義妹
よろしければ、評価感想お願いします。評価感想を頂ける価値もないならそれもまた評価として受け入れるしかないのですが、どうすれば面白くなるのか教えていただければ幸いです。直しようもない感じならそれもまた教えてください。これを書くのやめてしばらく勉強します。その後にまた違う作品をもっと上手に書くので感想いただけると嬉しいです。
この国有数の財閥である杜若家の嫡子 杜若綾姫。生まれたばかりの彼女の遊び相手として、分家の槐家から杜若家に連れてこられたのは10歳の時だった。
色々事情があり少々変わった身の上だが、杜若家での生活に特段不満はなかった。皆親切に接してくれ綾姫との扱いの差もほとんど無かった。逆に自分の方が周囲から少し距離を置いていたように思う。そんな俺にとって綾姫はたった一人の妹のような存在だった。
初めて会った頃の綾姫は、何もかも小さくて儚く触れただけでどうにかなってしまいそうなほど弱々しく見えた。くりとした目をこちらに向け小さな手を伸ばし何かを掴もうとしていて、手をそっと差し出すと指を握りしめられた。指一本を握るのもやっとな小さな手は柔らかく頼りないはずなのに暖かく思いのほか力強くて泣きたくなるくらい可愛いかった。少し成長すると動けるようになった、いつも俺が学校に行こうとするとついてきて毎回玄関で止められていた。帰ってくると嬉しそうに近寄ってきて抱っこをせがみ、断ると足にしがみついて膨れっ面になり手を差し出すと嬉しそうにしがみ付いた。すぐに笑い、ふくれっ面になり、ころころと表情を変える素直で分かりやすい子供だった。それから数年経ってからも変わらず俺にべったりで、宿題をしているときは横にやってきて画用紙とクレヨンで落書きしていた。何もしていないのに笑ってくれ、慕ってくれ、側にいてくれ、必要としてくれ、家族とはこんな存在なのだろうと思った。
大学を卒業する頃、綾姫には相変わらず懐かれてはいたがもう遊び相手も世話も必要ないくらい賢くしっかりした子供に成長していた。杜若家を出ようかと考え始めた頃、綾姫の父に「綾姫の傍にいて、勉強を見て欲しい」と言われこの家に残ることにした。今思えばあの時、杜若家から出ておくべきだった。
先日の出来事以降・・・、
お互いに仕事や学校で忙しく、何事もなかったかの様に過ごしていた。朝食後、目が合うといつものように笑顔を向け話し掛けてくる。
「お兄様。今日ご予定ありますか?」仕事が忙しく、綾姫の貞潔な女性計画はタイトル以外何も決まっていない。
「ないけど、どうした?」
「デートしませんか?」デートと言う言葉に違和感がある。
「デート?」もともと綾姫とはよく一緒に出掛けていたが、デートといった言い回しで誘われたことが初めてなので違和感が強いのだろう。
「はい。もしかしてお忘れですか?私とお兄様が、」先日のことを言っているのだろうが、こんなところで朝から話す内容ではない。
「覚えている。言わなくていい、覚えてるから。」こんなところであんな話をしようとするとは、やはり早々に貞操観念を身つけさせなければならない。
「覚えているようで良かったです。」鮮明に思い起こされるあの日の綾姫の姿をかき消し、カップに注がれたコーヒーを飲み干す。
玄関ホールで待っていると綾姫が少し駆け足でやってきた。薄い緑のワンピースに同じ色合いのリボンを頭の上の方で結んでいる。
「おまたせしました。」少し息を切らして申し訳なさそうに告げられる。朝食の際着ていた服とは違うものを着ている。
「それほど待ってない。着替えてきたのか?」
「あ、はい!…白や桃色では子供っぽい気がしまして。あ!でもリボンって子供っぽいですよね?変ですか?」
「そんなことないよ。似合ってる。」リボンも頭の真上から少しズレているせいかそれほど子供っぽい印象を受けない。
「可愛いですか?」小首をかしげ尋ねてくる。
「可愛いよ。」褒めて欲しいのだろうか?子供のころから変わらない。頭に手を置いてから、髪が乱れたら嫌がるかな?とポンポンと触れておく。
「か、可愛いですか?!」少しうつむいて驚いたような口調で再度尋ねてくる。自分で聞いといて何を驚いているのだろう?
