変化する内面
登場人物
ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。
カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。
ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。ハルナと同型の“マジカルチェンジャー”と魔法の杖“マジカルロッド”を駆使して戦う。
キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。
サクラ:政府の組織に所属する魔法少女。ハルナの使用する物よりも高い音声を発する“マジカルチェンジャー”で変身し、魔法の自立安定一輪車“マジカルユニサイクル”を乗りこなす。
プラトン:サクラのパートナーであるカモノハシの容姿を持った妖精。冷静沈着で口数は少ない。
アオイ:かつてミサキと共に闇の力と戦った魔法少女。ハルナの使用する物よりも低い音声を発する“マジカルチェンジャー”で変身し、魔法の杖“マジカルワンド”を使いこなす。
ハナコ:ハルナのクラスメート。極度のお人好しであり、元気の無い人を見ると放ってはおけない性格をしている。
ブラックナイト:漆黒の鎧を身に纏いし正体不明の剣士。時折姿を現しハルナのことをサポートするが……?
その日、ハルナは学校で神隠しの噂を耳にしました。人が多く集まる施設で大勢の人が一度に行方不明になる事件が相次いでいるという話でした。
多くの生徒達がバケモノによってそのような事件が引き起こされていると考えていました。しかし、それらの事件がマスコミで取り上げられるようなことはありませんでしたので、ハルナ達の学校以外でそのような事件が本当に起こったのかすら定かではない状況でした。実際に存在していない事件と政府が報道を規制している事件は原則としてマスコミでは取り上げられなかったのです。
ただ、ハルナはその噂の真相について見当をつけることが出来ました。
闇の神殿で闇の幹部達が話をしていました。
「ヴァーミナス兵にする為にヴァーミンを寄生させた人間の一人が私の制御を外れ行方不明になってしまった。」ゼノが言いました。「それと同時に他のヴァーミナス兵達の制御も失われ始めている。」
「ほう……。」ソリーサが言いました。
「その人物がヴァーミンに適合したということか……。」ケミルが言いました。「そして他のヴァーミナス兵達を自身の制御下に置いたのか……。」
「確か強い心の闇があればヴァーミンに寄生されても自我を失わないんだったな。」ソリーサが言いました。「さらに他のヤツらも操れるなんて、よっぽど強い心の闇の持ち主なんだろうな!」
「ヴァーミナス兵は安定した供給が行えることが強みのハズだったのだが、とんだ見込み違いだったか……。」ゼノが言いました。
「良いじゃねえか、面白くなりそうで!」ソリーサが言いました。
「むう……。」ゼノが言いました。
「やはりイオの研究を活用することは難しいのかも知れない。」ケミルが言いました。
その頃、ハルナは通りを歩いていました。するとそこへシオンがやって来ました。
「シオンさん……。」ハルナが言いました。
「話を聞いて貰いたい。」シオンが言いました。
ハルナとシオンはとある建物の屋上で話をすることにしました。
「学校や病院等の人が多く集まる施設で次々と人が行方不明になる事件が起きていることは知っているか?」シオンが言いました。
「はい。」ハルナが言いました。「噂話は聞きました。」
「そうか。」シオンが言いました。
「多分、ゼノが大勢の人にヴァーミンを寄生させてるんだと思います。」ハルナが言いました。
「なるほど。」シオンが言いました。
「この間の一件以降スミレに魔法局の監視をさせているのだが、どうやら魔法局の連中が動いたらしい。」シオンが言いました。
「警察の人達がですか?」ハルナが言いました。
