漆黒の騎士
登場人物
ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。
カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。
ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。今は戦うことが出来ない。
キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。
クローディオ:闇の皇子。時期尚早として世界の破壊に否定的な態度を示している。
クローディア:闇の皇女。
ソリーサ:闇の幹部。闇の魔法で世界を脅かす。
シン:闇の幹部。闇の機械で世界を脅かす。
ケミル:闇の幹部。闇の薬で世界を脅かす。
ゼノ:闇の幹部。宇宙より邪悪な意思を持つ者を呼び寄せて世界を脅かす。
イオ:闇の幹部。闇の生物兵器で世界を脅かす。
山奥にある廃墟にオバケが出るという噂を耳にしたハルナはカーターと共にその建物の調査に向かいました。
そこでは闇の幹部の一人であるイオが闇のウイルスを使って人々をアンデッドへと変える実験を行っていました。
途中謎の戦士に助けられながらもイオの研究室へと辿り着いたハルナ達に対し、イオは闇のウイルスによって作り出した生物兵器第一号“レイン”を差し向けたのでした。
しかし、生物兵器としてまだ不完全であったレインは起動と同時に暴走を始め、怪獣“スーパーレイン”となって暴れ始めたのでした。
そして今、山々に囲まれたその土地でハルナの操縦する巨大ロボット“マジカンダー”とスーパーレインとの戦いが幕を開けようとしていました。
スーパーレインがマジカンダーに向かって歩き出しました。
「リストバルカン!」ハルナが操縦桿を動かすと同時に、マジカンダーが右腕に内蔵された機関砲でスーパーレインを攻撃しました。
スーパーレインは連射される魔法弾を受けながらも怯まずに歩き続けました。
「……!」スーパーレインの圧倒的な耐久力にハルナは驚愕しました。
スーパーレインが変異したことで新たに腕に形成された鉤爪を用いてマジカンダーを攻撃しました。
「うわああああああっ……!」マジカンダーのコックピットが激しく揺れて、ハルナが怯みました。
「くうっ……!」ハルナが体勢を立て直して操縦桿を握り直しました。
「ハアッ!」ハルナが叫ぶと同時に、立て続けに攻撃を行うスーパーレインの左腕をマジカンダーが右手で掴んで止めました。
左腕による攻撃を止められたスーパーレインが右腕の鉤爪を突き出して攻撃を仕掛けました。
「うわあっ……!」スーパーレインの攻撃を受けたマジカンダーが後退しました。
「何て恐ろしいパワーなんだ……!」カーターが思わず言いました。
「でも、負ける訳にはいかないよ!」ハルナが言いました。
再び向かって来たスーパーレインに対し、マジカンダーが左腕の機関砲で攻撃を行いました。
スーパーレインはやはり弾丸を受けながらも歩き続け、マジカンダーを引っ掻きました。
「くうっ……!」ハルナが怯みました。
「この……!」ハルナがそう言いながら操縦桿を動かすと同時に、マジカンダーが右腕でスーパーレインを殴りました。
殴られたスーパーレインがようやく怯んで後退しました。
体勢を立て直したスーパーレインが咆哮しました。そして再びマジカンダーへと向かい出しました。
「ハアアッ!」マジカンダーも前進し、スーパーレインを連続で殴りました。
スーパーレインが殴られ続けて後退しました。
マジカンダーが立ち止まって後退するスーパーレインと距離を取りました。
スーパーレインが怯みながらも再び体勢を立て直そうとしました。
「ラスティング・バースト!」ハルナが操縦桿を動かすと同時に、マジカンダーが両腕の機関砲を同時に発砲してスーパーレインを攻撃しました。
マジカンダーの両腕から絶え間無く放たれる魔法弾を受けてスーパーレインはもがきながら遂に爆発しました。
「勝った……!」そう言ったハルナの座っているコックピット内には煙が立ち込めていました。
ハルナがマジカンダーから降りて倒壊したその建物の前でカーターと落ち合いました。
「やったね。」カーターが言いました。