「うん。それでどこ行きたいんだ?」
「・・・そうですか。えっとお芝居でも見に行きませんか?」
「いいよ。行こうか。」手を差し出すと呆けた顔で見つめられる。
「・・・なんだか慣れてますね。」慣れてるも何も昔からこうやって出かけていた気がする。
「出かけるときいつも手つないでただろ?」
「いつの話ですか!」言われてみれば最近は手をつなぎ出かけることがなかった気がする。綾姫の後継者教育が始まって以降自由な時間が減って今日のように二人で出かけることが少なくなっていた。小学校までは良く手をつないでいた気がする。
「数年前?」
「・・・子ども扱いってことですね?」ムッとした表情をしている。もう少し扱いには気を付けたほうが良さそうだ。綾姫の嫌がるようなことはしたくない。
「悪かった。」
「仕方ないですね。許してあげます。」謝るところっと表情を変えて笑顔になる。
手を差し出したときは、子ども扱いだと怒っていた割に手は繋ぐのかと矛盾を感じる。
劇場のある市街に着くとはやりの服で着飾った人が増えてきた。久しぶりに来たせいか街並みが少し変わって見える。洋食店に洋服店が増えた。綾姫はキラキラした目で洋菓子店を楽しそうにのぞき込んでいる。くるりと髪をなびかせて振り返る甘い花の香りが鼻腔をくすぐる。
「帰りに買っていきましょうね。」楽しそうに可愛いらしい笑顔を向けてくる。すれ違う人の視線を見るとやはり綾姫の容姿は人目を引くのだろう。
劇場で入場券を提示して中に入る。印字された座席に着席ししばらくするとあたりが薄暗くなり舞台の照明が明るくなり芝居が始まった。
西洋のありきたりな恋愛もので身分差にすれ違い、一言で言うならば悲劇と言う部類の内容だった。
鼻をすする音が聞こえ顔を向けると綾姫が泣いている。芝居が終わった後もしくしくと泣いている。
「そんなに泣くほどだったか?」周りを見ると綾姫以外にも泣いている観客がちらほら見受けられるが、自分としては突っ込みどころも多くあまり共感できなかった。
「だって報われないじゃないですか。」報われないと言えば報われないのだが、そもそも女の方が意地っ張りな上ひねくれた考え方のせいで話がややこしくなったのだから自業自得ではないかと思っている。
「綾姫くらい素直だったら報われてたのにな。」とは言え男の方も単純ですぐ騙されやすく深く考えて行動しない所にも問題があるので二人そろってこれではどうしようもない。
「その通りです!意地っ張りだからダメなんです!」泣いているのか怒っているのか声を震わせながら、強い口調で訴えている。
「そんなに泣くことか?目こすると赤くなるぞ。」ずいぶん感情移入しているようだ。
「お兄様は悲しくないんですか?」うるうるとした目は泣くのを耐えている。
「こういうの感情移入できないんだよ。」なんとなく気まずくて目を逸らして答える。
「お兄様って冷たいですね。」俺の態度に不満があるのかふくれっ面で見つめられる。
「はいはい。そこの店に入るか?沢山泣いてたからのど渇いただろ?」喫茶店が目に入り勧めてみる。
「・・・アイスクリームも食べていいですか?」窓際の席でアイスを頬張っている幼児が目に入る。甘いもの一つで機嫌が直ることに笑ってしまう。
「いいよ。」
帰宅し夕食を済ませ自室へと向かう。綾姫の部屋の前に着くとくるりと振り返り優しく微笑んでいる。
「今日は楽しかったです!」
「俺も楽しかったよ。」
「おやすみなさい!」頬にキスされる。部屋のドアを閉めてしまう。
ドアに向かって「おやすみ」と言う。
柔らかい唇の感触が頬に残る。頬をそっと触ってみる。綾姫の去り際の赤くなった横顔が頭に残る。
恋愛ごっこでこんな顔をしているくらいだ。恥じらいはあるのだろう。貞操観念を身に着けさせるのも難しくなさそうだ。