「ああ。」シオンが言いました。「サクラがその現場に向かっている。手を貸してやって欲しい。」
「サクラちゃんが……。」ハルナが言いました。「確かに、大量のヴァーミナス兵を一人で相手にするとなると、さすがのサクラちゃんでもキツかも……。それに場合によっては警察の人達とも……。」
「魔法局の心配は必要ない。」シオンが言いました。「さすがに闇の勢力を前にして我々と敵対する余裕は無いだろう。」
「お金は命より重いって言いますけどね……。」ハルナが言いました。
「闇の勢力を退けられなければ奴らの予算が増えることも無い。」シオンが言いました。
「納得です。」ハルナが言いました。
「尤も、現在の魔法局の実力を鑑みれば既にこの件から手を引き始めていると予想出来るな。」シオンが言いました。
「つまり警察の人達と敵対することも無ければ協力することも無いということですね。」ハルナが言いました。
「おそらくは……。」シオンが言いました。「他に聞いておきたいことはあるか?」
「えっと、他のみんなはどうしているんですか?」ハルナが言いました。「出撃していないんですか?」
「むう……。」シオンが言いました。「皆の命を預かる立場上、危険な戦線に見境無く人員を投入したくは無い。」
「なるほど……。」ハルナが言いました。「でも、アオイさんがいてくれると心強いと思いますよ。」
「アオイか……。」シオンが言いました。「そう言えばツバキからも推薦されていたな。」
「少なくとも、死ぬことは無いと思います。」ハルナが言いました。
「分かった。」シオンが言いました。「本当はより危険度の低い戦線で様子を見てからと思っていたが、検討してみよう。」
「はい。」ハルナが言いました。
「ヘリに乗るんだ。現場まで送ろう。」シオンが言いました。
「分かりました。」ハルナが言いました。
ハルナ達は魔法のヘリコプターでとある病院の上空に来ました。その病院の周りには数台の車が乗り捨てられており近くに人がいる様子はありませんでした。
「あの病院で事件が起こっているんですか?」ハルナが言いました。
「ああ。」シオンが言いました。「おそらくあの病院は闇の勢力によって占拠されている。」
「あの中にサクラちゃんが……。」ハルナが言いました。
「突入したらサクラと合流し、闇の勢力を排除するんだ。」シオンが言いました。
「分かりました。」ハルナが言いました。
ハルナはヘリコプターから飛び降りました。
「変身!」ハルナは空中で変身して病院の入口に着地しました。
ハルナの着地を見届けるとシオンは魔法のヘリコプターに乗って時計塔へと戻っていきました。
「さてと……。」ハルナはマジカルブラスターを手にその病院へと入っていきました。
その病院のエントランスにはたくさんの人々が倒れていました。
「これは……。」ハルナが言いました。「ここで何が……?」
ハルナはすぐ近くの警備室に入りました。するとそこに一人の隊員が魔法のドリルを手に倒れ込んでいました。
「あなたは……?」ハルナが言いました。「もしかして、警察の……?」
「ああ……。」その隊員が言いました。「君は……?民間の魔法少女か……?それとも……?」
「その武器は一体何なんです?」ハルナが言いました。「あなた達が奪った武器の中にそんな物は無かったハズ……。」
「やはりそうか……。」その隊員はハルナが何者なのか察しました。
「……。」ハルナは黙っていました。
「コイツはサブマジカルドリル、お前達から奪った武器を解析して作った武器さ。」その隊員が言いました。
「まさか警察にそこまでの技術力があったなんて……。」ハルナが言いました。「ツバキさんが聞いたら驚くだろうな。」
「フッ……。」その隊員が言いました。「尤も、我々の技術力ではヤツらに太刀打ち出来なかったようだがな……。」
「どうやらそのようですね……。」ハルナが言いました。
「監視カメラの映像を見てみろ。」その隊員が言いました。
