02 『東』と『西』
あーあ……安めの宿見つけないとな……
冒険者組合を出た私は宿エリアまで商店街を歩いている。
馬車移動メインの旅路で、私は疲れていた。お金なら少し貯えがある。どうせなら高級宿屋にあるフカフカの広いベッドで眠りたいところだけど、先の戦いの傷が癒えるまで、仲間が見つかるまでは無駄使いをするワケにいかない。
私の目的達成のために〝十剣〟にはぜひ会ってみたい。そして本当に『強者』ならパーティに加えたい。そのために〝十剣〟の次なる行動パターンについて考えることにした。
前提として、冒険者たる者クラスアップを意識しない人は居ないはず。
冒険者クラスを上げる方法は大きく3つある。
1つは、ギルドから依頼を受け、達成を繰り返し冒険者経験値を積むこと。
元々この依頼は民間人から出されているもので、ギルドを経由して冒険者が受託する仕組みとなっている。その依頼内容は、よくあるアイテム収集からモンスター討伐まで多種多様だ。難易度が低いもの、所謂新米冒険者向けの依頼がたくさんある。
もう1つは任務。
これは国やギルドから直接冒険者に託される依頼や課題のことを指す。
依頼と比べて、手強いモンスター討伐が主になるため難易度が高いものばかり。その分もらえる経験値や報奨金も高い。命の危険が伴う背景から、新米はまず受注しない。というより危険を省みて、ギルド側も新米に対して任務提示をしないだろう。
最後の1つが、魔王軍の尖兵である魔石獣の討伐である。
魔石獣は【魔石】と呼ばれる特別な石に、魔族特有の魔法で疑似的な命を与えられた存在。
人型や獣型など多くの種類がいて、その強さもレベルによって分けられている。ほとんどが群れをなして行動しているが、高レベルになるに連れて単独行動をする傾向が強い。
その行動目的は単純明快、私達『人間種の殲滅』である。
一度でも彼らの視界に入った人間は、死ぬまで付きまとわれる。食べることも寝ることも必要としない生命なき獣の追及……まさしく恐怖そのものだ。
無感情に、無慈悲に、無計画にただ人間を殺す。それだけが魔族によって造られた彼らの存在理由なのだから。
そんな魔石獣は神出鬼没であり、且つその特性から依頼や任務になることは少ない。見つけ次第討伐が終わっているか、逆に見つけた者が屍と化しているからだ。
つまり魔石獣討伐に失敗すれば即、死に繋がるのだ。殺るか殺られるか、というシンプルな二択。彼らを相手に逃げ切る、ということはできない。
魔石獣の討伐証明を持ち帰り、ギルドに差し出すことで冒険者経験値と報奨金を受け取ることができる。その量は、絶対任務『魔王討伐』が手伝って、一般のモンスター討伐報酬と比にならないくらい多い。
手っ取り早くクラスアップとお金稼ぎを狙うならば、四六時中魔石獣を探し回って討伐するという方法が最適解となる。
しかし、こんなリスキーな『狩り』を一体どこの新米が狙うんだろうか。居たとしたら、ソイツはよっぽどのバカ新米と言えるだろう。
〝十剣〟はホヤホヤの新米冒険者。きっと近い内に、安全を考慮した『依頼』を受けに来るはず。その時が好機!
