった。


(その新一さんの息子が、対面にいる。なんて因縁なんだろう……)

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がります!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] オッサン(父)モテすぎ問題であるw
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