"ムラ"誕生!?
敵が等速直線運動してきた。
翌日、帰国組が出発した。残った七人と俺と佐々木さんとで身辺整理をする。
まずは、適当に植えていた植物についてきゃキャロレッドに聞いてみたが専門家ではないのでよくわからないと言われた。彼らがいるクニでは植物学は未発達で、一般人はほとんど知らない。というか知る機会すらないらしい。
そういうわけでこれが何かは分からないが取り敢えず植えたままにしておく。
次にこちらにキャロレッドたちの仮拠点を作ることにした。束縛するのは性に合わないので、彼らの意思を聞いてみたところこちらに残って我々の発展の手伝いをしてくれるということだった。
そういうことで、近くの林に行き何本か伐採する。
あとは彼らに任せる。俺がやるとまた欠陥住宅になってしまうからな。
その間に俺と佐々木さんは、マーズさんやシドさんらの女性陣に麻服の作り方を教わった。
ついでに麻の種を彼女から貰い、畑を作っておいた。小規模で簡易的な畑だが今の俺らにとってはこれくらいで十分だ。
今回はマーズさんたちが持ってきた素材を使わせてもらうが、麻は刈り取ったものを水に浸け、発酵させることで柔らかくなり加工しやすくなるそうだ。
あとは発酵させたそれを選別し、紡錘車と呼ばれるもので糸状にする。この紡錘車は円形の石の中央に穴を開けそこに木の棒を通すという簡易的な作りだった。
とはいえ、ここには電気という偉大なものはまだない。
つまり、電動ドリルなどという文明の利器の恩恵を享受出来ないので、石に穴を開けるためには、石錐という先の尖った石を用いてひたすら削る必要があった。
創作台のお陰でこの作業は随分と楽にできるのだが、それでもかなり時間がかかってしまった。
というのも刺す棒の大きさに合わせなければ行けないからだ。
そして紡錘車で、作った糸で編めば布の完成だ。麻布一枚織るのに時間はかかるが、幸いこの仮拠点は川のそばなので麻がこの地で成長できるのなら麻布はここの特産品になりそうだ。
翌々日、ある程度の武器をそろえるためにジェニオ達のもとに報告がてら訪れた。彼らの住処は以前よりもいっそう質素になっていた。どうやらこの時期は彼らにっとて不活発期らしく、一日洞穴に籠り過ごすことが多いようだ。
食料も事前に貯蓄していたものを切り崩し生活しているらしい。
ただ今年は思いもよらない出来事によって配分をコントロールできなくなり飢餓に瀕しているらしい。どうやら原因は俺(塩)らしい。すみませんでした。
それにしても今が季節的にいつなのかは分からないが、冬ではない(と思われる)この時期に不活発時期ってもしかして五月病とかいうやつでは…。
因みに今は月弦422らしい。いわゆる太陰暦というやつだろうか。
いずれこちらの世界でも、太陰暦のズレ云々で議論を重ねた後、太陽暦に落ち着く、といったことになるのだろうか。
さてこのジェニオたちは実は我々の拠点に移住することになっているのだが、キャロレッドらとジェニオたちとで、この拠点もだいぶ賑やかになってきたので、ここを新たなムラとして名前を付ける事となった。
世界最古の国際都市として栄えた”ウル”にしようと思ったが、よくわからないということでジェニオ達の提案で彼らの言語で繁栄を表す”カストラ”になった。全会一致でこれに決定した。
そして、キャロレッド達には申し訳ないが家を増築してもらった。
人の出入りが慌ただしくなってから1ヶ月ほどたって、カストラも家並みや道等が整備されある程度のムラとしての景観になってきたころ帰国組がこちらに戻ってきた。
彼らの国―カルザスではここ数ヶ月敵襲に見舞われており国家存続の危機に瀕しているという。
そこでカルザス第五護衛隊残存騎士他に周辺に逃亡できそうな場所をさがしに行かせていたという。
そして今に至る。カルザス国王曰く増援を送ってくれれば決戦後我々を支援してくれるとのことだった。
しかし、残念な事にうちには派遣できる人員がいない。
できたとして終結後のカルザス国残党の保護くらいだ。王国として成立していたところからの支援というのは後ろ髪をひかれるくらい惜しいが、まだ小さく日も浅いこのカストラにとって人員を減らすことは滅亡に直結しているので、断る旨を帰国隊長のロゴスに伝えようとしたところ、
