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神《ぼく》の愚痴を聞いてくれ  作者: 時計塔の爺
1/3

寿命を管理している神

気がつくと目の前に扉があった。

いや、正しくは扉しかない空間に俺はいた。

周りは果てもなく続く闇。

考えても仕方ないと悟り恐る恐る扉を開けて中に入る。

中は立派な執務室。

呆気にとられていると奥から声がした。


「おや?お客さんかい?珍しいね。」


見ると白い服をきた若い男が机の上でなにやら作業をしている。

ここはどこなのか訪ねてみると、そこのソファーに掛けて待ってろと言われた。

言われたとおり座っていると、男は作業に区切りがついたのか椅子から立ち上がり、どこからかお茶とクッキーをテーブルに出した。


「いやーすまない。滅多に客人何て来ないものだからお茶も出さずに待たせてしまった。

まぁせっかくきたんだ、ゆっくりしていくといい。」


男はソファーに座り俺とともにお茶をのみ始める。

何か聞きたいことはあるかと言われからさっきと同じことを聞いた。


「ここはどこかだって?ここは生きとし生きるものの寿命をつかさどる場所、そして私は君たちで言うところの神様に当たるのかな?」


神はクッキーを食べながら色々と教えてくれた。


この場所は新しく生まれる生命に寿命を与える場所だそうだ。それは人間に限ることはなく、人一人一人から虫一匹一匹順番にそれぞれにみあった寿命(じかん)を与えてる場所であり、神はその寿命を与え、管理しているという。


「そもそも、寿命とゆうのは時間を切り取って(いれもの)にいれたものを指す。私は他の所で作られた体に時間を入れて現世に送る、また死んだ者の時間を回収して浄化し、また新しい体に入れるのが仕事なのだよ。」


いまいちよく分からない俺を見た神は、テーブルに大きな水の入った瓶と、人やロバの形をした硝子容器をおいた。


「いいかい。この瓶に入った水を時間と思ってくれ。たとえば私はロバに寿命を与えるとしよう。」


神はロバの容器に瓶の水を入れた。


「このように瓶の中の水をロバの容器にいれる。もちろん寿命には個体差があるのでこの水がたくさんはいる容器もあれば、あまり入らない容器もある。もちろん人間も一緒だ。」


そう言って人間の形をした容器にも水を入れた。

人間の容器はロバの容器に比べて多くの水が入った。

そしてその分瓶の中の水は減っていた。


「次に生物はある一定の時間が経過すると死期が訪れる。これはイメージとして、容器の水を少しずつ濁らせていく感じかな。もちろん中の水が多い個体ほど、水が全て濁りきるのは遅くなる。」


そういうとロバと人間の容器に黒いインクを数敵垂らした。

中の水が人間よりも少ないロバは、人間よりも水の濁りが早かった。


「この水が完全に黒くなったら生物は死を向かえる。これが寿命が尽きるということ。そしてこの濁った時間は僕のところに返される。」


神は新しく空の瓶を取り出し、ロバの中の濁った水を空の瓶に注いだ。


「そして返された寿命は僕が浄化して時間の中に返す。そして新しい容器にまた寿命として与える。」


黒い水が入った瓶にてをかざすと、瓶の中身はまた綺麗な水に戻り、元の瓶にそれを戻した。そして今度はまた別のロバの容器を取り出し水を加えた。


「これが僕の仕事の流れ。イメージついたかな?」


なんとなく。


「それはよかった。にしてもこうして客人と会話をするのはいつぶりだろうか。普通なら絶対にここへはこれないからね。よかったらもう少し僕の話を聞いてはくれないかい?」


まぁ別に無理して帰る理由もない。

しばらくはここにいてもいいかな。


「そうかい!?。すまないね。と言っても愚痴になってしまうけれど、お茶やお菓子でもつまみながら適当にきいていてほしい。」


◇◆◇◆


「いやね、愚痴というのは私以外の神のことなんだよ。さっき私が時間をいれていた入れ物は、他の神が作っているんだけれど、最近人間のいれものの量が増えているんだよ。もともと人間は他よりも多くの寿命を持つ。言い換えるとこの瓶の中の時間を多く使うんだ。」


そういって、神は机のほうからいくつかの人間の赤ん坊の形をした入れ物と、水ではない『何か』の入った瓶を取り出し、入れ物一つ一つに何かをいれていく。

すると瓶の中の『何か』は、入れ物に入れられた分減っていく。


「このように生き物に寿命を与えれば与えるほど、時間は減り、しまいには底が尽き、生き物が誕生しなくなってしまう。」


神はすべての入れ物に『何か』をいれ終ると、それを机に丁寧に並べた。

すると、それは光となってどこかえ消え、それを見届けた神は、また俺の方へ来て、ソファーへ腰を落とした。


「ただでさえ時間を使うのに、あいつは人間の数を増やしている。だから時間の消費スピードは拍車がかかる。かといって寿命を減らすわけにもいかないから頭を抱えているんだよね。」


そういって神は自分の紅茶に口をつける。

だが、口に含まれた紅茶は神の喉を通ることはなかった。


バンッッ!!


扉が勢いよく開かれ、一人の女が怒りあらわに入ってきた。

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