「監視カメラ……。」そう言ってハルナは監視カメラの映像を確認しました。
監視カメラの映像には武器を手にした隊員達と、それらの隊員達をいとも簡単にふっ飛ばす一人の少女が映っていました。その少女はフーデッドコートを身に纏っており、包帯の巻かれた顔から片目だけ覗かせていました。
「あの子は……?」ハルナが言いました。「一体何者なの……?」
「さあな……。」その隊員が言いました。「“シアー”と名乗っている。ヤツが怪物達の親玉のようだ。」
「シアー……。」ハルナが言いました。
「ヤツは俺達にウイルスを打ち込みやがった……。」その隊員が言いました。
「ウイルス……?」ハルナが言いました。
「“D-シアー”、ヤツの体内で生成された闇のウイルスらしい……。」その隊員が言いました。「ここにいる全ての人間がそのウイルスに感染している。」
「そんな……!」ハルナが言いました。「それじゃあサクラちゃんは……?」
「魔力がある人間は闇のウイルスに免疫がある。だが、D-シアーの毒性は並の魔力では打ち消せない。他の隊員達がウイルスに耐えきれず死んでいくのを見てきた。」その隊員が言いました。
「いや……。」ハルナが言いました。「サクラちゃんならきっと大丈夫……!」
「仮にそうだとしても、お前はどうかな……?」その隊員が言いました。
「えっ……?」ハルナが言いました。
「ううっ……!」その隊員が苦しみだしました。
「大丈夫ですか……!?」ハルナが言いました。
「どうやら俺もその時が来たようだ……!」その隊員が言いました。「ううっ……!ウウッ……!ウアアアアアアアッ……!」
その隊員がアンデッドに変異しました。
「フン……!」その隊員が魔法のドリルを手に立ち上がりました。
「ウソ……!?」ハルナが言いました。
その隊員が魔法のドリルを起動させてハルナに襲い掛かりました。ハルナはすぐさまマジカルブラスターを撃ってその隊員を攻撃しましたが、その隊員はハルナの攻撃をもろもせずに魔法のドリルをハルナの脇腹に突き立てました。
「うあっ……!」ハルナはマジカルブラスターを落とし、よろめきながら後退して尻餅を搗きました。
「ウアアアッ!」さらにその隊員がハルナに魔法のドリルを突き刺そうとしてきました。
ハルナは身を逸らしてその隊員の攻撃をギリギリでかわすと、立ち上がってその部屋を出ました。
その隊員が魔法のドリルを構え直してハルナを追いかけました。ハルナは脇腹を押さえながらその隊員から逃げました。
その病院の出口にはいつの間にか火炎放射器が仕掛けられており、外へ出ることが出来なくなっていました。
「そんな……!」ハルナは別の逃げ道を探して走りました。
丁度エレベーターのドアが開き、ハルナは思わずその中に逃げ込みました。ハルナはボタンを押してエレベーターのドアを閉めようとしましたが、エレベーターのドアはなかなか閉まりませんでした。
「うわああっ……!」ハルナは迫りくるその隊員を見て腰を抜かしました。
その隊員がエレベーターの目の前まで迫ったその瞬間、エレベーターのドアが閉まり、ハルナは他の階へと運ばれていきました。
「ああっ……!」ハルナが思わず声を漏らしました。「こういう時にエレベーターを使うのは良くないね。」
その頃、サクラは屋上に出ていました。
「いない……。」サクラが呟きました。
「ヘリの音が聞こえたから頑張ってここまで上がってきたのに……。」続けてサクラが呟きました。「ハルナさん、ヘリで来たのに屋上には降りなかったんですか?」
サクラが階段の方へと歩き出しました。
「このままじゃマズいかも知れない……。」サクラが呟きました。
ハルナはエレベーターから降りました。エレベーターのランプは故障しており、ハルナはそこが何階なのか知ることが出来ませんでした。
「くうっ……!」ハルナは脇腹を押さえながらゆっくりと歩いていました。「さっきの攻撃……まだ痛むよ……。」
そこへ一人の魔法少女が姿を現しました。
