アホ王子があまりにもアホすぎてキレそうなんですけど!
「本当に君は性格が悪いな」
性悪なのはおまえだアホ王子!
「リリアと君が2人で話しているところを、ブライが目撃している」
は!?
「なんですって?」
なになに!?どういうこと?
ブライ様、なんでそんなウソをアホ王子に言うの???
「私に身に覚えはございません」
ジェリーナ様即否定。
そりゃそうだよ。私にだって身に覚えがないもん!
「嘘だな。ブライは1ヵ月ほど前に図書館で、リリアと君が話しているところを確かに見たと言っているぞ」
はい?
1ヵ月前…図書館…?
はっ!!!
「あ…」
ジェリーナ様も思い出したみたいだ。
「ほら、身に覚えがあるだろう」
勝ち誇った笑みを浮かべるアホ王子。
確かに、私は1度だけジェリーナ様と話をしている。
話というか、全然取り合ってもらえなかったから、私が一方的に話しただけなんだけど。
アホ王子があまりにも泣き言をいうから、たまたま図書館で見かけたジェリーナ様に「もっとアルノート様との時間を大切になさった方が良いと思います」と、助言をしてしまったのだ。
後から余計なお世話だったとひたすら後悔したけど、まさかブライ様が見ていたなんて…。
バカ!私の巨大バカ!
墓穴掘ってる!自分バカーーーー!!!
「あれはリリア様が一方的に私に意見しただけです。私は何も言っていません」
ほんっとそう!
ほんとにマジでごめんなさい!申し訳ないです…。
「まぁどっちでもいいさ。とにかく、君とは婚約破棄する」
がーーーー!!!!
なにがとにかくだ!
婚約破棄すなっ!
「待ってください。それで本当にいいんですか?」
このままだとジェリーナ様がブチ切れて婚約破棄を受け入れてしまう…。
私は再び口を挟んだ。
「わかりました。好きにしてください。
でも、婚約破棄に関する手続きは全てあなたにやっていただきます。
私は金輪際、あなたの婚約者としての努力を全て放棄させていただくわ。
関係各所の説明は、あなたからお願いします」
だめ…。
ジェリーナ様ダメですぅ…。
アホ王子を見放さないでっ!
「なにっ!?」
え!?そこ驚く?
散々無礼な態度で暴言吐きまくれば、見切りつけられるのが必然でしょ。
ああ…アホアホ王子…。
「当然ですよね。あなたの希望で私は一方的に婚約破棄されるのですから」
アホ王子、すっげー目でジェリーナ様睨んでるよ…。
どこまで根性曲がってるんだろう…。
婚約破棄した方がジェリーナ様は幸せになれそう。
自分が無関係だったら、秒で「いいぞいいぞー!」とジェリーナ様の背中押す。
でも、無関係じゃないからそれじゃ困るの!
「…いいだろう。全部僕がやってやる。だから今すぐ僕の視界から消えろ」
「だから、ちょっと待ってくださいってば!」
断腸の思いでアホ王子に駆け寄り、すがるように訴えた。
駆け寄ってそのままジャンピングキックしたい欲求を抑えた自分を誰か絶賛して!
「アルノート様、私はあなたの婚約者の器じゃありません。
それに、何度も言っているように、ジェリーナ様から何も言われていません。ジェリーナ様がおっしゃっているように、図書館では私が勝手に言葉をかけただけです!」
「そんなに怯えなくていいんだよ。リリア、本当のことを言ってくれ」
ダメだ…目がイっちゃってる…。
でも諦めない心!
「ですから、今申し上げたのが真実です!!」
「リリア様。もうお芝居はされなくても結構ですわ。アルは私ではなくあなたと婚約すると決めたのですから。
自分の思惑通りに事が運んで、さぞ嬉しいでしょうね」
ひえぇっ!
ジェリーナ様が憎悪のこもった目で私を見ている…。
恐い…けど、それでもあきらめない心!
「だから、違いますって!
ブライ様も何とかおっしゃってください。アルノート様とジェリーナ様を止めてください!!」
最後の頼みの綱であるブライ様に私は助けを求めてみた。
「いやえとあの…」
はいダメーーー!
こいつもアホダメーーー!
主従そろってアホアホーーー!
その事実を知った時の落胆を、再び思い出して泣きたいです!
「早く部屋から出て行け。リリアがかわいそうだ」
諸悪の根源はおまえだよっ!
「わかりました。それでは2人とも、末永くお幸せに」
いやっ!ダメです!
私を見捨てないでジェリーナ様!
私はあわててドアに立ちはだかり、ジェリーナ様の退室を阻止した。
「どいてくださる?」
「ダメですジェリーナ様。
あなたが退いたら、この国を誰が守るのですか?」
お願い踏み止まって!
「どうしてあなたにそんなことを言われなければならないのですか?」
しかし、私の言葉はジェリーナ様の逆鱗に触れたようだ。
「ダメですって?どの口が言うんですの?
あなたが望んだことでしょう。
どうぞ、これからはアルノート王子の婚約者として、日々尽力くださいませ」
望んでないってば!
「どうしてそんな女を引き止めるんだ、リリア」
アホ王子が走り寄ってきて私を抱きしめる。
私に触るなーー!!!!
誰か、こいつを抹殺してー!!!
「君は何も心配しなくていい。僕が守るし、苦労しないで済むように根回しするから」
「だから…」
「根回しとは?さすがに聞き捨てなりませんわ。
アルノート様、まさか1人の女性のために、今までの規律を破るようなことをお考えなのですか?」
「うるさい!君はもう部外者だ。黙っていろ」
いいから私から早く離れろーーー!!!
ダメ。もう我慢の限界!