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ネタ明かし

卒業パーティーに会場入りした私。

緊張する…。


入ってすぐ、強い視線を感じた。

アホ王子だ!

即行で見つかった…。

しかもこっち来るよ。

両手を広げてくるんですけど!コワ!


でも、頑張らなきゃ!

私は機敏に動いてルイザ様の後ろへ逃げた。

ここからが正念場よ!!!


――――――――――


ドレスを着替えて部屋を飛び出し、ルイザ様を探すために走り回った私。

ルイザ様はジェリーナ様と同じく公爵家の令嬢で、国王に代々仕えている家系だ。

にもかかわらず、ルイザ様は誰に対しても平等に接する人格者。

私のような下級貴族にも、気さくに挨拶してくれる素敵な女性だ。


2週間ほど前、ルイザ様から「困ったことはありませんか?」と声をかけられたことがある。

もしや、アホ王子の差し金かと最初は警戒したけど、純粋に私のことを心配してくれているようだった。


なんて気遣いが細やかな方…!!!


感動したけど甘えるわけにもいかず、そのときは「大丈夫です」と笑ってごまかしたけど…。

ルイザ様なら事情を説明すれば協力してくれるかもしれない。

私の話には聞く耳持たないジェリーナ様も、ルイザ様の言葉なら届くかも…。


助けを求めて何をするのか、まだ具体策は考えられていないけど、とにかくルイザ様を探していると、ジェリーナ様がルイザ様にすがって泣くところを見てしまったのだ。


毅然と振舞っていたけど、やっぱり相当傷ついたんだろうな…。


私は胸が痛くなった。

アホアホ王子め…。なにか制裁を加えてやりたい!


ジェリーナ様は泣いている姿を私に見られたくないだろうな。

そう思って、陰に隠れて待つ。

そして、ルイザ様が1人になったタイミングで声をかけたのだ。


そこで、簡潔に今までの経緯を説明する私。

ルイザ様は驚いた様子もなく、私の話を聞いてくれた。

そして、私が助けを求めると、快く引き受けてくれたのだ。


ほんっとーーーーに!ルイザ様って優しくて品があって素敵!!!


「でも…どうすれば問題解決できるかしら…」


「実は…私に少し考えがあります」


ルイザ様に経緯を説明しながら考えた作戦を私は説明し始めた。

私の考えはこうだ。


実は、アホ王子は私以外の令嬢にも手を出している。

前々からいろいろな噂を聞いていたから、アホ王子をけん制するために他の令嬢との関係を聞いたことがあった。

アホ王子は否定したが、嘘なのはバレバレ。

学院生活で令嬢との交流が盛んになってから、アホ王子はかなりの数の令嬢と関係を持っていると思う。


その事実を、あえて卒業パーティーで明るみにするのが私の作戦。

卒業パーティーにはジェリーナ様のご両親も出席しているはずだから、大切な愛娘が浮気されていたことを知れば、もしかしたら縁談に待ったをかけてくれるかも!


「このまま何もしなければ、アルノート様は結局ジェリーナ様と婚約なさると思うんです。

国王陛下を前にして、アルノート様が婚約破棄を言い出すとは思えません」


「私もそう思いますわ」


「ジェリーナ様はとても責任感がお強い方なので、アルノート様が婚約発表しようとすれば、止めずにそれを受け入れてしまうと思うんです」


「なら、あなたは何もしなければいいのでは?」


「そうなんですけど…。でも、ジェリーナ様…泣いていましたよね?

私が言える立場じゃないのは百も承知で言いますが、ジェリーナ様にとってアルノート様との婚約は地獄の結末だと思うのです」


「それはあなたの推測でしょう?」


「…そうですが…」


でも、あんなに酷い扱いを受けて、それでも結婚したいと思うもの?


「ジェリーナ様は王太子妃になるために今までたくさんの時間を費やして努力してきました。

果たして、本当にアルノート様との婚約を望んでいないのでしょうか?

あなたに公女の義務の重さがわかりますか?」


ルイザ様に言われると、非難ではなく真摯な質問に感じる。


「正直…私にはわからないと思います」


素直に答えると、ルイザ様は表情を緩めた。


「では、ジェリーナ様にはきちんと意思確認をしましょう。

そして、最後の決断はジェリーナ様にしていただきましょう」


「そんなこと…できるんですか?」


一体どうやって?


