君の瞳が好きでした
僕は君の瞳が好きでした。どう好きかなどということはわかりませんが、あなたの瞳に僕は運命を感じました。君の瞳を見た瞬間、僕は恋と言うものを知ってしまったのです。
あれは三年前のことでしたね。入学式で僕はあなたにぶつかりそうになりました。その時、あなたは上目遣いに僕を見つめてきて、謝ってくれましたね。その時のあなたの瞳はとてもきれいでした。あなたはきょどっていましたが、あなたのその瞳だけはまっすぐ僕のほうを見つめていました。
恋でした。間違いありません。僕はあなたに恋心を抱きました。それから僕は気づけば、あなたのことを目で追っていました。それにあなたも気づいていたのでしょうか。今となってはもうそれはわかりませんが、僕が意を決して、あなたを食事に誘った時、あなたが二つ返事で答えてくれたのは僕の人生でもっともうれしい瞬間でした。
三回目のデートの時、あなたから僕に告白してくれましたね。それには驚きましたが、僕の返事は決まっていました。その時のあなたの上目遣いといったら、あなたのきれいな瞳といったら、それを見ているだけで僕は天にも昇りそうな気分でした。
喧嘩なんてそんなに起こりませんでしたね。いつしかあなたの怒った瞳はいつもの輝きを少し失っていましたから、僕はそうはさせたくなかったのです。だから最大限気を使っていましたが、やはり完璧は無理でした。時々、怒らせたときは僕も反省していましたよ。
二年が経つとあなたは僕のことを信用しきっていましたね。だから僕は四月一日、あなたに僕の願望を正直に言ったのですが、あなたはエイプリルフールだからね、と言って本気にしませんでしたよ。僕はそんなことをしない人間だと思っていたのでしょうか。僕としてはただただ不憫でしたが、そうなると僕の望みをかなえる方法は一つしかなくて、僕もそれは嫌でしたけどしょうがないことでした。ごめんなさい。
僕はそれを君と出会ってから三年後の同じ日に実行しました。とてもやりやすかったですよ。それを手に取った時の僕の喜びと言ったら言葉にしようがありません。三年間、君と出会ってからずっと欲しかったものですから。
でも、それももう色あせてきました。やはりちゃんと保管していても劣化はしていくんですね。じゃあ次は新しいのを手に入れないといけません。
だから、僕もそろそろこのビンの中の君の瞳をどこに捨てようか、考えておかないといけませんよね。