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The Raptor 〜競技麻雀が嫌いな不良少年と、賭け麻雀が嫌いな優等生〜  作者: MIX
第五章:絶対に負けられない戦い
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第99話:自分の麻雀

「ウソでしょ………。最後の一枚じゃん………」


「しかもドラ待ちペンチャン…」


 モニターを見ながら今日子と紗枝は、唖然とする。


「お前も牌効率重視だったな、北条」


 ペットボトルのミネラルウォーターを一口飲んだ龍子は、少々考えてから口を開いた。


「確率はあくまで可能性の事だ。75%の確率と言っても、25%のハズレがあるという事もある。読んだって止めたって負ける事もある。それが麻雀だ」


 何も言えない今日子に対し、龍子は続ける。


「お前は今、私にこう言われて動揺しただろう、北条?」


「は、はい………」


 自分の心の中を見透かされて、今日子は目を逸らして返事をするしかなかった。

 それは同じく牌効率重視打法の小百合も同じである。


「…………竜ヶ崎の凄いところは、あの状態でもブレないところだ」


 確かにそれは小百合が一番良く知っている。粘りに粘って勝利をモノにする。逆に対戦相手の心を折りにいく。それが和弥の麻雀な事も。


(竜ヶ崎くん………大丈夫よね?)


 小百合は再びモニターを見つめた。

 (ナン)2局。ドラは二萬。

挿絵(By みてみん)

(張った。一盃口(イーペーコー)確定だが…リーチして出る牌じゃない。でもこれを3,900(ザンク)和了(アガ)ったら、もうギブアップしたも同然だ)


「リーチ」


 リーチ棒を置き、五萬を横に曲げる和弥。『リーチです』という女性の電子音が鳴り響く。


(大したもんだね。残り3局だっていうのに。歯を食いしばって自分の麻雀を打ってるわ。でも…)


 恵は自分の出来面子から二筒を抜き取り、(ホー)に置く。


(これならどうかしら?)


「ロン。5,200」

挿絵(By みてみん)

 和弥の対面、恵の上家(カミチャ)が手牌を倒した。タンヤオ・ドラドラである。


「はい」


 相手に点棒を渡す恵。


「またリー棒が無駄になったね」


「ドラドラは余計だったんじゃねえのか? 差が14,600に縮まったぜ?」


 収納口に牌を落としていく和弥。


「あと2局よ」


 プレッシャーを感じながらも、笑顔を崩さない恵だった。

 南3局(ラス前)。ドラは一筒。


「上家は国士(コクシ)よねあれ。オイシイとこばっか切って………」


 モニターを見ている今日子も紗枝ももう、気が気ではない。


「どんどんキー牌が切られていきますね…」


 和弥のツモは文字通り、()れてるような状況である。


(手牌が揃わないのは仕方ない………。与えられた状況で、最善の手を和了るんだ)


 8巡目。


「ポン!」


 現在親の対面が、連荘(レンチャン)狙いで恵から八索を鳴く。


(クソ………。捨て牌に二索が2枚…。もう索子(ソーズ)三面張(サンメンチャン)はほぼ意味がなくなったな)


「ど、どうすんのあれ………」


 9巡目。和弥は二筒をツモって聴牌(テンパイ)

挿絵(By みてみん)

(俺はまだ………正常な判断が出来てるだろうか………)


 ほんの少し考えたが、和弥はそっと牌を切った。


「リ、リーチにいかないんですかね………」


 同じく不安そうな紗枝だが、誰もそれには反論しない。


「………二・五・八索はほぼ死んでるわ。竜ヶ崎くんもそれが分かってるんだよ」


 とはいえ、流石に綾乃も不安でいっぱいだった。

 11巡目。和弥は四索を引いてくる。


「よし、今度こそシャボでリーチよ!」


 由香が自分の事のように握り拳を作る。


「もう五萬しかアタリ牌が無いわ、南野さん」


「んな事言ってる場合じゃ…裏が乗るかも知れないし、リーヅモ・ドラ・赤なら和了らないと!」


 いつも自分が大物手狙いなのも忘れ、小百合に食ってかかる由香。

 和弥は三索を切り、シャボ待ちダマテンを選択。

 一方局を進めたい恵だが、鳴かれて以降は無駄ヅモしか来ない。


(未だに手出しか、陵南渕の部長……。鳴かせたせいで対面のツモが全部、そっちにズレ込んでるのか………)


 12巡目。ツモ牌に手をかける和弥。


(まだチャンスはある!)


 ツモは六萬だった。

挿絵(By みてみん)

「やっとまともな形で聴牌出来たよ……。リーチ!」


(こ、このー…!?)


 凄まじい和弥の粘り腰に、恵も思わず卓の下の拳を握りしめる。


「チー!」


(牌の左端と2枚目から三・四でチーか。食い延ばしだな。間違いなく(オナ)テンだろうな。

 もしかしたら先に引かれるかも知れないし、あと3枚あるかどうか………。

 いや、それでも俺はやるだけの事はやった。この局がダメなら、南4局(オーラス)でまた倍満以上を狙うだけだ)


 13巡目。


「……ツモ」

挿絵(By みてみん)

 裏ドラを確認する和弥。表示牌は表ドラと同じ、九筒である。


「4,000・8,000」


「き、きたー!!」


「高目よ高目!!」


 和弥のツモと同時に、立川南麻雀部は大歓声に包まれた。

月・水・金曜日に更新していきます。

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