「……!?」ハルナが身構えました。
「大丈夫ですか?」その魔法少女が言いました。
「あなたは……!?」ハルナが言いました。
「私はタチバナ。」その魔法少女が言いました。「あなたの痛みを和らげて差し上げます。」
その魔法少女が魔法でハルナの痛みを消し去りました。
「今のは……?」ハルナが言いました。「これがあなたの隠された能力……?」
「お気をつけて……。」そう言ってタチバナは姿を消しました。
「タチバナ……。」ハルナが呟きました。
ひとまずハルナはサクラを探してその階の探索を行ってみることにしました。病院内は至るところが崩れており、通れる場所は限られていました。
ハルナが廊下を歩いていると、一体のヴァーミナス兵に遭遇しました。
「アイツは……!」ハルナが言いました。
そのヴァーミナス兵がハルナに襲い掛かりました。
ハルナはそのヴァーミナス兵と殴り合いました。
「ハアッ!」ハルナはそのヴァーミナス兵を蹴り飛ばして倒しました。
「やっぱりヴァーミナス兵が……。」ハルナが呟きました。「それにしてもシアーって一体……?」
ハルナはその階に上がってきたものとは別のエレベーターを見つけました。そのエレベーターのドアは開いており、ハルナを誘っているかのようでした。
「この階にサクラちゃんはいなさそうだね……。」そう呟きながらハルナはそのエレベーターに乗りました。その瞬間、そのエレベーターのドアが閉まり、ハルナはまた別の階へと運ばれていきました。
また別の階へと運ばれたハルナはその階の探索を行うことにしました。その階もまた通れる場所が限られていました。
ハルナは開けた場所に出ました。すると突然、周囲からヴァーミナス兵達が姿を現しました。
「またか……!」ハルナが言いました。「相手になってあげるよ!」
ハルナはマジカルブラスター手に次から次へと襲い掛かってくるヴァーミナス兵達と戦いました。ハルナは時折殴られながらも一体ずつヴァーミナス兵達を倒していきました。
「マジカルフレイム!」ハルナが魔法火炎弾を放ちました。
ハルナの放った魔法火炎弾がヴァーミナス兵の一体に直撃したその瞬間、そのヴァーミナス兵の体が燃え上がり、さらに炎がどんどん広がって他のヴァーミナス兵達に燃え広がっていきました。
「これは……!?」ハルナは自分の攻撃の威力に驚いていました。「何かがおかしい……。」
残っていたヴァーミナス兵達がその場から離れていき、ひとまずハルナは戦いを終えました。
「一体どうしてこんなに燃えたんだろう……?」ハルナが呟きました。
そこへどこからともなくシアーが姿を現しました。
「許さないぞ……!」シアーが言いました。
「あなたは……!」ハルナが言いました。
「君達のことは観察させて貰った。」シアーが言いました。
「えっ……?」ハルナが言いました。
「魔法少女……君達の魔法があれば私の望みが叶えられるかも知れないと思った。」シアーが言いました。
「あなたの望み……?」ハルナが言いました。「それは一体……!?」
「私はバケモノだ。でも、元は人間だ。人間に戻りたい。魔法の力があれば私は人間に戻れるかも知れない。」シアーが言いました。
「人間に戻りたい……。」ハルナが言いました。「まさかあなたは人の心を持ったままアンデッドになったの?」
「そう。私はあの日闇の寄生生物に襲われてバケモノへと変えられた、人の心を残したまま。私は望んでバケモノになったワケじゃない。私は人間に戻りたい。それを叶えるには魔力を集める必要がある。」シアーが言いました。
「魔力を集める……。」ハルナが言いました。
「寄生生物の持つウイルスが私の体内で変化した。このウイルスに感染した者は魔力を持っていなければそのまま死ぬ。死を免れるだけの魔力を持っていたとしても、その量が十分で無ければいずれ魔力が尽きてバケモノへと変異する。このウイルスに感染しても生き延びられる人間は即ち強大な魔力を持つ者ということになる。それだけの魔力があれば、きっと私は人間に戻ることが出来る。」シアーが言いました。
