第100話:注目
記念すべき100話目。あと25,000PV、ありがとうございます!
「4,400点差、ね。南4局で私が1,000・2,000を和了れば問題ないわね」
そう言いながらも、恵の表情には諦めの色が濃く浮かんでいた。
(参ったわね………。並みの神経してないわ………)
卓から牌が浮上する。恵は牌山から配牌を取っていく。
(他の連中はともかく、この子には揺さぶりは全く通じなかったわね)
「何か勘違いしてるみたいだけどな、発岡さん」
軽く理牌しながら和弥は言う。
「俺は最初から優勝しか狙ってないぜ? ベスト8程度で止まっているつもりはねぇよ」
「……」
(そう。俺はこれからも、自分の麻雀を打つだけだ)
南4局。ドラは六索。4巡目。
「ツモ。500・1,000」
早々と和弥が和了。この瞬間、立川南のベスト8進出が決定した。
「やったー!!」
「竜ヶ崎先輩凄い! 凄いです!!」
和弥があがった瞬間、立川南麻雀部の控室は、大歓声に包まれた。
「発岡さん、お先に」
本来は2位の陵南渕もベスト4進出だが。和弥は恵に一瞥もくれず、南4局の余韻に浸りながら卓を後にする。
恵はその背中をただ見つめるしかなかった。
「ふん……本当に生意気な子」
恵は乱暴に牌をかき混ぜる。卓は一瞬にしてバラバラになっていった。
(竜ヶ崎和弥………何から何まで新一さんそっくり………)
◇◇◇◇◇
「ただいま」
相変わらずの無表情で和弥は控室に戻ってきたが、同時に会場で大きな歓声が沸き上がったことに驚いた。
「な、何……?」
和弥だけではない。小百合、由香、今日子、紗枝、そして綾乃。他の面々も驚きの表情を浮かべていた。ドアのノックが凄まじいからだ。
龍子が慌ててドアに駆け寄る。
「いえ、ですから………申し訳ありませんが竜ヶ崎は、そういうものには興味ないと………えぇ、本人が言っているので………」
なるほど、ドアの向こうには取材陣が殺到しているのであろう。
優勝候補である陵南渕を、発岡恵をも退けたのだ。注目されない訳がない。
「どうする竜ヶ崎? 一社くらいは応じては………」
龍子はドアを一度閉じ、和弥に問いかける。だが和弥は首を横に振る。
「いや………いいですよ。俺は有名になるつもりはない。何度聞かれても同じです」
その表情には、かすかにだが苦笑いが浮かんでいた。
「よし、分かった。じゃあ適当に断っておく。その代わりと言っては何だが、お前のコメントをこちらで用意しておくから」
「分かりました」
そう言ってドアに再び向かおうとする和弥だったが、小百合が声をかける。
「竜ヶ崎くん……ちょっといい?」
「……何だ?」
小百合は少々戸惑った表情を見せたが、思い切って口を開く。
「あのね……後ででもいいんだけれど……ちょっと聞きたい事があって……」
(まどろっこしいな)
和弥はそう思ったが口には出さず、ぶっきらぼうに返事をする。
「構わないぜ?」
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