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童話のパロ。  作者: 月白ヤトヒコ
6/6

三枚のお札。~なにこれっ♥️こんなの食べたこと無いっ…~

 和洋ごちゃ混ぜと言っといて、和風が桃太郎しかなかったので・・・

 人食い山姥注意!

 昔々、あるお寺に和尚さんと小坊主さんが仲良く暮らしていました。


 秋の深まったある日のことです。


「食欲の秋っ!?なんかこう、猛烈に秋の味覚が食べたい気分です・・・ということで、和尚さん、隣山に秋の味覚を狩りに行って来ます」

「待ちなさい。山の奥深くには、人を食う山姥がいるんじゃぞ?非常に危険じゃぞ」

「大丈夫ですって。そんな山奥に入らなければ、見付かりませんよ」

「お前さんは言い出すと聞かんからの・・・」


 和尚さんは溜息を吐いて、机に向かうとお札を三枚書いて小坊主さんへと渡しました。


「ほれ、これを持って行きなさい」

「お札?なんです、これ?」

「神さまに加護を頂いた有り難いお札じゃ。身に危険が迫ったときに祈りなさい」

「はあ…ありがとうございます?」


 半信半疑ながらもお札を受け取った小坊主さんは、食欲のおもむくまま秋の味覚狩りに出掛けました。


 そして・・・


「栗発見!ハッ、あんなところに柿だと!あ、向こうには山葡萄やまぶどうがっ!松茸っ!アケビがっ!山桃がっ!桑の実がっ!山菜がっ!」


 こうして、秋の味覚に誘われた小坊主さんはどんどん山奥へと入って行ってしまったのです。


※※※※※※※※※※※※※※※


「ハッ、いつの間にかこんなに暗いっ!?」


 気が付いたときには、日が落ちて真っ暗です。


「…道迷ったし・・・」


 途方に暮れていると、山の奥にぽつんと明りが灯っているのが見えました。


「あれは…家だ!泊めてもらおう!」


 小坊主さんは喜んで、その家へ向かいました。


「すみませーん、道に迷ったんですが、宜しければ今晩一晩泊めて頂けませんかー?」

「おやまあ、それは大変だったねぇ。さあ、お入りなさい。今、ご飯を用意してあげるよ」


 優しそうなおばあさんが出て来て、小坊主さんを暖かく迎えてくれました。


「ありがとうございます!あ、お礼と言ってはなんですが、食材を提供します」

「まあまあ、嬉しいねぇ」


 こうして、おばあさんの作った夕御飯が提供されたのですが・・・


「どうしたんだい?もっとお食べ」

「ぁ、いえ…もうお腹一杯で・・・」


 おばあさんの作った料理は、ぶっちゃけ…飯マズでした。小坊主さんの口には合いません。

 けれど、初対面の、それも親切で家に泊めてくれると言ってご飯を振る舞ってくれた人に「料理下手くそですね」とは、面と向かって言えません。


 こうして、微妙な空気で夕食が終わり、小坊主さんは眠ることにしました。


※※※※※※※※※※※※※※※


 その夜のこと・・・


 マズい夕食を残した小坊主さんはお腹が空いて目を覚ましてしまいました。


 すると…シャッ、シャッとなにかをこするような音が聴こえて来ました。


「?」


 なんだろうと囲炉裏の方を覗くと・・・


「クックックッ・・・うまそうな小坊主だ。どう料理してやろうかねぇ?」


 おばあさんが包丁をぎながら、小坊主さんを食べることを想像して舌舐めずりしていました。


「山姥だったのか・・・」


 小坊主さんは、おばあさんが人食いの山姥だったことに気付いたのです。


「肉は焼くだけで旨いからねぇ♪」


 小坊主さんはガクブルで、お札に祈りました。


「なんかこう、かく助けてっ!?」


 すると、お札がカッ!と光って、小坊主さんの眠れるなにかが覚醒しました。


「なんだ、今の光りはっ!?ハッ、小坊主っ!?」

「おばあさん、あなたは・・・」

「ふんっ、見付かっちゃあしょうがない!そうさ、あたしは山姥だよっ!今からお前を食ってやるっ!覚悟しなっ、小坊主っ!?」


 包丁を構えて小坊主さんへ襲い掛かる山姥。小坊主さん危機一髪!しかし、


「手前ぇの飯マズいんだよっ!?ンなド下手クソのマズい料理にされて堪るかっ!?今から俺が、本物の料理ってやつをお前に教えてやるっ!?」


 なにかが覚醒した小坊主さんに、あっさりと包丁を奪われてしまいました。


「な、なんだってっ!?」


 そして、小坊主さんが華麗な包丁捌きを見せながら、秋の味覚を調理して行きます。


 栗ご飯、松茸のお吸い物、山菜の天ぷら。


 デザートには山葡萄と山桃、桑の実、柿を酒と砂糖でさっと煮た物を。秋の果物の砂糖煮、日本酒の香りを添えて。


 そして、牛酪バターと小麦粉と砂糖を練って薄く伸ばし、焼き網で炙った甘い小麦粉煎餅を土台に、茹で栗を茶漉ちゃこしでしたものに甘酒と豆乳で甘さと硬さを調節、なめらかな舌触りにした栗餡を乗せ形を整え・・・


 なんか凄い栗きんとんを作って出しました。


「なにこれっ♥️こんなの食べたこと無いっ…」


 小坊主さんの作った美味し過ぎる料理に、思わず山姥の乙女の部分が出てしまいました。


「あなたが、人を食べるのをやめて、心を入れ替え、今まで食べてしまった人を供養するのなら、わたしの住むお寺へ来なさい」

「・・・はい…」


 小坊主さんの作る料理に魅了された山姥は、人を食べることをやめ、これからは心を入れ替えて仏門に入ることにしました。


 料理の力は偉大でした。


 めでたしめでたし・・・ではないですよね?

 読んでくださり、ありがとうございました。

 覚醒したのは料理の才能と度胸でした。これで二枚。もう一枚は、料理を作る間の山姥の忍耐。物理に作用しない三枚のお札でした。

 実はバターは、漢方薬としてかなり昔からあったそうで、薬扱いだったそうです。

 果物の砂糖煮はコンポートで、甘い小麦粉煎餅がクッキー。なんか凄い栗きんとんは、モンブランな感じです。

 坊さんなので精進料理です。

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