表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
10/243

第9話:全く別の視点

「なんだよ?」


 卓に歩み寄り13枚の牌を集めた小百合は、手牌形を見せる。それは小百合が『紅帝楼(こうていろう)』で見た、和弥の最後の和了(アガ)りの二向聴(リャンシャンテン)だった。

挿絵(By みてみん)

貴方(あなた)、ここから六・七萬の両面塔子(リャンメンターツ)を捨てて、平和(ピンフ)三色(サンショク)も放棄したわね。理由があるなら教えてもらえないかしら?」


「………知らなくても。委員長の今後の人生には、何の影響もないだろ」


 この連中を相手に“種明かし”をしても仕方がない。そう思って帰ろうと思ったその時だった。


「今後の人生に影響あるのか、ないのかは私が決めるわ。お願い、教えて」


(こりゃ、説明するまで帰してくれそうにねぇな)


 諦め気味に卓の付近まで戻って来た和弥も、またカチャカチャと牌を集め始める。


「ひょっとして………引っ掛けリーチの布石とか?」


 由香が能天気に尋ねるが、和弥は首を横に振り、牌を集め始めた。


「あの時の上家(カミチャ)対面(トイメン)下家(シモチャ)の捨て牌だ」


「まず下家だが。タンピン系の捨て牌で早々と四萬切りだ。ようするに三萬は使っていない」

挿絵(By みてみん)

「あの時のドラは(ハク)だったが、おそらく対面が対子以上で持っていたんだろう。ここも早々と一・ニ萬のペンチャン落とし、三萬はない。

 しかも五萬切りのあとに手出しで九萬だ。八・八・九萬の形から八萬を暗刻にしたんだろ。この時点で八萬は残り0、五萬があと2枚あるかどうかだ」

挿絵(By みてみん)

「上家も678の三色狙いだろ。ここも二萬を早々に切っている、三萬は使っていない。最後に五萬を切ったのは赤五をツモっての入れ替えだろ」

挿絵(By みてみん)

 小百合も、由香も、今日子も、そして綾乃も。言葉を無くして聞き入るばかりだった。


「片側が0になり、もう片方も1枚残っているかどうかの両面じゃ意味が()ぇ。だったら山に4枚残ってるカンチャンの方がいい。そう判断しただけだ」


 茫然とする4人を後目に、学生カバンを持って部室から出ていく和弥。部室内には当然ながら、重苦しい空気が充満していた。


「な、なーにが山の残り牌よっ! ホントは引っ掛けリーチで意表ついてやろうかとか、せいぜいその程度でしょ!?」


 精一杯の作り笑いを浮かべ、乾いた大声を張り上げたのは1回戦目で5分で飛ばされた今日子である。

 しかし小百合、そして綾乃の評価は全く違っていた。しばらく何かを考えていた小百合だったが、卓に手を突いて立ち上がった。


「部長。私は竜ヶ崎くんを絶対に入部させたいと思っています。皆さんも協力して下さい」


「そりゃもちろんっ! 私もメッチャ彼に興味が出て来た。もう何がなんでも入部してもらおうっ!!」


 綾乃も満面の笑みを浮かべた。


「あたしは反対ですっ! あんな奴、絶対認めないっ!!」


 和弥にコテンパンに叩きのめされた今日子は、立ち上がって声を張り上げる。


「認めないも何もさー。それは今日子が決める事じゃないじゃん。第一、カレシが入らなかったら選手権の団体戦どーすんの?

 綾乃先輩以外の3年生は抜けて、ここにはもう4人しかいないんだよ?」


 呆れた目で見る由香に諫められ、今日子は下を向いてしまった。


「あっとっと。そろそろ下校時刻だね。片付けようか」


 部室には窓から射し込む夕日が、空間そのものをオレンジ色に輝かせていた。

月・水・金曜日に更新していきます。

「面白い」「続きを読みたい!」と思った方は、ぜひブックマーク、下の評価を5つ星よろしくお願いします。

していただいたら作者のモチベーションも上がりまます!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