「つまりそれがあなたの目的……?」ハルナが言いました。
「そう。」シアーが言いました。「その為にあなたにも感染者になって貰う。」
「そうはならない!」そう言ってハルナがマジカルブラスターを撃ちました。
シアーの目が輝いたその瞬間、ハルナの放った魔法弾が消滅し、ハルナがふっ飛ばされました。
「うっ……!今のは……!?」ハルナが言いました。
「あなたの攻撃など通用しない。」シアーが言いました。「所詮この程度の攻撃力では期待するだけ無駄か……。」
「くうっ……!」ハルナが言いました。
「もう一人の方はより攻撃力が高いようだが、期待出来るかな?」シアーが言いました。
「サクラちゃん……!」ハルナが言いました。
「まあ、しばらくは観察を続けることにしよう。」そう言ってシアーが姿を消しました。「フフフフフフフフ……!」
その頃、時計塔ではシオンとツバキが話をしていました。
「ようやくサクラ以外のメンバーも使う気になったみたいだな。」ツバキが言いました。
「ああ。」シオンが言いました。「だが、少し心配だ。」
「心配のし過ぎだ。」ツバキが言いました。「もう少しメンバーを信頼したらどうだ?」
「しかし……。」シオンが言いました。「どうにも今回の相手は厄介そうな予感がする。」
「確かにな……。」ツバキが言いました。「おそらく、今回の相手はこれまでの相手と比べてもかなり強大な部類に入るだろうな。」
「ここはやはり私も……!」そう言ってシオンがマジカルテックモバイルを手にしました。
「待ちなよ。」そう言ってツバキがシオンの手を押さえました。「私に任せろ。」
「何……?」シオンが言いました。
「上手く行くように取り計らってやるさ。」ツバキが言いました。
「頼む。」シオンが言いました。
階段でまた別の階へと移動したハルナの耳に戦いの音が聞こえてきました。
「この音……!」ハルナが言いました。「サクラちゃん……!?」
ハルナは音の聞こえた方向へと走り出しました。
開けた場所でサクラがヴァーミナス兵達と戦っていました。サクラはヴァーミナス兵達を次々と殴り倒していましたが、次第に数を増していくヴァーミナス兵達を相手に劣勢に立たされていました。
「うわっ……!」ヴァーミナス兵の一体に殴られたサクラが床の上を転がりました。「くうっ……!もう魔力が持たない……!」
倒れ込むサクラにヴァーミナス兵達が迫りました。
「サクラちゃん……!」そこへハルナがマジカルブラスターを手に駆けつけました。「マジカルショット!」
ヴァーミナス兵達がハルナに襲い掛かりました。ハルナは多数のヴァーミナス兵達を相手に戦い始めました。
「ハルナさん……!」サクラが言いました。「魔力さえあれば……!」
サクラが瓦礫の隙間に落ちているバールを見つけました。
「こんなところで諦めない……!」サクラは腕を伸ばしてそのバールを手にしました。
「ハアーッ!」バールを手に立ち上がったサクラがヴァーミナス兵の一体を殴り倒しました。
「サクラちゃん……!」ハルナが言いました。
「特殊能力はあまり使えませんが、出来る限り援護します!」サクラが言いました。
「うん、サクラちゃん!」ハルナが言いました。
ハルナとサクラは協力してヴァーミナス兵達を全滅させました。
「何とかなりましたね、ハルナさん。」サクラがバールを下ろしながら言いました。
「うん、サクラちゃん。」ハルナが言いました。「大丈夫だった?」
「全然大丈夫じゃありませんよ。」サクラが言いました。「シアーってヤツのせいでそこら中バケモノだらけです。」
「シアー……。」ハルナが呟きました。
「シアーの正体についてある程度分かっていることがあります。」サクラが言いました。
「えっ、そうなの!?」ハルナが言いました。
「シアーは一年前に行われた闇の魔女-ダーク・エンプレスとの戦いにおける犠牲者の一人です。」サクラが言いました。