「私の兄、カルシスにも協力してもらうのです。

ジェリーナ様のエスコートはお兄様にお願いしますわ。

私が代わりにアルノート様にエスコートしてもらいます」


え?どういうこと?

私がポカンとしていると、ルイザ様はていねいに説明してくれた。


「ジェリーナ様はアルノート様と入場する気はたぶんありませんわ。

でも、アルノート様に見つかったら無理矢理連れ去られてしまうでしょう。

それを阻止するために、ジェリーナ様が貧血で遅れるため、私が代役を頼まれたことにするのです。

その間にお兄様にジェリーナ様のフォローをしてもらいますわ。

意思確認についても、お兄様にお願いすれば大丈夫です」


「カルシス様まで巻き込んでしまっていいんですか?」


「心配なさらないで。私もアルノート様の所業はあんまりだと思っておりましたの。

なんとしても、自分の行動を振り返って考えを改めて欲しいですわ」


自信満々の笑顔。

なんて頼りになるのーーーー!

私今日からルイザ様のファンになる!


「それから、リリア様の作戦は名案だと思うのですが、少し力が足りませんわ。

リリア様だけが訴えても、事を荒立てるのを恐れて皆聞かないふりをする可能性が高いです。

だから、私もアルノート様から求婚されていたことにしてしまいましょう」


「ええ!?ア…アルノート様はルイザ様にも求愛していたんですか!?」


危ない危ない…。

あまりに驚いて、アホ王子って言いそうになっちゃったよ…。


「いいえ。全く」


きっぱり否定するルイザ様。


「えっと…じゃあ…」


「もちろん嘘ですわ。でも私は普段嘘なんてつきませんから、きっと周囲は信じてしまうでしょうね」


ルイザ様はふふふ♡と可憐な笑顔で怖いことを言った。

あ…この人敵に回しちゃダメなタイプだ。

そこもまた素敵すぎる!


「公女である私がアルノート様に騙されそうになったと暴露すれば、立場の弱い令嬢たちも自分の被害を言いやすくなるに違いありません」


「おお…!!!さすがです♡ルイザ様♡」


拍手喝采を贈っちゃった。


「時間がありませんわ。早速行動を起こしましょう!

私はアルノート様の元へ行くので、お兄様への説明はリリア様に任せましたわ。

一筆書きますから、これを渡してくれればお兄様は親身に話を聞いてくださいますから」


「はい!」


何から何まで細やかな対応ができるルイザ様に心酔しちゃいそう。

私はメモを受け取り、ルイザ様から教えてもらった控室に急いだ。


――――――――――


「お許しくださいアルノート様…」


アホ王子に謝罪する私をかばうポーズで、アホ王子からの求婚(嘘)を暴露するルイザ様。

すると、ルイザ様の思惑通り、次々と被害者の令嬢たちが声を上げ始めた。


うわ…こんなにいるの…引くわー…。


号泣する令嬢、すすり泣く令嬢、あちこちから聞こえる慟哭の声。

カオスじゃん…。


「アルノート様…私だけというのも嘘だったんですね?」


思わずツッコミを入れてやる。

アホ王子は慌てまくり。

かっこわるーい。

控えめに言って最低。


そこへ入場する国王陛下と王妃陛下。

ついに来た…。

これから一世一代の大芝居をしなければいけない。

私はなお一層緊張を強めた。


国王陛下は会場の異様さにすぐに気づく。

そりゃそーだよね。

すると、アホ王子はジェリーナ様の手を取り、恐ろしいことを言い始めた。


「丁度皆の注目が集まっているところです。父上、私たちのことを報告してもよろしいでしょうか?」


ああ…やっぱりね…。


私は驚かず、むしろ想定内の事態に呆れた。

婚約解消だの私に求婚だのしてきても、結局アホ王子は国王陛下に絶対服従。

私にあんなに愚痴を吐いても、国王陛下に直談判する勇気も行動力もないのだ。

(行動されたらマジで困ったけど)


