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僕は人生最大に傷ついている…。

「うわーーーーー!!!」


抱きしめたリリアが突然叫び声をあげた。

どうした!?何事だ?

そんなにジェリーナが恐いのか?


「だーかーら!人の話を聞けぃ!!!」


「え???」


今までのリリアとは思えないような発言に、僕は一瞬自分の耳がおかしくなったのではないかと思った。

あまりの出来事に硬直する。


「私、マジであなたと結婚する気ないですから!」


リリアは僕を指さしてそう言った。

なんだ?何が起こっているんだ…。


「最初から言ってるじゃないですか!

私に王妃なんか無理って、ずーっと最初から!

それなのに、アルノート様は『大丈夫』『心配いらない』しか言わないし。

具体的に何がどう大丈夫で心配ないのか、一切説明なし!

単なる気休めしか言わないって、どんだけ無策なんですか!?」


「リ、リリア…?」


「そもそも、私あなたのことひとっ欠片も好きじゃないし!

勝手に勘違いされてマジ迷惑なんですけど!」


「なんだって!?」


「ずーっと断ってきたのに、結構ストレートに断ってきたのに、全然通じないどころか曲解されて、本当に勘弁してくださいって感じですよ!

第一王位継承者で誰もが認める由緒正しい家柄の優秀な婚約者がいるのに、略奪しようとする女がいたら、そーとーヤバいでしょソイツは!」


「え?え?ええ!?」


ものすごい勢いでリリアがまくしたてる。

言葉として耳に入ってくるが、理解を脳が拒否している。

これは夢なのか?

夢であってくれ…。


しかし、リリアは言葉を止めない。

僕はリリアが今まで何を思っていたのか、一方的に聞かされることになった。

信じがたいが、全ては僕の勘違いだと言う。

本当にジェリーナからの圧力などなく、リリアは僕に好かれて非常に困っていたと言っている。

それでも反抗しなかったのは、僕が王族だからだと。

リリアは逆らったら僕に厳罰を与えられると思っていたのだ。

更には、僕がリリアを都合良く使っているだけだと、不満をリリアで発散していたと言う…。

そして、最後には「見逃して」と、僕に懇願してきた。


な、なんということだ…。

僕は大きなショックを受けた。

僕は全身全霊を込めてリリアを大切にしてきたのに、何も伝わっていなかったのか…。

誰も僕を理解してくれないのか…。

僕は結局孤独だ…。

あまりにも辛すぎて、涙が溢れた。


ジェリーナが僕に何か言っているようだが、もうどうでもいい。

放心していると、リリアとジェリーナが言い合いを始めた。

もう勝手にしてくれ…。


そう思っていたが、リリアに好きな男がいると言う。

これは聞き捨てならない。

リリアは言いよどんだが、最終的には白状した。

相手は…ブライだった…。


「な、なんということだ…」


あまりの衝撃に、僕は膝をついた。

今日は厄日だ。

人生でこんなにも傷ついた日があっただろうか…。


そんな僕にリリアが歩み寄ってきた。

もしかしたら、僕に優しくしてくれるのか…?

しかし、僕の期待はまたしても裏切られる。


「アルノート様が私に抱いている天使のような女の子は、演技でしかありません。

私に国を背負う能力も根性もないばかりか、アルノート様を優しく癒し続ける愛情もないんです。

私にあるのは、ただただこの事態を回避したいという打算です。

私の願いは、アルノート様とジェリーナ様の婚約継続のみなんです」


リリアは言葉の刃で僕にとどめを刺した。

辛い…辛すぎる…。

もうわかったから、これ以上僕を苦しめないでくれリリア…。


立ち上がる気力を失っていると、またしてもジェリーナがリリアに噛みついた。

2人は言い合っている。

女のメンタルは強いな…。


しばらく続いた言い合いが終わると、部屋は静寂に包まれた。

僕はどうすればいいんだ…。

誰か、助けてくれ…。


居たたまれないほどの静寂を破ったのはリリアだった。


「尼になるしかない」


な、なにを言っているんだ?


