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The Raptor 〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜  作者: MIX
第五章:絶対に負けられない戦い
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第101話:心境の変化

「ありがとう。それじゃあ私は先に待ってるわ」


 そう言うと小百合は控室を後にした。


(竜ヶ崎くん……)


 その様子を見ていた綾乃が、心の中で呟く。


(私もあなたの事、何も知らない……)


 そんな綾乃を横目で見ながら、紗枝と由香も控室を後にする。


「さてと……」


 龍子は席に戻ると、和弥に声をかける。


「さっきの試合だが……あの発岡に対して、あんな試合をしてよく平気でいられるなお前は……」


「……でもまだ。『竜ヶ崎新一の息子』とか見られてないんでしょ、俺」


 龍子はまたモニターに視線を戻した。恵が浮かない顔をするものの、ベスト4進出が決まった陵南渕メンバーはやはり大喜びであった。


「まあ、考えていても仕方がない」


 そう言うと龍子は立ち上がり、和弥に声をかける。


「竜ヶ崎、ちょっとついて来い」


 そして控室を後にし、会場の通路を歩いて行く2人。


「竜ヶ崎……お前と発岡の試合を見てて思ったんだが……」


「?」


「お前の麻雀、新一さんに似すぎだ」


 龍子の言葉に和弥は反応する。


「それは……どういう事です?」


 和弥が立ち止まったので、龍子も立ち止まる。


「お前は今までの勝負、どう思った?」


 龍子の質問に、和弥は考える。

 確かに麗美や恵やとの対局は、今まで経験したことのない物だった。


「楽しいですよ。馬鹿にしていた競技麻雀にも“勝負師”がいるのは分かりましたし。先生にも感謝してます」


「そうじゃない。私の聞き方が悪かったな」


 龍子は振り返り、和弥を見つめる。その眼は真剣だった。


「お前、麻雀を本当に心から楽しい、と思ったことはあるか?」


 和弥の脳裏に一瞬、ある光景が蘇る。だがそれはすぐに消えた。


「……ありますよ」


「そうか……」


 龍子は再び歩き始めると、こう続けた。


「……竜ヶ崎。お前は麻雀を『勝負』だと思ってないか?」


「そりゃあそうでしょう。スポーツだってなんだってそうじゃないんですか?」


 第一、キックボクシングやムエタイを習っているのも、和弥にとっては“勝負”の一環である。


「もし……純粋に『勝負』を楽しめる麻雀があれば、お前は打つか?」


「どういう意味ですか……?」


 龍子は立ち止まり、和弥に向き直る。そしてこう答えた。


「竜ヶ崎。私はお前に、麻雀の本当の楽しさを教えてやりたいんだ」


「俺は今のままでも、十分満足してますがね。ま、先生とはもう一回打ってみたいとは思いますが」


「いや。多分お前は分かっていない」


 龍子は和弥の目を見たまま、はっきり言い切った。


「麻雀はスポーツでも格闘技でもない。正真正銘の、『勝負』だ」


 そう言うと龍子は背を向け、会場へと戻っていく。和弥はその場に立ち尽くしたままである。


(“勝負”か……)


 だが今の和弥にとってその言葉は、全く響かないものだった。

 会場を出て、駐輪場に向かう和弥。Ninja400の横には、小百合が待っていた。


「律儀だな、委員長も」


 和弥は小百合にキャップ型ヘルメットを手渡す。


「ううん………。むしろ私の方こそ、貴方(あなた)にお礼を言うべきですもの……」


「? どういう意味だ?」


「ううん。何でもないわ」


 そう言うと小百合はヘルメットを被り、顎紐をカチリ、と嵌めた。


「竜ヶ崎くん……私ね……」


「??」


「私……あなたの事が……」


 その時である。小百合の携帯が着信を告げる。


(……こんな時に誰かしら)


 画面を見る。相手は紗枝だった。


(もう……)


 小百合は心の中で舌打ちする。

月・水・金曜日に更新していきます。

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