そんなことを考えながら私は適当な安宿に入り、銀貨4枚を宿主人に渡して2階にある空き部屋に入る。こじんまりとした部屋の中には大きめのベッド、小さなテーブルとイス一脚。
それ以外は何もない典型的な安部屋だった。
私は部屋へ入るなり、ベッドへ仰向けに飛び込む。揺れるベッドの弾力に合わせ、腹部の傷が少し傷んだ。
思い出すのはカセトさんのあの言葉……。
『どうやらマフォ殿のパーティが全滅という噂は本当だったようですな?』
……今から20日ほど前、組んで2ヶ月ほどになるパーティで、ある任務を受託した。
任務内容は推定レベル3の魔石獣討伐。
分かっているだけでも12人を殺害した要警戒中の魔石獣だった。珍しく単独行動をしている、珍しく任務認定されている魔王軍尖兵の討伐。
過去3度、レベル3と偶然遭遇し、無事に討伐してきた私はこの任務を儲けがよい『狩り』として捉えていた。
2人のパーティメンバーは反対したが、『私の魔法ですぐ終わらせるから』と説得をし、渋々承諾してもらう。
ギルド調査員の予測出没エリアがドンピシャだったこともあり、獲物の魔石獣とはすぐに遭遇することができた。交戦開始は、任務受託をしたギルドから数キロ離れた山中での出来事だった。
現れたのは巨漢の人型魔石獣、2足歩行型。
特徴的なのは、背中から大きく伸びる腕と両の腕、併せて3本の腕を有しているところ。また、全ての腕の先端が鎌のような形状をしていた。つまりは人体でいう手の部分がない。
パワーも凄そうだし、アレに斬られたら致命傷ね。
この種は図鑑でも見た覚えがない……まだギルドでも確認されていない新種?
チラッと左右に目を配る。
中級であるメンバーの男性剣士2人は、異様な姿であるレベル3との対峙に緊張を隠せていない様子が見てとれる。
防御力重視のその装備は2人の体を大きく見せてはいるが、その表情は不安と戦っているんだろう。普段の彼らよりも、そのシルエットは小さく見える。
緊張の中、ちゃんとその剣は触れるのか? その盾は私たちを守れるのか?
いずれにしてもやることはいつもと変わらない。メンバーが魔法発動まで敵を引き付け、私の魔法で倒す。それが私達パーティの必勝パターン。
それならば先手を打つ。
私は右手に持ったマッチを、太ももに装着している金属板で擦る。続いて、油を染み込ませた手ぬぐいに引火させ足元へ放り、手際よく火魔法の準備を完了させた。
同時にその行動が2人への合図となる。
「5秒! 足止めをお願い!」
「お、おう!」
私の最大魔法発動までの5秒間を2人の仲間に託す。
火の精霊のコントロールに入ったその時、私は信じられない光景を見た。
「ぐわあぁぁ!!」
「がはっ!」
2人のメンバーがレベル3の大きな鎌腕により無残にも斬り倒されていく。秒殺だった。
嘘っ!? 防御特化の重装備剣士を一撃で……これは……やばい!
身体能力の低い私では、ヤツの攻撃を避けることも防ぐこともまず無理だろう。
緊張で精霊をコントロールする手が震える。
いけない、平常心を保たないと魔法発動までの時間がますます遅くなる!
レベル3が私を睨み付け、突進を開始した刹那――
「【第五階級火魔法:灼熱炎柱焦】!!」
間に合った!
指から出る5本の激しい火柱が敵を包み込む。
私が現状使える唯一の第五階級魔法。そして過去3度レベル3を葬った私の最大魔法だった。
「これでおしまいよ!」
魔法の発動が間に合い、安堵した私はすぐさま次の行動に移る。メンバーの安否確認だ。
お願い……どうか無事でいて……
燃え上がる火柱を追い越して2人のメンバーの元へ駆け付けた。
「うう……」
「よかった……生きてる!」
メンバーは共に生きていた。しかしその状態を冷静に確認すると、胸部、腹部への大きな斬り傷に加え、1人は片腕が切断、もう1人に至っては両足がない。
身体が頑丈で治癒能力の高いヒューマンとはいえ、予断を許さない状況だった。
「そんな……なんてひどいケガ……! 2人ともしっかりして! 必ず助けるわ! 今からすぐに町へ連れていくから!」
パーティメンバーが死の床にひれ伏そうとしている。そんな光景に初めて直面し、私は身体が震えてきた。頭の中で整理がつかない。一種のパニック状態だ。
だけど……絶対に死なせない!
私はマントの一部を破き、止血に努める。大柄な男性剣士を2人、どうやって町まで運ぼうか……そんなことを考えていた矢先――
ブオッ!
