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エピローグ

爽やかな夏、避暑地にある別荘は、大きな森の中にあり、我が家の家族しか出入りができない。


ここでは、忠兵衛も、元の姿に戻り自由を楽しんでいる。



『これ、止めぬか』



「ちゅーべー、うるしゃい」



いや、自由じゃなかった。


俺とオトミーの間に生まれた息子が、これでもかと、忠兵衛に絡む。



「チューニーとチューベイ、チューチューなかよしチューにビョーン」



『はぁ、まったく、チューニー、その歌は止めろと何遍言えばわかるのじゃ』



そう。


俺達は、子供をチューニーと名付けた。


彼のお陰で、俺達の今がある。


だか、まさか本当にチューニー・チャツボットの記憶を引き継ぐことになるとは思っていなかった。


言葉を喋るようになって暫く経ったある日、



智珍符委符委白米ちちんぷいぷいはくまいになーれ」



と唱え、パンを白米に変えた日は、この名前にした事を後悔した。


記憶は、断片的ではあるようだが、俺を超える魔力量とオトミーすら凌駕する治癒魔法を併せ持つチューニー。


忠兵衛さえ居れば大人しい息子を、少し悲しい目で見るオトミーの肩を抱き寄せる。



「オトミー、そんな顔をするな。お腹の子に悪いぞ」



オトミーは、二人目の子供を妊娠している。


チューニー曰く、



「いもうとねぇ。かわぃぃかわぃぃねぇ」



らしい。


時折、オトミーのお腹を撫でて、お兄さんぶる息子を、祖父母も皆、愛している。


家族に恵まれなかったチューニー・チャツボット。


唯一の家族になってくれた忠兵衛と、再び巡り合い、そして、沢山の家族に囲まれた。


俺は、そんな幸せの中に、自分が居られることが、とても幸せだった。






















「おにーたま、だっこ」



「シャルル、おにーたまは、今、お勉強中」



「おにーたま、だっこ!」



両手を突き出して抱っこを強請る妹を前に、チューニーが、気持ち悪い笑みを浮かべて身悶えておる。


転生しても、中身は、変わらんか。


見た目は、オトミーの愛らしさとウォルフの凛々しさを兼ね備えた超絶美形じゃというのに、惜しいのぉ。



「おい、忠兵衛、今失礼な事考えただろ」



『そのように感じると言うことは、後ろめたい何かがあるのじゃろ?』



「五月蝿い、五月蝿い!シャルルは、嫁にやらん」



『何の話じゃ?』



話が突然飛ぶのも、昔から変わらぬ。


変わったのは、ジジババ、父母の愛情を受け、スクスクと育つことが出来た家庭環境。


今、オトミーが三人目の子を宿しておる。


そのせいか、甘えたがるシャルルを、チューニーは溺愛中だ。


これは、立派なブラコン、シスコンへと育つことじゃろう。



「忠兵衛」



『なんじゃ?』



「お前、幸せか?」



そんな幸せそうな顔で聞かないで貰いたい。



『そうじゃなぁ。まだまだ物足りんのぉ』



お前は、もっと幸せになって良い。


笑ってやると、チューニーは、少し涙を浮かべた後、ワシの毛の中にダイブした。



「おにーたま、シャルも〜」



シャルルとチューニーがワシの毛をもみくちゃにする。


少々痛いが、こんな幸せな痛みなら、甘んじて受け入れよう。















チューニー・スタンガン



幼少期より、天才の名を欲しいままにした変人。



治癒魔法で傷ついた人々を国関係なく癒し『天使オトミー』と呼ばれた母を持ち、生活に便利な魔道具を開発し『発明の父ウォルフ』と呼ばれた父を持つ。



彼には、ポリシーがあった。



弱き者を助け、強き者を挫く。



呼ばれても居ないのに、神獣を従え、他国の戦地に赴いては、手当たり次第に怪我人を治療しまくる。



そして、話し合いで戦いが終わらなければ、自らドカンと一発かますと言う荒技で終戦を迎えさせる。



戦火に喘ぐ平民達からは絶大なる人気を博したが、領地を広げたい王侯貴族には、G並に嫌われた。



妹シャルルの残した日記によると、



『おにーたま、だーいしゅき』



と言うと何でも買ってくれたらしい。



「とても素敵なお兄様なのに、少し残念な方でした」



そう微笑む妹は、とても嬉しそうな笑みを浮かべていたと言う。



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― 新着の感想 ―
[一言] 幸せな物語を、ありがとうございました! 途中ドキドキ、次の更新までソワソワが止まらないのに耐えかねて、展開が落ち着くまで読むのを我慢するという暴挙に出ましたが、スタンガンさんちの素敵な家族…
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