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灼眼の小刀  作者: 七紙野くに
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第4話 疾風のニューカマー

疾風のようにいつものバイク屋に現れた女子高生。

目的はスクーターを買うことだというが。

 季節を戻して日常の続きを綴ろう。


 買い物で時間を潰していた知がガレージに戻ってきた。NSRは未だレーシングスタンドに支えられている。センターカウルも外されているので作業が残っているのだろう。


 店主の姿はない。代わりにジージャンをまとった少女がエンジンを覗き込んでいる。


「あなた興味あるの?」


 夢中で気配を感じなかったのか知の言葉に少女はたじろいだ。


「あ、はい。これ、格好イイですよねー」


 リアクションのしように困る。


「知、帰ってたのか」


 店主は今日も平常運転だ。


「待ってろ、もう仕上がる」

「え、この人がオーナーさん?!」

「そうだよ」


 知を抜きにして言葉が交わされる。


「凄いですね、こんな大きいのに乗っちゃうんですか?」

「テレビで見る競争のバイクみたいですね」

「びゅーんって速いですか?」


 今度は知に畳み掛ける。


「店長、この子」

「あぁ、久ちゃん、そこの高校に通ってる」

「ひさって呼んでください!」


 元気が知を圧倒する。


「常連さん? 見かけたこと無いけど」

「いや、さっき来たの、スクーターが欲しいんだって」


 さっき来たのになんで「久ちゃん」なんだよ。知の心の声だ。


「バイク通学、許されてるの?」

「はい、なんか方針が変わったみたいで、最近は許可される学校が増えています」


 知が同世代を過ごした頃は二輪に理解がある教師はいなかった。当然の如く免許は取ってはならないものだとされていた。


「免許を取らせない」

「買わせない」

「運転させない」


 所謂いわゆる、三ない運動の余波だ。


 後で知ったことだが三ない運動自体が見直され始めたらしい。乗せないより乗せて安全教育を行う、ということだ。


 だが知は高校生のスクーター選びに関心はない。それより原付を見に来た久がなぜNSRに興味を持つのかが気になった。


「私のバイク、ゆっくり走れないし荷物も積めないよ。それにMTだよ」

「MTってなんですか?」


 駄目だ、会話が成り立ちそうにない。助けを求め店主に視線を送る。


「まぁ、あれだ、速く走るだけしか能がないバイクってことだ」

「それ酷いじゃない」

「合ってるだろ」

「せめて、走るために存在している、とか、言いようがあるじゃない」

「お前、この白氷に速さ以外のなにかを求めてるのか?」

「いや、求めてない」

「じゃ、構わないだろ」

「人の気持ちに配慮して喋れ、馬鹿店長!」

「馬鹿はないだろ、走り馬鹿!」


 改めて述べるが二人とも大人である。しかも客と店員である。知は整備代を負けさせたことはないし店主は専門分野のみだが知識と技術力は折り紙付きだ。


 突然、久が割って入った。


「知さんって店長の彼女さん?」


 間髪入れず語気を強めたユニゾンが返る。


「違う!」「違う!」

「へぇ〜、ふふふ」


 店主と知は降参して話題を変える。


「で、その中ならどれがいい?」


 店頭と呼んで良いのか歩道にはみ出して並べられた色とりどりの車体に目をやる。


「私、これにします!」


 そう宣言すると久はNSRのタンクに両手を置いた。


「いやそれ駄目だから、私のだから」

「あ、同じのが欲しいってことです!」

「止めなさいって、危ないわよ」

「知さんは危なくないんですか?」


 痛いところを突かれた。知も買った当初から自由自在に操れたわけではない。よろよろしつつも峠に通う中でテクニックを身に着けてきた。ここで引き渡された時、発進に梃摺てこずり次の交差点を曲がることも出来なかったのを店主には見られている。


「お金あるの? ボロだと思っても結構、高いのよ」

「バイトします! あ、ここで働かせてもらえませんか?」


 顔を見合わす店主と知。


生憎あいにくだがバイトを雇う甲斐性はないんだ」

「そうですか、でも頑張ります!」


 本気らしい。


「あ、約束があるので今日は帰ります。また来ます! サヨナラ!」


 結局なぜNSRに興味を持ったのかは謎だ。


 微笑む店主が呟く。


「面白いねぇ」

「面白くないけど」

「お前もあんなだったぜ」

「え、一緒にしないでよ」

「お待ちどおさま」


 接客しつつも手は動かしていたらしい。カウルも閉じられている。


「知、これにタンデムシートとステップ付けないか?」

「なんで?」

「後ろに乗せてやれば諦めるかも」

「そのためだけに崩すなんて嫌だ」

「固いねぇ」


 知は無言で代金を支払い店を後にした。


「俺、なんか悪いこと言ったかな」

「ま、いっか」


 二人が去った店内でコーヒーを傾ける店主。テーブルには「あの時代」の雑誌が所狭しと広げられていた。

言うまでもありませんが拙いフィクションです。現実のバイク屋さん、二輪車取扱店、ディーラー、店員さんとは失礼に当たらない距離感を保ちましょう。

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