火柱が作っていた灯りが突然消え、辺りが夜の闇に包まれる。
背後の火柱が周囲に吹き飛ばされたようだ。
「えっ!? 嘘……でしょ?」
振り向いた私の視界に飛び込んできたのは、およそ無傷のレベル3。
「そんな……まさか有火耐性? それでも無傷なんてありえない!」
レベル3は私から視線を逸らさない。暗闇に浮かぶその不気味な目に恐怖を感じる。
今のヤツの目標は確実に私だ。すぐにこの場から動かないとメンバーも巻き添えに遭ってしまう。
「こっちよ! 化け物!」
私は猛然と走りだす。
まずはレベル3をこっちに引き付ける。隙を見て魔法を叩き込んでやるわ!
走りながら風魔法の準備に入る。だがその瞬間、逃げ道を塞ぐように3本の鎌を持った死神が目の前に現れた。
あの距離を……速い!
「【第一階級風魔法:突風流】――」
すぐさま風魔法を発動させようとするが、今度は間に合わない。
向かって右側から繰り出される死神の鎌が、私の腹部を切り裂く。あまりに一瞬過ぎて、私には何が起こったのか理解できなかった。感じたことは、身体の中を熱い何かが走った感覚だけ。
あれ……? 今、私斬られた……の?
遅れて発動した風魔法の突風が死神を襲う。死神はその風に踏ん張りつつも、数メートルほど後退していった。
不思議と身体の自由が利かない私は、そのままうつむせの状態で地面にひれ伏す。
徐々にこみ上げてくる鋭利な痛みと熱が合わさっていく……
真っ赤に染まった腹部を確認したのち、それは激痛に変わった。
「きゃあああああ!!」
痛い!痛い!痛い!痛い!痛い!
なんで……?
どうして……?
これはレベル3なんかじゃない!
もっと高レベルの魔石獣だ……
くそ! 調査員め……もっと正確な報告をしなさいよ……
痛みに悶える中、狭くなっていく視界が捉えたのは、歩み寄ってくる魔石獣の姿。
追い打ちをかけ、私に止めをさそうと近付いてくる死神の姿。
一歩一歩、ゆっくりとその足音が近付いてくる。
恐い!恐い!恐い!恐い!恐い!
体中の血がお腹から抜けていくようだった。
寒い。震えが止まらない。私の中を恐怖が埋め尽くしていく。呼吸が乱れる。苦しい。痛い。熱い。視線が定まらない。
上級の……マーカーズの私がこんなに無力だなんて……
嫌だ!
こんなところで……こんなヤツに殺されたくない!
抗う私の胸中とは反対に、指1本動かすことができなかった。ただ、そこで震えているだけ。数秒後に確実にくる死を、ただ震えて待つだけ……
「誰か……たすけ……て……」
精一杯、本当に精一杯絞り出した声だった。
お願い! 誰でもいい! 誰か! 誰か助けて!
ドスッ!ドスドスッ!
どこからともなく飛んできた無数の氷柱が魔石獣を直撃する。
あれは……【第三階級氷魔法:氷柱突貫】?
私は氷柱の飛んできた方向に目を見張る。
そこには、今まさに次の魔法を発動させようとしている女性魔法使いの姿があった。
夜の闇に紛れた紺色のドレスに、透き通るような青い髪の魔法使い。氷の精霊の動きに合わせ、その長い髪も踊るように揺れている。
「潰れなさい!
【第五階級氷魔法:凍塊圧砕落】!」
上空に家ほどの大きな氷塊が現れ、魔石獣に向かって落下する。
「グオオオォォォォォッ!!」
魔石獣は雄叫びを上げ、3本の腕を用いて氷塊を受け止めた。
そんな……氷の上位魔法でもダメなの?
