肉体をつかさどる女神と百年時代
いきなり入ってきた女は、俺たちの方へつかつかと歩いていくると、神に向かい、
「...さっきから聞いてたら私が悪いみたいな物言いね。」
「おやおや、君がわざわざ顔を出すとは珍しい。けれど盗み聞きは感心しないなぁ。」
「ッッ!!」
女の言い方からすると、彼女はさっき神のいっていた人間しか作らない神だろう。
女神は艶のある淡い桃色の神を腰まで伸ばし、白いドレスを身にまとった色白の美女だった。
どうやらさっきの愚痴は彼女に聞かれていたようだ。
「客人がいるんだ、少しは抑えてくれないかな?」
「...あら、ここに私たち以外に誰かが来るなんて珍しいわね。
私は生物の容器、つまり体を管理する神よ。」
女神はそう俺に挨拶をし、ソファーに腰を落とした。
それを見計らって、神は女神に紅茶を差し出す。
「...で?さっきの話だけど何かな?」
神は女神と向かい合う形で座り、女神に訪ねる。
女神はカップを持ちながら、不機嫌そうに
「そのままの意味よ。時間の消費が激しいのは私が人間を増やしてるからとかいってだじゃない。」
「だってそうだろう?そのせいで時間が足りなくなってきてるんだよ。蜜蜂とかそういう生物の数を減らしてもまだ足りないんだよ?」
どうやら近頃蜜蜂が消えつつあるのは、このせいのようだ。
「そんなのあなたがちゃんと死んだ生物の時間を浄化してれば賄えるはずでしょ?
自然破壊の影響で多くの生命の時間がここに帰ってきているはずよ。
私はちゃんと考えて生物の入れ物を作ってるのよ!!」
「そんなの一時しのぎにしかならなかったよ。大量の生命が一気になくなり、多くの時間がここに返されたよ。けどね、人間がなかなか死なないんだよ。他の生物もそうだ。誕生したばかりの生物がすぐに死ぬわけないだろう?」
そんなに時間が、足りなくなっているのか。
気になった俺はそう神の会話に入り込む。
「生物に分け与える時間が本当に足りないのかだって?残念ながら本当さ。ここに帰ってくる寿命は減少傾向にある。」
「そもそもそれがおかしいのよ。何でそんなことになってるのよ。人間をシステムに導入する際に寿命は70年と決めたわよね?それに病気や怪我、ストレスや事故などによって寿命は減っていくからだいたいが70手前で死をむかえるはずでしょ?」
人間の寿命は70と決めた?
俺はぼう保険会社のCMを思い出した。
たしかあれには人生100年時代とかいっていたようだか?
だが、俺の疑問に答えた声は、またもやあの扉のほうからやって来た。
「そう、人間は今や70とゆう寿命をとうにこえている。だからこいつの元に寿命を返すにも数年単位の遅れが生じ、結果的にその遅れが今の事態を引き起こす原因にもなってるってゆーわけさ。」
扉の方には、黒淵の眼鏡をかけたつり目の男が立っていた。