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神《ぼく》の愚痴を聞いてくれ  作者: 時計塔の爺
3/3

生物の誕生をつかさどる神と延命治療

この男は誰だ?

そう神に尋ねると、向こうから名乗ってきた。


 「俺は生物の誕生をつかさどる神だ。そこの女神が(いれもの)を作り、そっちの神が寿命を入れる。そしてそいつから贈られてきたものを俺が世界に送り出す。つまり現世に誕生させるってことだ。」


 と誕生の神は説明しながらソファーに座る。

 それを見て寿命の神が紅茶を渡す。

 誕生の神は悪いなと言って笑いながら受け取る。

 誕生の神は白い服に黒縁眼鏡をかけ、黒髪を後ろに固めている。

 

 誕生の神は紅茶を一口含むとソファーにもたれかかる。


 「あぁーーー、やっぱお前の入れる紅茶はうまいな。」


 「それはよかった。あなたがここに来るのは珍しいからね。それでなんのようだい?」


 「いや、珍しく客人が来ているんでな、様子をうかがってたら面白い話をしてたんでね。お邪魔させてもらおうかと。」


 「あんた盗み聞きしてたの。最低ね。」


 「君もね。ブーメランだよ。」


 「私はいいのよ!?あんたたちが私の悪口を言うからいけないのよ。」


 神たちが俺の前でけんかを再開する。

 俺はしばらく紅茶とお菓子を頂きながら観戦していた。


◆◇◆◇


 あれからしばらく口論していたが疲れたのか両者休憩に入った。

 紅茶を飲みながら一息ついた女神は誕生の神に尋ねる。


 「ねぇ、さっきの話って本当なの?」


 「どの話だ。」


 「一番初め、あんたが入ってきたときのよ。」


 「あぁ人間の寿命が足りないって話か。その通り本当だ。」


 「なんでよ!?はじめは短くて30、長くても70で死を迎えるようにしてたじゃない。それに私が作る(いれもの)には100年もの寿命が入るなんてことは無いようになってるわよ。」


 「そこなんだよ。僕も君から回ってくる体に100年も寿命を入れてないんだ。多くても最大70年分が限界さ。」


 「あぁ、だが最近人間の寿命は延びつつある。客人ならわかるのではないか?」


 いきなり話を振られたが、俺はここ最近よく言われる100年時代の話をした。

 女神は信じられないとゆう顔で驚き、寿命の神はため息をつく。

だが今では100年生きることはさほど珍しいことではない。

しかし寿命の神が言うには人間は最大70しか生きられないと言う。これはどうゆうことなのかと誕生の神に聞いた。


「あぁ?なんで人間が100まで生きてるのがそんなに不思議かって?

んー、なんと説明したらいいかね~。

人間の寿命の仕組みについては知っているか?

…あぁ知ってるのか。なら話は楽だな。」


誕生の神は持っていた紅茶をテーブルに置き、どこかで見た水の入った瓶と人の形をした容器を取り出した。その容器に入るだけの水を瓶から注ぎ込んだ。


 「ついでに肉体を管理する女神(おまえ)も聞いとけ。今の現状をな。」


 「はぃ~⁉何その上から目線。」


 女神は男神を睨むが睨まれた相手は何のそのと説明を始めた。


「いいか、この入れ物に今70年分の寿命を入れたとしよう。普通ならどんなに頑張っていても70年でこの入れ物はここに帰ってくる。つまり死だな。」


 誕生の神が容器に手をかざす。すると容器内の水が黒く濁りはじめた。

 容器内の水が完全に濁り切るとまた説明をはじめる。


 「この濁り切った水は本来寿命の神に送られ、ほかの寿命と混ぜ合わせ、浄化し、再分配する。これは前にも聞いたんだよな。本来この流れでいけばこの瓶の中の水は増減はすれどある一定の量より減ることはない。

 しかし現代医療の発達による無理やりな延命が一般化し濁り切っている水、つまりもう動かない寿命(じかん)を無理やり動かすもんだから出ていく寿命に対して帰ってくる寿命にずれが生じる。はじめは些細なずれだが何十年、何百年と時間が流れ、気づいたときには生態系のバランスが傾き、多くの種を絶滅させる。」


 こんどはまたもどこからか小瓶を取り出し蓋をあける。

 小瓶の中には体に悪そうな色をしたドロドロな液体が入っており、それはふたを開けた瞬間強烈な薬品臭を部屋中に放った。


 「ちょっとちょっと・・・あんまり僕の部屋に変な臭いで充満させないでよ。しみついたら大変なんだからね。」


 寿命の神は困った表情で苦情を言う。

 その様子を女神は少し満足げな表情で紅茶を飲みながら傍観する。


 「おっと、すまんすまん。換気換気。」


 誕生の神が右手を無雑作に振ると、いちじんの風が部屋の空気を押し出すように開け放たれたドアに向かって吹いた。その風は部屋の空気を一掃し、薬品の匂いは消えた。


 換気が済むと、誕生の神は小瓶を傾けドロドロした薬品を水の中に垂らしこむ。

 すると黒く濁り切っていた水が透明感を取り戻した。

しかし、先ほど寿命の神かやったような無色透明とは違い、水の色自体は黒のまま。さらに容器の底や側面には所々黒いヘドロのような物体がへばりついている。



「体に手術や薬品投与やらを行うことで少しは水を薄めることが出来るつまり延命処置だな。その結果人類は100年の寿命を見事手に入れたわけだ。…しかしこの容器を見てわかるようにそれはごまかしに過ぎない。このヘドロみてーに体には不純物が必ず残る。これにより体のいたるところで不具合がおこる。世代を超えて副作用が見つかる場合も少なくない。」


 「あー。だからここ数十年いくつかの容器に気持ち悪い()()()()()()がついてたのか。あれほんと邪魔なんだよね。浄化するのにいちいち取り除かないといけないし。」 


 寿命の神は納得した様子で紅茶をすする。それを見て女神は


 「ねぇ。やっぱり私に非はないじゃない。私に何か言うことはないのかしら~?」


 「…疑いをかけ、陰口を言って申し訳ありませんでした。」


 「そう。わかればよろしい」


寿命の神は女神に謝罪をする。それを見て女神は満足そうにうなずきテーブルに置かれたクッキーに手を伸ばす。言い争いはするが基本は仲が悪いわけではないようだ。 

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