第4話 冒険への誘い
帰る方法がわからず雨のなか途方に暮れた
……首が痛い。ずっとうずくまったまま眠ってしまったんだ。そっと目を開けると昨日と同じ風景が広がっていた。私にとって絶望的な景色。いく当てもなくどうしたらよいのかわからない。仕事して稼ぐ?どうやって?こんな身よりもない、正体不明の人を雇ってくれるところなんてあるのだろうか。
動く気力がない。もうこのまま野たれ死んでもいいかも。スマホは相変わらず圏外だ。電源を切ってかばんにしまう。
するとふと下げた視線の先に人の靴が現れた。見上げると男の人が私を見下ろしている。
「こんにちは、お嬢さんこんなところでなにしているのかな?」
「……いやべつに、なにも」
私は答える気力がなくて、ただ面倒ごとに巻き込まれたくなくてそう返事した。
「こんなところに一人で危ないよ。なにかわけがありそうだね」
「私、別の世界から来たんです。信じてもらえないかもしれないけど。お金もなくてどうしていいかわからなくて」
すると男の人はしゃがんでにっこり笑った。
「そうかなるほど君にもいろいろ事情がありそうだね。でも仕事なら紹介できるよ」
「えっ本当ですか?!」
だがすぐに嫌な予感が頭をよぎる。大体こういうのは水商売なのだ。私はそんなことはしたくないし向いていない。
「いえ、結構です。風俗では働けませんので」
「いやいや違うよ。風俗じゃない、もっとちゃんとした仕事さ。さあ立ってついてきて」
これ以上ここにいるわけにはいかない。仕方が無いので男の人の後に一緒について行くことにした。歩きつかれて足がパンパンだ。髪もぐしゃぐしゃだし。水溜りに映った自分の顔を見ないように歩いた。
「それで、えっとなんの仕事ですか?」
「君、冒険者って聞いたことある?依頼を受けて仕事をする便利屋みたいなものさ」
冒険者?探検家みたいなもの?でも依頼って言ってどういうものだろう。洞窟探検とか?
「それ私にもできるんですか?」
「大丈夫、冒険者っていうのはランクがあってそれに見合った仕事をうけられるんだ。薬草つみからモンスター討伐までいろいろあるよ。猫探しなんてのもあるしね。小遣い稼ぎにやってる人も大勢いるんだ」
へえーなんだか私にもできそうだな。要するに簡単な依頼をこなしていけばいいんでしょ。それで宿代ぐらいは稼げないかな。でもこの人、まだ信用できないな。
「あの、あなたはどうして私なんかを?」
「あーそれはたまたまさ。俺はその冒険者ギルドに人を紹介する仕事をしているんだ。こういう感じで誘うこともあるわけ。名前はキルフェル、君は?」
「えっと夢見沢 朋恵です」
すると彼は不思議な名前だねと明るく笑った。それにつられてなんだか私も笑ってしまった。冒険者か、今までやったことない仕事だけどなんだか楽しそうだ。