友人
20か所近く誤字報告ありがとうございます。思い込み激しくて読み直しても気付かないので有難いです。頭クソ悪いんで本気で誤字脱字していることも多々あるんですが・・・。ブクマもありがとうございます。すごく嬉しいです。
4話からは誤字チェックちゃんとします!誤字脱字1話2つまでを目標に減らしていこうと思います。
図書館で本を探していると、本棚の高い本を取ろうとしてよろけている女性が目についた。その女性の横に立ち取ろうとしている本を掴むとその女性と目が合う。
「この本で良い?」女性に尋ねると、こくりこくりと頷く。小柄なせいだろうか小動物の様な動きのせいだろうか?綾姫より年上に見えるが幼い頃の綾姫を連想させる。
「ありがとうございます。」お礼を言うのが恥ずかしいのだろう。顔が赤い。綾姫も幼い頃、お礼や謝罪を恥ずかしがっていたなと懐かしくなる。
「どういたしまして。」微笑ましい。
その場を後にして歩いていると、奥の書棚に綾姫の姿が目に入った。何か言いたそうな顔で見つめてくる。
「お兄様って油断も隙もないですね!」物騒なものいいをされている。
「何が?」心当たりはないが少し怒っているようにも見える。
「そういうのキュンとするものなんです!先ほどの方!お兄様のこと目で追っているじゃないですか!」先ほど本を渡した女性のことだろうと目を向けると女性と目が合う。慌てた様子で目を逸らされる。
「むしろ嫌われてないか?思いっきり目そらされたけど。」それよりどこにキュンとするのか分からない。落とし物を拾ってもらったようなものだろう?それできゅんとした経験などない。
「親切なのはいい所ですが、あざとすぎて心配です。」心配?綾姫に心配され思わず笑ってしまう。
「心配ってなんのだよ。あざとくないし。」綾姫の方がよっぽど危なっかしいのに人の心配をしている場合だろうか?大人ぶった態度がなんだか面白い。
「笑い事ではないです!」
「そろそろ行こうか?」綾姫をあしらいながら図書館の外へと向かう。
「もういいんですか?」
「まだ所蔵されていないらしい。」綾姫にデートに誘われどこがいいかと言われたので図書館を指定しただけで大した用はなかった。ちょうど読みたい本もあったので司書に尋ねたがなかったのですることもなくなってしまった。
「そうでしたか。本屋さんに買いに行きますか?」一人なら買いに行っていたかもしれないが、すぐに欲しいものではない。
「仕事帰りに行くよ。次は綾姫の行きたいところに行こう。どこがいい?」
「それでは本屋さんに行きましょう。私も行きたかったんです。」
「へぇ~ありがとう。」
「なんですかその顔?」
「そんな風に気が使えるようになったんだと思って。」
「そのくらいできます。子供じゃないんですから。」
「大人になったって意味だったんだけど」
「大人だと思っていたらそんな風には思わないものです。」その通りだと思った。綾姫の幼い頃の思い出が多すぎてつい子ども扱いしてしまう。綾姫がどれだけ大きくなろうと、あの頃を思い出してしまう。あの頃、綾姫の存在に何度も救われたからだろうか?
本屋に向かって歩いていると前からきゃっきゃと楽しそうに会話をしている2人組の女の子が歩いてくる。
「あ!お姫様!」そのうちの一人がこちらを見ながら手を振っている。
「ひめ~どこ行くの?」もう一人が大きな声で話しかけてくる。綾姫が気まずい様子で目を逸らしている。少女たちの視線から察するに綾姫の知り合いのようだ。綾姫はここでも姫と呼ばれているのだと知った。
「お姫様だって。」「どんな子?」少女たちの声に反応し近くを歩いていた人たちがこそこそと喋りだす。「可愛いね」などとこそこそ話しながら通り過ぎていく。
「春香さん、千尋さん。その呼び方やめてください。本屋さんです。」綾姫は知らないふりで通そうとしていたようだが恥ずかしくなった様で近づいてくる彼女たちに返事を返している。
「え?なんで?姫は姫でしょう?偶然、私たちも本屋に行く予定だよ。」肩のあたりで切りそろえられた髪に少し釣り目ではあるが大きな瞳の少女が悪びれた様子もなく不思議そうな顔で答えている。
「そうだったの?千尋ちゃん!」もう一人の子はふわふわした髪をツインテールにくりっとした目で隠れるようにこちらをみていたが驚いたように話し出す。見た目も性格も対照的な子達のようだ。
「しー!こっちの方が図書館より面白そうだもん。」こそこそと話しているが全て聞こえている。
「綾姫ですからね。それから面白くないので図書館に行ってきてください。」ムッとした表情で答えている。