「もう!尼になるしかないです!こんなんじゃ家に迷惑かけるだけだし、もう帰れないから、尼になりますぅぅぅぅ!!!!さよなら!」


スタタタタタ!

ガチャ!バタン!


…………………え?


誰が止める隙もなく、リリアは部屋を出て行ってしまった…。

僕は呆然とした。

結局、リリアに見放されてしまった…。


「私も行きますわね…。

婚約破棄の話は、すべてアル…ノート様が方々に説明なさってください」


ジェリーナ、君も僕を見捨てるのか…。

僕はこの先どうすればいいんだ…。


「さよなら…」


そして、部屋には僕とブライが残された。

史上最強に気まずい空気が部屋の中を漂っている。


ブライ…リリアが好きな男…。


ブライを見ると、バチッと目が合った。


「も、申し訳ございません…!!!」


ブライが顔を床にこすりつけるように土下座をする。

何のための謝罪だ?

リリアとジェリーナのやり取りを誤解して僕に伝えたことに対しての謝罪か?

それとも、僕が好きなリリアに惚れられてしまったことへの謝罪か?

僕は益々惨めになった。


「はぁぁ…」


大きな大きなため息が出た。

こんな気分で、これから卒業パーティーに出なければならないのか。

本来なら、ジェリーナに婚約破棄を告げて、リリアをエスコートしながら夢のように幸せな気分で出席するはずだった卒業パーティーに。


リリアとジェリーナはどうするのだろうか…。


リリアは…卒業パーティーは欠席するかもしれない。

相当取り乱していたし、僕を恐れて逃げ出したようなものだ。

僕がリリアに危害を加えるはずがないのに。


ジェリーナは…彼女は真面目だから、卒業パーティーに出席するだろう。

国王と国賓を無下にするような行いをするはずがない。


では、僕はどうするべきだ?


ブライはずっと土下座をしたままだ。

君はいいよな。

そうして、僕の指示を待っていればいいのだから。

リリアがブライを絶賛していたが、この姿を見たらどう思うだろうな…。


僕は涙をぬぐい、先のことを考え始めた。

とにかく、今日の卒業パーティーを無難に終わらせなければいけない。

リリアとの計画は絶たれたのだから、最善の策を立て直さなければならない。


一番手っ取り早いのは、ジェリーナとの婚約続行だろう。

幸い、婚約破棄の話は僕、リリア、ジェリーナ、ブライの4人しか知らない。

リリアの機転で、僕がジェリーナと婚約破棄したがった事実はまだ外に漏れていない。

今ならなかったことにできるだろう。


しかし…非常に気が重い。

ジェリーナの厳しさと冷たさは、今日のことで良く分かった。

この先の人生、ジェリーナと共にしなければならないのかと思うと、僕の人生が暗黒のように思える。

僕は癒しが欲しいんだ…。


それでも、やはりジェリーナとの婚約を続行すべきだろう。

彼女は非常に怒っていたが、真面目な性格をしているから「国のため」と訴えれば、渋々応じてくれる可能性は高い。

ジェリーナも今までの努力を無駄にはしたくないだろう。


とりあえず、まずは今日だけ乗り切れば良いのだ。

僕は早々に結論を出した。

卒業パーティーまで時間がない。


「ブライ」


呼びかけると、彼はビクッと体を震わせてから顔を上げた。

改めて顔を見ると、無性にムカついてくる。

リリアの好意がこいつに向いているなんて…。


「ジェリーナを探してこい。

予定通り彼女をエスコートして卒業パーティーに出席する」


「かしこまりました。すぐに探してまいります」


ムカつくヤツではあるが、部下としては有能だ。

僕の言葉で全てを察したブライは、即座に部屋を出てジェリーナを探しに行った。

これで第三章は終わりです。

次は最終章になります。

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