ジェリーナ様は青ざめた顔をしていた。

相当引いてる…。

そりゃ当然だよね。


きっと触られるのも嫌だろうに、国王陛下の前だから必死で耐えてる。

私は気の毒でたまらなくなった。


「アルノート様…」


アホ王子の名を呼んでやる。


「申し訳ございません!」


国王陛下の前で再び謝罪する私。

もう怖くて顔上げられないよー。

そして、ルイザ様も再び私をかばう流れでアホ王子の悪行を暴露しまくる。

嘘のエッセンスと共に。


「嘘だ!ルイザ=フェルナンド!私を侮辱するのか!」


激高するアホ王子。

しかし、カルシス様に止められてすぐに何も言えなくなった。

やっぱりアホ王子はヨワヨワだな…。

か弱い女性なら強気に出られるけど、公爵家の後継者を前にするとすぐ委縮しちゃう。

なっさけな!


すかさず糾弾を続けるルイザ様。

ここまできたら、あとはルイザ様に任せるのみ。


ルイザ様はアホ王子がジェリーナ様を冷遇したことまで暴露する。

当然しらばっくれるアホ王子。

それが通用すると本気で思ってるなら、痛い。痛すぎるよ。


「そんなことない。ジェリーナとの仲はずっと良好だ。そうだよな。ジェリーナ」


アホ王子はルイザ様の発言を全否定した。

ジェリーナ様は…?


「冷酷で傲慢で酷い女だ。軽蔑するとおっしゃったのはアルノート様ですよね?」


イエス!冷たく突き放したーーーーーー!!!

あの目は相当キレてるぞー。

言ったれ言ったれーー!!!


と思ったら、ジェリーナ様は「王命には従う」と従順な姿勢。

喜ぶ国王陛下。

ジェリーナ様はこのままアホ王子と婚約して本当にいいの?

あんなに辛そうなのに…。


「国王陛下、発言をお許しください」


そこへ、ついにジェリーナの父であるユーヴィス家当主が登場!

良かったーーー!

あなた様の登場を待っていました!!!


そして、ジェリーナ様は泣きながらアホ王子にもうすっかり不信で、生理的嫌悪を感じていることを伝えた。

泣きながら、それはそれは心底嫌そうに。


あ…アホ王子ショック受けてる。

自業自得なのに。

ばかみたい。


さらにルイザ様の父であるフェルナンド家当主まで登場。

国王陛下の側近の公爵2人に圧をかけられたら、アホ王子は何もできないよね…。

あとは国王陛下の決断次第だけど…。


ルイザ様を見ると、目だけで頷いてくれた。

きっと大丈夫!

周囲の注目が国王陛下に向いているうちに、私はそっとその場を離れた。

今のうちに逃げないと!


----------


卒業パーティーの次の日、私は即行でレイアナの領地へ帰った。

学院の寮にいたら、やじ馬たちからいろいろ聞かれるに決まってるもんね。


数日後、ルイザ様からお手紙が届いた。

アホ王子とジェリーナ様の婚約は白紙になったらしい。

アホ王子は専属の家庭教師がついて、缶詰め状態で勉強し直しているようだ。

しかも、令嬢たちとのスキャンダルに国王陛下はご立腹で女子禁制なんだって。

ザマーミロ。


ちなみに、ルイザ様とジェリーナ様は友達になり、楽しく過ごしているとのこと。

あー良かった!


私はというと…。

結婚相手を見つけずに帰ってきた私に、父は不満たらたら。

でも、母は喜んで迎え入れてくれた。


徹底的下級とは言え貴族令嬢の私。

本来なら卒業後は縁談話が持ち上がるんだろうけど、王太子とスキャンダルの噂になった私に嫁ぎ先は見つかるのかな…。

いや…変な貴族の元へ嫁ぐくらいなら、一生独身のままでいたいかも。

学院で専攻した統計学を極めて、レイアナ領土の発展に貢献でもしようかな。


なんて考えていたら、母からお茶に誘われた。

まぁ先のことはどうにかなるよね。

とりあえず、アホ王子から逃げられたんだからめでたしめでたし!



これでおしまいです。

最後まで読んでくださり、ありがとうございました。

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[一言] 一番の貢献者がなんにも幸せじゃなくて、ただ二次被害を防いだだけになってて可哀想すぎる
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