しかし、私の懸念はすぐに払拭される。
「無駄ですわ」
彼女は余裕のある笑みを浮かべながらそう呟いた。瞬間、3本の腕がみるみる凍りついていく。
氷塊を受け止めきれなくなった魔石獣は、そのまま圧し潰されていった。
ズズーン……
あまりの衝撃に一帯の大地が揺れる
「すごい……」
魔法の余波で辺り一面に冷気が漂う。
私は『助かった』という安堵感よりも、冷気舞う透白色の情景の美しさ、彼女の強さに見惚れてしまっていた。
第三階級魔法から第五階級魔法を連続発動させるその魔力。私でも困難な芸当を、この青髪の魔法使いは易々とのやってのけた。
間違いなく上級以上の魔法使い……
気付けば呼吸は落ち着いている。腹部の痛みと熱は消えないが、身体も少し動かせるようになっていた。おそらく恐怖心がなくなった影響だろう。先ほどより視界もハッキリしている。
目をこらすと、彼女の後ろにギルド関係者の姿が複数あった。正確な数は分からないが10人ほどは居るだろう。
ギルド応援部隊の1人が叫ぶ。
「急げ! 負傷者の保護が最優先だ! ……ん?」
バキバキ……と氷塊が砕かれる音。
「グ……グオオオオオオオォォォォォッ!!」
崩れた氷塊の中から1本腕になった化け物が雄叫びを上げ、立ち上がる。
信じられない! あれでもまだ倒せないなんて……
動揺しているのは応援部隊も同じだった。
――1人を除いて。
「あらあら。新種の高レベル魔石獣……これ位では倒れませんのね」
青髪の魔法使いは薄っすらと笑みを浮かべている。上位魔法でも仕留めきれなかったこの状況を楽しんでいるようだった。
「目標は両腕を消失している! 左右から回り込むぞ!!」
「攻めることは考えるな! ベリーさんの援護に徹しろ!」
ギルド応援部隊の声が飛び交い、場が一気に慌ただしくなる。彼らはどうやら魔法使いのサポート役を担うようだ。手負いとはいえ、生半可な戦力では返り討ちにあうのは目に見えている。それほど危険な相手だ。
ギルド救護員と思わしき人物が私の傍へ駆け付けてくる。
「マフォさん! しっかりしてください! 今傷の手当をします!」
「私より先に……あそこで倒れている仲間を助けてあげて!」
私も重傷に違いなかったが、それでも2人のメンバーより傷は浅いはずだ。
「大丈夫です。彼らのところにもほら」
目の前の救護員が視線で合図する。その先で、パーティメンバーにも他の救護員が駆け付けていることを確認できた。
よかった……お願い! みんなを助けて……!
「応援遅くなりすみません!」
手早く包帯、傷薬の準備をしながら救護員が謝ってくる。
「謝らないで……むしろ応援に来てくれて本当に助かったわ。それにしても……これは一体どういうことなの?」
通常、任務遂行中にギルドから応援がくること自体が珍しい。応援があったとしてもこんな多人数になることなんてよっぽどのことだ。
「はい! マフォさんが出発したすぐあとに、調査隊から気になる報告を受けまして……」
「なにそれ……?」
「報告結果から、討伐目標が新種である可能性と推定レベルの引き上げを懸念。たまたま当ギルドを訪ねていた〝東の天才〟へ応援を頼みました!」
推定レベルの引き上げ……道理で私の上位魔法で倒せなかったはず……
それよりも気になる名前が出てきた。
「〝東の天才〟……そう彼女が……私と同期のもう一人の〝天才〟なのね。……それにしてもその情報もう少し早くほしかったわ……って……え!? あれってもしかして……」
辺り一面の、氷の精霊が慌ただしく動いている。
彼女はこれだけの量の精霊をコントロールしているというの……?
なんていう魔力……
ここから繰り出される魔法は――
「氷結の中で眠りなさい……
【第六階級氷魔法:不動凍結陣】!!」
――やっぱり第六階級魔法!
パキパキパキ……
地中の水分が猛烈な勢いで凍っていく音。
魔石獣の足元から夥しい程の六角形の冷気が噴出される。
ダイヤモンドダストと形容されるその冷気は瞬く間に魔石獣を覆い……討伐対象を凍りつかせていく。
「グオオォォォォォォォォッ…………!!」
断末魔が徐々に小さくなっていく。
ほどなくして、討伐対象は完全に沈黙した。
「ふう……終わりましたわね。さすがに少し疲れましたわ」
〝東の天才〟がそっと呟く。2年目冒険者とは思えない風格がそこに備わっていた。
第六階級魔法……まさか使えるなんて……彼女の実力は既に達人級だとでもいうの……?
