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婚約破棄阻止頼みの綱はジェリーナ様なんですけど!

次の日、私は昨夜届いたアホ王子からの手紙の指示通りの時間に、指定された談話室に向かっていた。


ああ…すごーく気が重い。

この難局を私は乗り切れるんだろうか…。

いや、乗り切るしかないんだけど…。


とか考えている内に談話室に到着してしまった…。

沈鬱な気分でドアをノックする。

しばらくすると、ドアが開いた。


「あ…」


ブライ様だ。

部屋の準備でもさせられていたのかな。

とりあえず良かった。アホ王子と2人きりにならないで済んで良かった…。


部屋に通されると、アホ王子はソファで踏ん反り返って座っていた。

全く…なんなんだコイツは…。

という本心は隠して、ぎこちない笑顔で挨拶をする。

隣に座るように言われ、辟易した。

幸い、ブライ様は部屋に留まってくれている。

マジ不幸中の幸い。


早くジェリーナ様来ないかな…。

嫌だけど、これからのこと考えると鬱だけど、でも早く終わってほしい…。


トントン。


ドアがノックされた。

アホ王子に促されて、仕方なく立ち上がり隣に並ぶ。

ブライ様が扉を開けると、当然だけどジェリーナ様だった。

警戒した表情で部屋に入るジェリーナ様とバチっと目が合ってしまう。

ああ…あれは完全に私を誤解している目だ…。


「よく来てくれたね。ジェリーナ。話はすぐに終わるが、とりあえず座ってくれ」


アホ王子はどこまでもエラソーだ。

ああ、なぜこんな人に目をつけられてしまったんだろう。

改めて自分の不幸を呪いたい。


ジェリーナ様は無言でソファに座る。

アホ王子もジェリーナ様の向かいのソファに腰を下ろした。


「リリア、おいで」


げげん!

行くわけないじゃん!


「いえ…私はこちらに…」


顔を引きつらせながらブライ様の横に避難する。

アホ王子は不満げだけど、知ったこっちゃない。

無視!

うっわー…、ジェリーナ様の顔超こわいよー…。


「ジェリーナ。僕が何を話そうとしているか、心当たりはあるか?」


こいつアホ!どうしようもないアホ!

呼び出しといて、何もったいつけてんの?

っつーか、ジェリーナ様は何も悪いことしてないんだから、心当たりあるはずないじゃん!

あ…、でも噂は耳に入ってるよね…。

私のこと、超悪い女だと思ってるんだろうな…。

ジェリーナ様は無言だ。


「何も言わないってことは、やっぱりあるんだな」


すっげーぞ!こいつすごすぎるぞ!

これは無言の非難と抵抗でしょ!?

それ、わからないんだー、やっぱりアホだからー…。

アホ王子から見たら、ジェリーナ様は図星さされて絶句しているように見えるんだろうな。

何をどうしたら、ここまで自分の都合良く全てを曲解できるんだろうか…。


「やはり、僕の判断は間違っていないようだ。単刀直入に言おう。君との婚約を破棄する」


…………………は?


…うそでしょ…?


何の説明もなく婚約破棄とか言っちゃう?

まさか、本気で恋愛小説のネタを地で行くつもり?

っつーか、アホ王子とジェリーナ様の婚約って、政治政策であり王命でもあるよね?


「話はそれだけだ。もう部屋から出て行ってくれ」


再び、は?


マジで説明しないつもりなの?

っつーか、ジェリーナ様当然拒否してくれるよね?

ド真面目女だけど、それだけ常識人だから、アホ王子との婚約が何を意味するか理解しているだろうし、このまま「はい。そうですか」とはならないよね?

いつものように、理詰めでアホ王子を説得してくれるよね?ね?ね!

お願いしますジェリーナ様っ!!!


私の願いもむなしく、ジェリーナ様は無言。

ちょちょちょちょっと待って!

まさか、素直に受け入れて立ち去ったりしないよね!?

そんな、小説王道の反応なんてしないよね?


そう思いたかったけど、ジェリーナ様の顔が死んでる…。

アホ王子のアホさ加減の衝撃が大き過ぎて、思考停止しちゃったのかな…。

マズイ、このままじゃマズイぞ…。


「ちょっと待ってください。アルノート様」


私は思わず立ち上がって言っていた。


はっ!?ジェリーナ様がつめた~い目で私を見ている。

まぁ…、そりゃ彼女から見たら、私は婚約者を略奪する性悪女でしょうけど…。

でも、そんなこと気にしていられない!

なんとしても、2人の婚約破棄を回避しないと、私の人生詰む!!!


「本当にそれでいいのでしょうか?」


今のジェリーナ様に何を言っても聞く耳持ってくれないだろう。

彼女にとって私は敵なんだから。

仕方なく、私はアホ王子の説得に試みる。

考え直せ!アホ!

思わず目に力が入った。


「リリア。君はとても優しいね。

でも、ジェリーナが如何に冷たい女かこれでわかっただろう?

婚約破棄を言い渡しているのに、表情1つ変えない。なんて冷酷なんだ…」


ズコーーーーー!!!

心の中で盛大にこけて、実際にずっこけるのを必死の思いで踏み止まる。

違うっ!そうじゃない!


「そんなことありませんわ!ジェリーナ様は勤勉で誠実で素晴らしい女性です!

