第98話:直接対決・4
東4局。ドラは九索。
「ロン。2,000」
またも和了がったのは恵だった。和弥の上家、恵から見た対面はハネ満を張ったところで放銃である。
「これ………。上家は心にキテるだろうね………」
「早い巡目で大物手を張って切った牌がズドン、か。狙ったワケではないんだろうが。今のところは発岡の描いた絵面通りに、勝負が進んでいる」
モニターで勝負を観戦していた綾乃と龍子は、うめくように呟いた。
大会は不正防止のため、他校の生徒の手牌は和了成立まで見ることが出来ない。
一方、和弥は静かに手牌を伏せるのみだった。
(ジリジリと差をつけられてるな。だが………)
収納口に牌を落とす和弥。
(焦って安手競争に乗って、この女のペースにハマる必要はない)
ついに南入。親は和弥。ドラは三萬。
「うわ、いい配牌!」
「ドラが暗刻ですよ暗刻」
「これはイケルっしょ!」
和弥の第一打は九筒。
控室でモニター観戦している今日子、紗枝、由香までもが歓声に近い声を一斉に上げた。しかし、小百合と綾乃は微妙な違和感を感じた。
モニター越しに和弥同様に、恵が全く動じてないのが分かったからである。
「恵ちゃん、全然動揺してないね」
「ですね……。竜ヶ崎くんのこと、知ってるはずなのに……」
綾乃と小百合がそんな会話をしていると。龍子が2人の下にやって来た。
「2人とも気付いたか? そう、発岡恵は竜ヶ崎と一度対戦しているし、その実力も認めている。だがな……」
龍子はモニターに視線を移し、こう続けた。
「あいつも……“勝負師”の子なんだよ」
大きく息を吐く龍子。
「ど、どういう事です?」
「発岡の父親も───元・裏プロだったんだ。さらに言えば鳳美里の父親もさ」
驚く小百合。対して綾乃は平然としている。恐らく、綾乃は知っていたのだろう。
9巡目。和弥は聴牌にとる。
「お、親満確定です!」
「好形だし、ダマで充分ね」
「あの捨て牌じゃリーチしなくても萬子は出ないだろうし、あたしならリーチ行くかなぁ~」
自分の事のようにワイワイと騒ぐ紗枝、今日子、由香。
(張ったわね。公九牌の手出しから、最初に切った中張牌がドラ表………。ドラは対子以上の、かなり大きな手と見ていいわね。四筒を捨てた時点で筒子の面子は完成している…)
続いて恵も聴牌した。
(でもこの手になったら、私もオリる訳にはいかないっ!)
「リーチ!」
恵は隠すつもりもなく、堂々とリーチをして勝負してくる。
(チ………この女も張ったか。こうなったらまくり合いだ)
連続ツモ切りを続ける和弥、そしてリーチをかけた恵に、他の2名もさすがに牌を絞ってきた。
13巡目───
「ツモ! こんな最後の一枚みたいな牌がいたわ」
「3,000・6,000」
「えぇっ!?」
「あれツモる!?」
最後のドラをツモッた恵に、立川南の控室は騒然とする。
月・水・金曜日に更新していきます。
「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。
していただいたら作者のモチベーションも上がります!