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あなたの空は青いですか?

 順調にステロイドを減量できるどころか、免疫抑制剤というお薬が順調に増えてしまっている蔵前です。

 なぜか。

 前回ステロイドを減量した結果として、今回の血液検査の結果ではCK値が四百越えという、筋炎再燃ですか?という結果が出てしまったのである。


 しかし、ステロイドは増やせない。

 ならば、免疫抑制剤、という選択である。


 二十五ミリから二十ミリへ減らした事で、一気に体が重くて怠い、という状態になっているので、気持的には増やして楽になりたい。なりたいが、ムーンフェイスだけでなく首の後ろ辺りも膨らんで来たという野牛肩を考えると、医師が指示する通りに、ステロイドを減らしていきましょう、の選択しかない。


「診断書を書きますから、自宅療養にしませんか?仕事に復帰したことで体に無理が来たからかもしれませんよ」


 私は医師の提案を一瞬だけ考えたが、医師には「大丈夫」と答えた。


 だってさ、たぶん疲れとかストレスとか、ぜんぶ家族からのものだし。

 奴ら、とりあえず私はしばらく安静にしてなきゃいけないってこと、一切理解していないんだよね。

 これは、余命宣告を受けいれる時の五段階の心の動き、まず第一段階の「ショックのあまり事態を受け入れる事が出来ない」って奴なのだろうか。


 入院前に、私死ぬかもって、奴らを脅し過ぎたか?

 それとも、実は五年生存率が九十パなんだよって、気が付いてしまったのか?


 全く、仕事に行った方がストレス解消になるってなんだそれ、だ。

 そこで私の最近の夢は、宝くじが当たるである。

 当たったら家族三人で均等に分けて、ブーフーウーの三匹の子豚の如く一人で生きて行こうと家族解散してしまおうか、そんな気持ちだ。


 ところが当たらないんだな。

 おかしい。

 私はくじ運はいいはずでは?

 交通事故死よりも確率の低い指定難病に当たったぞ?


 友人にリュウマチ患者が二人いるけど、リュウマチって辛くて大変な難病なのに患者数が多すぎるから指定にならないんですってよ。

 また、難病友の会の先輩ハンナさんは、彼女の病気が希少すぎて指定難病となったのがつい最近だったと申していたぞ。


 なんと、難病である病気全部が国の補助が受けられるわけではなく、要件を満たした難病だけが補助を受けられる指定難病になれるのだそうだ。


 その一、患者数が人口の一パーセント前後程度でなければならない。

 その二、エビデンスがある病気でなければいけない。


 つまり、七十万人以上は存在するリュウマチ患者はその一で弾かれ、ハンナの病気は珍しすぎて患者数が少なかったがためにエビデンスと言えるものがなかったから、ということらしい。

 と、いうことで、最初から診断が指定難病疑いだった私は、とっても幸運だったと言えるのではないだろうか。


 なのに、宝くじには全く当たらず、けれども、薬代の支払いで毎回交通事故死した気持になれるというこの苦境!

 免疫抑制剤が追加で、二万だと!

 最近の私の視界というか、太陽光が朝だろうが昼だろうが西日のような色合いに感じるのは、このようなストレスが原因なのであろうか。


 とりあえず前回の診察で視界がおかしいからと眼科の予約を担当医にお願いしていたので、本日の診療時に眼科に目を見て貰った。結果、目玉は綺麗だった。

 心配していた白内障は全くなかった。

 とすると、現在の視覚異常が目玉以外の要因となり、脳か精神的なものが、と言う問題になってくる。


 ハハハ、では今の私では「心神喪失」や「心神耗弱」を主張できるか?

 よし、次に家族を脅す際には、これでいこう。

 お前らをやっちまった理由として、「太陽が黄色かったから」って警察に供述してやんぞ、と。


 さて、ここで余計なことだが、カミュの小説で主人公が殺人の理由に言ったのは「太陽がまぶしかったから」だった。そして蔵前は異邦人は大学の課題で読んだだけでカミュなんて嫌いなんで読み直すわけ無い。

 けれどエッセイで書くんだから確認しなければと、「太陽がまぶしかったから」か「太陽が黄色かったから」のどちらだっけと私は検索してみたのである。


 結果、カミュは「太陽がまぶしかったから」で間違いはない。

 また幸運なことに、私は果実を手に入れた。


 なぜか「広島大学学部長殺人事件」が検索トップに出たのである。

 検索エンジンの中の人もきっと黄色な太陽を見ているのかもしれない。

 検索エンジンさんありがとう、な感じだ。


 広島大学学部長殺人事件とは、殺人者が被害者の死体に砂をかけたり死体の周りに被害者の持ち物を並べたりと、ダヴィンチコードの元ネタでしたか?と聞きたくなる事件概要であったのだ。いいや、殺人者に、前世は猫でしたか?と聞きたくなったが真実だ。


「うわ、事実ってやっぱ小説よりもキなり。キてるわ」


 気が付けば、自分の中で生まれかけた家族への殺意も、自分の視界が黄色かろうがどうでもいいような気になっていた。

 ゴッホさんが黄色を多く使ったのは、世界が黄色く見える黄視症だって言われている。そんなゴッホさんが、ちょっとどころかかなり可哀想な人生だった事を考えれば、そうだよ、私幸せだよ。


 ということで、こんな謙虚な私に宝くじを当ててください、神様。

 青い空は私の心の中にありますから大丈夫です。



お読みいただきありがとうございます。

小説は最近ムーンで書いてますが、以前のように書けなくなってます。

現在よりも辛かったはずの去年一昨年の方が書けた事を考えると、薬の影響って強いんだなという実感です。

薬の話をしていると職場の同僚が口を挟んできて、「薬は本気で意識とぶね。全く記憶がなくなるもん。」なんて言い放った日には、それは昏睡レイプ系の目に遭いかけた、という判断でよろしいですか?と聞き返せるはずもなく。

いや~世界にはハードな人生を送られている方は沢山いらっしゃるんだなあ。

私なんて、まだまだよ。

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