彼女の実力を目の当たりにして、私は言葉が出ない。
「どうやら無事だったみたいですわね」
彼女が声をかけてくる。その口調は魔法と同じだ。丁寧ではあるがどこか冷たい印象を受ける……それは私に向けられている敵意と似ていた。
「助けてくれて……どうもありがとう。本当に助かったわ」
正直複雑な気持ちだった。まさかこんなところで自身のライバルと呼べる存在に出会うとは……
そして……そのライバルが自分より遥か先を行っているとは……
「あなたのことは存じていますわよ〝西の天才〟さん」
救護員に介護されている私を見る彼女の目。私を見下している目。
「私もよ……〝東の天才〟のベリー」
「……」
「……」
しばし睨みあう。
目を逸らしたくなかった。実力では劣っていても、それをしてしまったら本当の意味で彼女に負けてしまいそうだったから……
少しの沈黙のあと、彼女が口を開く。
「……無様ですわね」
「なっ……」
「自身の実力も省みず、さらには碌に討伐対象を調べもせずに猪突猛進とは。その結果がこれですか?」
瀕死のメンバーへ、憐れむような目配せをするベリー。
「なんですって!!」
私だって必死だった! メンバーを助けようと!
……でも実力が足りなかった。
「まあ彼らも自業自得ですわね。弱いんですから、おとなしくE級モンスターでも狩っていればいいのに、フフ」
「アンタ……! パーティの侮辱は……許さないわよ!」
笑っている。コイツは今、私の大切なモノをバカにして笑っている。
身体全体から怒りが込み上げてくるのを私は感じた。ただ――
「これはこれは面白いことを言いますわね。地べたに寝そべっているあなたがどう許さないと?」
「ぐ……!」
――今の私には拳を握りしめる力も残っていなかった。
「正直こんな方に〝双璧〟と並べられていたなんて恥以外の何物でもありません。即刻わたくしの二つ名〝東の天才〟を改めたいところですわ」
「私だってあんたと〝双璧〟なんて呼ばれたくな……」
私はハッとする。彼女と並び立てる実力が私にはない。
それどころか尻拭いまでしてもらっているこの状況。〝双璧〟と呼ばせることも、それを否定することも今の私にはできない。
「……まあいいでしょう。あなた、これに懲りたら冒険者を引退しなさい」
私は何も言い返さない……
言い返せない。
「安心していいですわよ、〝魔王〟は私が倒しておいてあげますから」
『無様ですわね』
安部屋の天井を見ながら、私は歯を食いしばる。
悔しい!
あんな屈辱は初めてだった。思い出しただけでも苛々する!
悔しくて悔しくて……そして2人のメンバーに申し訳なくて……目に涙が滲んでくる。
アイツは私だけじゃなく、パーティを蔑んだ。
「ベリー……今に見ていなさいよ」
あの戦いの数日後、歩けるようになった私は新たなパーティメンバーを求めたが、誰にも受け入れられなかった。
『自分勝手な行動でパーティを全滅させた我儘魔法使い』のレッテルをベリーに貼られたからだ。
けれどきっと遅かれ早かれ、似たようなレッテルを他の誰かが貼っていただろう。
パーティメンバーの2人は一命を取り止めた。が、冒険者への再起は絶望的だった。
『もう俺に関わらないでくれ……』
メンバーの1人に言われた言葉が胸に刺さる……私は彼の言葉を、その表情を一生忘れることはない。
私の軽はずみな行動が2人の未来を閉ざしてしまった。償うことも謝ることさえも拒否をされ、私は1人途方に暮れる。
あの町に私の居場所はなくなってしまった。私が自ら失くしてしまった。
後から聞いた話では、あの魔石獣から回収した魔石を調べたところ、ギルドはレベル5と認定したらしい。
レベル5……しかも火耐性つき。火魔法を得意とする私との相性は最悪だった。なぜもっと慎重に行動しなかったのか、悔やんでも悔やみ切れなかった。
居場所を失った私は、冒険者引退も考えた。
だけど……思い出すのはベリーのあの言葉。
だから私は、ここソンジェで再起を懸ける。
自分が強くなるために……仲間を守れるように……もう2度と仲間を失わないように……。
そして強い仲間を揃えて、アイツより先に〝魔王〟を討伐するために……。