アルノート様をお支えするのは、ジェリーナ様以外に考えられません!」


渾身の想いで力説する私。

実際、ジェリーナ様は勤勉で聡明な人格者。

確かに自分にも人にも厳しいところがあるし、アホ王子がトチ狂ってる分フォローの仕方はスパルタだけど、そうじゃないとこの国は沈む。

アホ王子、いい加減自分の力量と現実を知れ!


しかし、なぜかアホ王子は瞳をキラキラさせて私を見ている。


「本当に君の優しさは素晴らしいよ、リリア。

でも、ジェリーナにそう言えと命令されているのはわかってる。

もう、嘘をつかなくてもいいんだよ。僕が守ってあげるから」


再びズコーーーーー!!!!!

もーいやっ!


「ジェリーナ。君はリリアの人の良さに付け込んで、随分と酷いことばかりを命令していたのだろう?全く軽蔑するよ」


この人の頭の中どうなっちゃってるの!?

私、アホ王子に「ジェリーナ様に命令されてるんですぅ」なんて言ったことないぞ!

実際命令されたこと一度もないし!

っつーか、接点がないし!

まだそんな妄想の世界にいるわけ!?


「違います!命令なんて、私は一度もされたことありません!」


全!力!否!定!


「いいんだ。わかってる。君は安心して」


ぎえぇぇぇぇぇぇ!!

慈悲深い王子みたいな顔で私を見るなー!


「本当に君は酷い女だな。こんなに優しいリリアに、僕に近づかないよう嫌がらせを何度も行っていたんだろう?」


「そうじゃありません!」


まだ言うかアホ王子!


「アル…。私と婚約破棄してどうするつもり…?」


おお!?

ついにジェリーナ様が口を開いた。

どうか、どうかアホ王子を説得してくださいっ!

思わず期待の眼差しを向けてしまった。


「ふんっ。君には関係のないことだろうが、教えてやろう。ここにいるリリアと正式に婚約を結ぶ」


んぎゃー!違うっ!


「だから、待ってくださいってば!」


「リリア様。あなたは黙っていてくださる?これは、私とアルの問題です」


その通り。私は完全なる部外者。喜んで黙ってます。

だから、ジェリーナ様お願いっ!


「本性を現したな。何様なんだ君は。リリアはいつだって君を思いやって庇っていたんだ。それなのに、本当に嫌な女だな」


「リリア様がどんな言動をとっていたのかなど、私が知るはずがありません。彼女とは殆ど接点がないのですから」


その通りです!


「ウソをつくな。君はずっとリリアを脅していたんだろう?」


ああ、こいつを殴りたい。

黙れ何も言うな。


「身に覚えがございません。けど、それを信じてくれないというなら、仕方ありませんね。でも、言わせていただきたいことがあります」


「なんだ?言ってみろ。最後だから聞いてやる」


「アル、あなたの婚約者がどんな役割を担うのか、知らないはずないわよね?

あなたはウルティナの国王になる人。その婚約者は王妃となる人よ。

リリア様にそれが務まると本当に思ってるの?」


そーだそーだ!

いーぞいーぞジェリーナさまー♪


「ほら見たことか!そうやって、いつもリリアをいじめていたのだろう。人を見下して、どこまで傲慢なんだ」


アホ王子黙れ。


「私が傲慢ですって?

私のどこが傲慢だと言うの!?今までずっと王と王妃の命を受けて、死ぬほど努力を続けてきたわ。学園に入ってからは、成績は常にトップ5に入るように言いつけられて、寝る間も惜しんで勉強してきたわ!

勉強だけじゃない!礼儀作法も、奉仕活動も、学園運営も、全力で取り組んできたわ!

それでも褒められず、次々と課題を与えられて、辛くても頑張ってきたのはこの国を守る王となるあなたの役に立ちたいと思っていたからよ!

傲慢になんてなれるはずないじゃない!

いつだって、強いプレッシャーの中落ちこぼれないようにひたすら努力を続けるしかなかった。

余裕なんてゼロよ!」


ジェリーナ様が一気にまくしたてる。

この人も相当プレッシャーがかかっているんだろうな。

ド真面目だもんね。全部背負っちゃうんだ。

不器用な人だな…。


「それでも、あなたのため、ウルティナのために頑張ってきた!それこそ、友達と会話する時間もない程にね!

そんな私が、わざわざリリア様に何かを命令するはずないじゃない!そんな時間なかったわよ!

私がリリア様を脅す?命令する?そんな暇1分だってなかったわ。誰か私とリリア様が2人だけで話している姿を見た者がいるの?

いないわよね!

だって、そんな事実はないんだもの。

リリア様がでたらめをアルに伝えているだけでしょう。

そんなことも、あなたはわからなくなってしまったの!?」


「ちがっ…」


前半は完全に同意だけど、後半は違う…。

しかし、私の言葉はかき消された。

いーけど…。


「それでも、アルがリリア様の方を信じるというのなら、仕方がないわ。

次期王であるあなたの命に背くわけにはいかないものね」


えええええ!!!!!!!

ちょっと待ってよ。

ここまできてアホ王子の説得を諦めるの?

ジェリーナ様の努力ってその程度なの?

ダメダメー!お願いだから挫けないでっ!

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