「一年前……ミサキさんの……?」ハルナが言いました。
「はい。彼女はダーク・エンプレスの計画に巻き込まれて全身に火傷を負い、入院していました。そして最近になって彼女の入院していた病院がゼノに襲われてその結果彼女はアンデットになったんです。」サクラが言いました。
「心を持ったアンデッドに、ね……。」ハルナが言いました。
「彼女にはヴァーミナス兵達を操る特殊能力があります。その能力を用いて暗躍を続けていたようですね。」サクラが言いました。
「彼女の目的は魔力を使って人間へと戻ること……。」ハルナが言いました。「でもその為に多くの人を犠牲にするなんて許せない!」
「同感です。」サクラが言いました。「何とかして彼女を阻止しましょう。」
「うん!」ハルナが言いました。
次の瞬間、壁を突き破って魔法のドリルを手にした隊員が姿を現しました。
「アイツは……!」ハルナが言いました。
「魔法局の……!?」サクラが言いました。「どうしてアンデットに……?」
「シアーの力だよ!」ハルナが言いました。「シアーはここにいる人達にウイルスを投与したんだ。それでみんな死んじゃって、あの人はバケモノに……。」
「そんな……!」サクラが言いました。
「ウアアアアアアアアッ!」その隊員がハルナ達に襲い掛かりました。ハルナ達は為す術無く魔法のドリルから逃げ回りました。
「ハアッ!」ハルナがマジカルブラスターを撃ちましたが、やはりその隊員はビクともしませんでした。「何か手は……!?」
その時、ハルナは魔法火炎弾でヴァーミナス兵達が炎上したことを思い出しました。
「もしかすると……!」そう言いながらハルナはマジカルブラスターを構え直しました。
「ウアアアアアアアッ!」その隊員がハルナに向かって走り出しました。
「ハルナさん……!」サクラが言いました。
「マジカルフレイム!」ハルナが魔法火炎弾を放ちました。
魔法火炎弾を受けたその隊員は全身が燃え上がり、もがき苦しみながら遂に倒れました。
「あのバケモノを……一撃で……?」サクラが言いました。「そっか……かつて全身に火傷を負ったシアーは火に対する恐怖を抱いている。だから彼女の配下のアンデットは火に弱いんだ!」
「許さないぞ……!」シアーが姿を現しました。「私の見ているところで火を扱うなんて……!」
「シアー……!」ハルナとサクラが同時に言いました。
「動かないで……!」ハルナがマジカルブラスターをシアーに向けて言いました。「今のすぐ計画を中止して。さもないとあなたも炎で焼かれることになるよ!」
「ううっ……!」シアーが顔を手で押さえながら言いました。「やめろ……!ううっ……!」
その瞬間、シアーの体が闇の炎に包まれました。
「えっ……!?」ハルナが言いました。
「様子がおかしい……。」サクラが言いました。
「ウアアアアアアアッ……!」シアーが叫びました。
闇の炎でシアーの身を包んでいたフーデッドコートと包帯が燃えて無くなりました。そして闇の炎が消えると同時に焼け爛れたシアーの素顔が露わになりました。
「うわっ……!」ハルナが思わず声を上げました。
「ウウッ……!」シアーが呻き声を上げました。「貴様……!」
「ハルナさん……!」サクラが言いました。
「マジカルフレイム!」ハルナが魔法火炎弾を放ちました。
シアーが魔法火炎弾を受けて炎上しました。
「ウアアアアアアアッ……!」シアーが叫びました。
「効いてる……?」ハルナが言いました。
「いや……。」サクラが言いました。
「おのれ……!」シアーが魔法の炎に身を包まれながらハルナ達を睨みつけました。「許さないぞ……!殺してやる……!」
そしてシアーは姿を消しました。
「ハルナさん……。」サクラが言いました。
「うん……。」ハルナが言いました。「本当の勝負はここからだね。」
その病院の前にアオイがやって来ました。
「さて、任務開始よ!」そう言ってアオイはその病院の入口に向かって歩いていきました。
次回へ続く!