「武器の支給なら我々がいたそう。安心しろ性能に関しては折り紙付きだ。少しは役立つだろう」
隊長がそう声をかけてくれた。確かに以前隊長から貰った剣の切れ味は抜群だった。そして隊長は
「敵軍の装甲がいかほどのものかは存じ上げませんが、我々の仕上げる剣は鉄鎧をも貫きます」
「なるほど。用意はあるか?今すぐ持ってきたいのだが」
「はい。少々お待ちを」
隊長は一番に秘蔵の剣を持ってくるよう命じた。一番が持ってきたそれは刃渡り80cmを超え両刃の鉄剣であった。
「これは天からの賜りもので作り上げました。その他数十本の鉄剣を貴国の検討をお祈りして献上致します」
「これは!なんと立派な剣なんでしょう。ありがたく頂戴致します。この御恩いつか必ず」
そしてその日は彼らの健闘を祈り、馬のはなむけをした。
さすがに物資不足で宴といえるようなことも出来ず、焚き火を囲んで談笑する程度のものだったが。
また、今回は帰国組だけでなくムラに残っていた男も駆り出され、女性陣だけがこちらの手伝いを引き続きしてくれるそうだ。
それぞれ思うところがあるだろう。
その日、夜がふけても薪が絶えることは無かった。
翌日、彼らは行ってしまった。残った我々は誰一人として欠けることなく帰ってきてくれることを祈りつつ、最悪の事態に備え可能な限り体制を整えておく。
まずは家屋の増設。今ある建物は環状に並んでおり当分はこのまま外周に増設という形をとろうと思う。
しかし、川のほとりに我々の家を建物だから1方向にしか伸びないのて、少し見栄えの悪い形になってしまうが致し方ない。
目標はとりあえず100軒の建物を建設することだ。それを住宅にするか、或いは商業施設とするかは追追決めるとして一先ず労力の大半をここに割くこととした。
そしてもうひとつの問題点、食糧不足。
確かに俺と佐々木さんの2人だけの生活のとき、そしてキャロットたちが来たときには事足りていた。
けれども一国―全員ということはないだろうが、受け入れるとしたら相当量必要なのは明らかであり、今のカストラの状況では賄えない。
ただでさえ今日の我々は毎日狩りにいっているわけで、不安定かつ余剰はない。
ところでこの世界の生き物は亜種と本物?正統?なんといえばいいか分からないが原種とでも呼ぼうものとがいる。
このうち亜種は倒すと一般的なゲームなどで見かけるエフェクトを放ち消えていくが、原種は残存する。
そしてそこから肉を剥ぎ取ることが可能である。
つまり今から少しづつ保存食としての肉を確保しておけば決戦後の受け入れにはある程度支給できるであろう。
そのためには肉の保存方法を考えなければならない。1度この場にいる全員と話し合うことにした。
しばらくして全員を招集し、これからについての会議を開いた。その結果俺とジェニオ達の内隊長と数名とで狩りに行きまた、建材を収集することとなった。
その間残りの人達で建築や紡績などなどできることをする。
こちらの指揮は佐々木さんに任せることにした。
これからいつまで続くかは分からないが限られた人数でのムラ作りが始まる。当然俺も知らないこと、できないことだらけ、そして仲間や自分の命すら失ってしまうかもしれない過酷な生活になるだろうがそれさえも少し楽しみである。きっと上手くいく。
最後までお読みいただき有難うございます!
えーっと・・・久しぶりですね(笑)
1年半ぶりくらいです。まぁ、色々あったんですね。あまり触れないでください。そして下手したら次回もそれくらいになってしまうかも?それでも待ってていただければ幸いです。必ず更新はします。
さて、少し内容の解説?的なのします!恥ずかしいのであまり見ないでください。(あとしょうもない)
文中に「薪が絶えない」的な表現があったこと思いますが、こんな使い方しない!と思われる方もいるやもしれません。これは暗に「ずっと火をおこしていた」を表しているだけはないってことですね。
薪=木の棒つまり、希望ってか・・・。
こういうのを自ら解説するのはとてつもなく恥ずかしいことだと気がついたのでもう二度としません。多分。
さて長々と色々やってきましたが、次いつの投稿になるかは未定ですが1年以内には出したといと思っているので今後もよろしくお願いします。
それでは次回もお楽しみに!