「姫って感じだし、ぴったりのあだ名じゃん。いやいや本屋に用があるんですよ。」怒っている綾姫は眼力が強く迫力があるので、動じることなく返す彼女に少し驚く。
「全くぴったりじゃありません。」冷たい態度で言い返している。友達にこんな言い方をして大丈夫か心配になる。後ろに隠れていた子と目が合うと困ったように笑う。
「はいはい。ところで、お兄さんはお姫様の王子様ですか?」綾姫からくるりと向き直り俺に目を向けてくる。
「俺?」確認するとこくりと頷かれる。
「よく見るとほんとに王子様ですね。外国の方ですか?」遠慮なしに聞いてくるが、綾姫への態度や俺への表情からするに悪気はないことは分かる。もともとこういう性格なのだろう。
「半分外国の血が混じっているけど王子様じゃないな。」
「そうなんですか!格好いい!あ!はじめまして岬千尋です。」
「ありがと。槐千花晴です。」変わった要素があると格好良く見えるお年頃のようだ。この見た目のせいで損をすることが多かったが、彼女たちは偏見を持っていないようだ。
「私は、白石春香です。二人は恋人同士ですか?」先ほどまで綾姫と千尋のやり取りをびくびくとみていた割に好奇心は強いタイプのようだ。
学校の友達に勘違いされたくはないだろう。からかわれたり、いじめられるかもしれないので否定しておいた方がいいだろう。
「俺と綾姫は、」関係を説明しようとしたところで綾姫が割って入ってくる。
「はい!恋人です!」そうか見栄を張りたいお年頃だな。学校の友達に見栄を張りたくて恋人ごっこをしたかったのだろうし。綾姫と目が合うとにこりと同意を求めるように微笑まれる。
「流石ですね!」綾姫がいいならそれで構わないが見栄を張るのに成功したようだ。
「でも千尋ちゃん、真尋くんが聞いたら泣くんじゃない?」真尋くんは泣き虫な子なのだろうか?
「いやいや真尋なら怒るんじゃないかな?ねぇお姫様。」怒る?短気な子なのだろうか?
「何でそうなるんですか?あ、真尋さんは千尋さんの双子のお兄様です。」綾姫が話の補足をしてくれる。
「真尋は姫が好きだからお兄さんに嫉妬しちゃうかもですね。」仮に真尋が綾姫を好きであっても、こんなことで泣いたり怒ったりで嫉妬する男に綾姫は託せない。
「それは怖いね。」実際のところ恋人とは違うのだが、綾姫の見栄に付き合っておく。
「二人が勝手に真尋さんが私を好きだと言っているだけですよ。」
「千尋はお兄さんのほうが真尋より格好いいからお兄さんの味方です。」
「あ、ありがとう。」双子の兄をあっさり裏切って味方になってくれたが、実際はそういった関係ではないので居心地が悪い。
「じゃぁ、春香は真尋くん応援する。」二人は楽しそうだが、綾姫が冷ややかな視線を送っている。
話をしている内に本屋に着き目当ての本を探しに行くことになりしばし別行動をする。本を購入し終え、3人を探していると何か話している。笑ったり驚いたりふざけて居るのかとても楽しそうだ。
「二人とも冗談はこの辺にしましょうね!」
「お姫様怒っちゃったよ千尋ちゃん。」春香がおどおどしたように千尋に助けを求めている。
「春香のせいだね。姫、春香を許してあげて…」春香は驚いたような表情で千尋を見つめている。
「千尋さん!春香さん!私デート中なんです!」笑顔だが目は笑っていない。
「ごめんごめん。姫と話すの久しぶり過ぎて楽しくてお喋りし過ぎちゃった。」
「お姫様、最近学校のお仕事ばっかりだったから、たまには春香達とも遊んでね。」
「そんなことは・・・」綾姫は学校では理事長の孫として生徒会の仕事をしている。責任も業務に勉強も疎かにできない立場にあった。家でも後継者教育があり学生らしく過ごす時間などなかったのだろう。
「綾姫と仲良くしてくれてありがと。これからも仲良くしてあげて。」綾姫にもこんな風に本音を言い合える友人がいたことに嬉しくなる。
「はい!デートを邪魔してすみませんでした。」千尋に明るい笑顔で、悪戯っぽく謝罪される。春香はこくこくと頷いてくれている。
「全然邪魔じゃなかったよ。」
「また学校で、さようなら」綾姫は定型文の様な言葉を返している。
「姫のデレな姿を見られて楽しかったよ。」千尋がにやりと笑ってからかうように綾姫に声をかける。
「デレてません!」綾姫が言い返したタイミングで千尋が春香の手を引くように駆けだす。
「お姫様、お兄さんまたね。」春香が手を振って去っていく。
「いい友達だな。」
「あの子たちとは幼稚舎からの付き合いなのです。」
「そっか楽しい学生生活を過ごしているようでよかったよ。」友人にからかわれている綾姫は年相応の女の子と言う感じで、こんな表情でこんな風に喋るのだと知った。