表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
8/16

住居問題

海水を取ってきたぞ!

 このバックパックはとても不思議だ。海水を約20リットル程入れていたのにも関わらず破れない。それだけでなく、重さもあまり感じない。一度通った道なので帰りは楽だった。休むことなく、仮拠点とでも言おう場所に到着した。そこに異変があった。何と大樹が植わっているのだ。郷里の地を間違えていることはない。いや間違えるはずがないのだ。塩を取りに行く前に周囲の草を最大限刈り取り、干しておいた。万が一風が吹いた時に飛ばされないように、石を置いておいた。不自然な感じで置かれているので、恐らくここであっているはずなのだが。木が数日でここまで成長するものなのだろうか。


「やっと帰ってきた。今の今まで何をしていたんですか?家も立てずに!頭おかしいんですか?!」


 いきなり知らない人から叱責された。てか、この世界に人はいないんじゃなかったけ?


「え、えーと、どなたですか?」


「あっ、すみません申し遅れました。私佐々木と申します。そんなことは置いておいて、本当に何をしていたんですか?訳の分からない木を生やしておきながら遠出をするなんて前代未聞ですよ!」


 何か言葉の差がすごい。取り敢えず怒られてしまった。一応弁解はしておく。


「周囲に木が自生していなかったので探しに行くついでに塩が欲しかったので海に行ってました」


「確かに宮坂さんの職業柄上レベル1の段階ではあまり木が生えていませんが、だとしてもですよ。暇だなー。あっそうだ塩を作ろう!なんてなりますか?なりませんよね普通は!」


 大分お怒りのようだ。どうやら自分は普通ではないらしい。独特なんだな!これ以上刺激を与えぬように話題を変える。


「ところで佐々木さんが来たということは、とうとう解除されるんですね?」


「ええ」


 実はこの世界に送られたその日、事件は起きた。いきなり未知の世界に送られ途方に暮れ、現実逃避していた俺に神(佐々木さん)が、声を掛けてくれた。その後何やかんやあって、俺はこの世界の真実を知ってしまう。実はこの世界『仮想世界(バーチャル・ワールド)』、つまり人工的に作られた偽の世界なのだ。どういう訳か、現実世界の自分のアバターがこちらの仮想世界で作られ、意識・感覚が現実世界の肉片と分離し、こちらに送られてきたそうだ。正直訳分からないのだがそういうことらしい。何より佐々木さんの会社は国家機密の技術を駆使しこの世界を開発したそうで、外部にこの情報が漏れてはいけないらしい。その情報をうっかり俺に漏らしてしまった佐々木さんは処罰を下され今ここにいるらしい。因みに解除されると言ったのは、他国との外交だ。今後これが重要になってくるのは薄々気がついていた。


「この度は開拓者様に多大なる迷惑をおかけし誠に申し訳ございませんでした。大体察しているとは思いますが、私は内部制御するためにこの世界に来ました。もし宮坂が外部とやり取りをなさる際には面倒くさいとは思いますが私を通して行いますので宜しくお願い致します。以後私は現実世界と仮想世界を往来すると思います。もし私が現実世界に居る場合には今まで通り天に向かって一声お願いします。基本的には仮想世界には居ますが」


 何はともあれこれで自分の世界にない物も手に入る。よりこちらの世界での生活が豊かになりそうだ。なんて、家さえ建てていない僕がボヤいても説得力の欠片も無い。


「さて、宮坂さんに質問です。貴方が今するべき事は何だと思いますか?」


「今すべき事…。あっ、取ってきた海水を干すことかな。天日干しとなると相当の時間が掛かるし」


「それ本気で言ってますか?本気なら怒りますよ」


「す、すみません。しかし本気で分からないです」


「そうですか。では貴方は金輪際家屋の建設及び使用を禁止します。……。ていうのは冗談ですが、衣食住のうちの住無しでいいと思いますか?先ずは塩云々より人二人住める場所を確保すべきです。寧ろ今までで放浪していた貴方に心底腹が立ちます」


 すっかり忘れていた。いや、この言い方には語弊がある。忘れさせられたのだ。何者かによって。まぁ、つまらない戯言(ざれごと)はここまでにして真剣に考えねば。先ずは材木を考えなければならないな。これに関しては本気で悩む。適当なものを選んだ結果、余りのやわさに崩壊などと言ったら馬鹿馬鹿しい。かと言って、この世界に植生している木種を知っているはずもないので取り敢えず塩を取りに行く道中で見つけた木を採ってくる事とする。


「宮坂さんもしかして、木種わからない感じですか?安心してください!この私佐々木はなんでも知っております!」


 何故か不安しかない。溢れ出すドジオーラをひしひしと感じる。しかし、このまま無視をするのも良心が痛むので、一応意見を聞いておく。


「今、私たちの目の前に生えている木を使いましょう。正直、私はこの植物を知りませんが恐らく頑丈でしょう。それに高さ・太さがあるので、家2軒は建つでしょう」


 予想通り突拍子も無いことを言ってきた。確かに目の前の植物は使えそうだが、何かもわからぬものを使うのには抵抗がある。これでもし、軟弱な材質であった場合、突然倒壊し下敷きになりかねない。この世界で死ぬかは分からないが、この死に方だけは避けたい。


「この木を使用するのはよしましょう。生態が明らかになってからにしましょう。今から木を採取してくるので暫くお待ちください」


 ・・・・・・。佐々木さんはこちらの意見などお構いなく、颯爽と気をこっていた。メキメキと言う音を立てながらゆっくりと倒れていく。やがてドスンという騒音とともに砂埃を上げ、完全に倒れた。なぜか彼女はドヤ顔をしていた。今更何を言っても後の祭りだ。


 結局あの木で家を建てることにした。俺と佐々木さんの間で作業効率の差が相当あった。それに加え完成度も圧倒的に佐々木さんの方が高い。失笑されてしまった。ともあれ、互いの不得意を補いつつやったので5~6時間(体感で)ほどで完成した。当然陽は落ちていて薄暗くなっていた。昨日捌いておいた肉を焼き、二人で食べた。久しぶりに他人との食事でより一層美味しく感じた。明日からは佐々木さんと開拓をすることになるようだ。

今回もお読み頂きありがとうございます!


仮想世界に来てそこそこ時間が経っているのにも関わらず、家を建てていないとは・・・。佐々木さんが驚くのも無理ありません。


次回も1週間後に出せると思うのであ楽しみに!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