「うん。」ハルナが言いました。「まさかここまで苦戦するなんて……。」
「でも大丈夫、次に召喚する時にはマジカンダーも元に戻ってるから。」カーターが言いました。
「うん。」ハルナが言いました。
「ウアアア……。」その瞬間、瓦礫の中からゾンビ達が這い出してきました。
「……!」ハルナ達が戦慄しました。
「まだ終わってなかったの……!?」ハルナが言いました。
「ゾンビ達を閉じ込めていた建物が無くなって、ゾンビ達が外へ出始めている!早いとこ何とかしないと、街に出るかも知れないよ!」カーターが言いました。
「何とかするって言っても、さっきの戦いでマジカンダーは壊れちゃったし……。」ハルナが言いました。
「とにかくゾンビ達を全滅させるんだ!」カーターが言いました。
「分かった!」ハルナがマジカルブラスターを構えました。
ハルナがマジカルブラスターでゾンビ達を撃っていきました。しかしゾンビ達はマジカルブラスターで撃たれてもすぐに体勢を建て直し、建物の外に出たゾンビ達の数は増える一方でした。
「そんな……!」マジカルブラスターを撃ち続けながらハルナが言いました。
そしてハルナ達に追い打ちをかけるように、さらなる怪人が瓦礫の中より姿を現しました。
「アイツは……!?」カーターが言いました。
「分からない!」ハルナが言いました。「さっきのアイツに似てるけど……。」
その怪人はレインを生み出す前にイオが生み出した生物兵器第0号とも言えるアンデッドでした。イオはその怪人にも“レイン”のコードネームをつけていましたが、生物兵器としての性能がイオの求めていた水準に達しなかった為に破棄し、新たなレインの開発を行っていました。よってここではその怪人のことを便宜上“プロトレイン”と呼ぶことにします。
プロトレインは元々レインと同じ姿をしていたアンデッドでしたが、建物の倒壊に伴うダメージにより肉体が変異し、ハルナ達の前に姿を現した際にはスーパーレインに近い容姿となっていました。しかしながらその不完全さ故か体の大きさまでは変化しておらず、等身大でより人型に近い姿でハルナ達の前に現われていました。
プロトレインがハルナに向かって走り出しました。
「……!」ハルナが向かって来たプロトレインに向けてマジカルブラスターを発砲しました。
プロトレインが魔法弾を受けて怯みましたが、すぐさま体勢を立て直してハルナに飛び掛りました。ハルナは横に転がってプロトレインの攻撃をかわし、しゃがんだまま再びマジカルブラスターを発砲したものの、やはりプロトレインは少しの間怯んだだけで倒れませんでした。
「ハルナ、どうやらアイツは見た目以上にタフみたいだ……!」カーターが叫びました。
「どうやらそうみたいだね……!」ハルナが立ち上がりながら言いました。
ハルナは再び向かって来たプロトレインが振り回すその鋭い爪をかわしながら反撃の機会を窺いました。
「ハルナ……!」カーターがまた叫びました。「ゾンビ達が……!」
ハルナがプロトレインと戦っている間に、ゾンビ達が街へ向かって足を進めていました。
「そんな……!」ハルナが言いました。「このままじゃ、街がゾンビに襲われちゃう……!」
焦ったハルナの隙を突いてプロトレインがハルナに攻撃を浴びせました。
「うあっ……!」攻撃を受けたハルナが転倒して地面を転がりました。
追撃を仕掛けようとするプロトレインをハルナが倒れたままマジカルブラスターで撃ちました。
「何とかしなくちゃ……!」ハルナが立ち上がりながら言いました。それと同時にプロトレインも体勢を立て直して再びハルナの前に立ちはだかりました。
「くうっ……!」ハルナが歯痒そうに言いました。「このままじゃ間に合わない……!」
次の瞬間、どこからともなく神秘的な刃が飛んできて一部のゾンビ達を倒しました。
「今の攻撃は……!」カーターが言いました。
神秘的な刃の飛んできた方向より漆黒の鎧を身に纏った人物がゆっくりと姿を現しました。
「ブラックナイト……!」ハルナがプロトレインの攻撃をかわしながら言いました。
ゆっくりと歩いていたその人物がゾンビ達の前で立ち止まりました。
「ざっと百体と言ったところか……。」その人物が言いました。「まあ良い。俺の刃の餌食にしてやる。」
その人物がゾンビ達に向かって走り出し、手にする剣でゾンビ達を片っ端から切っていきました。ゾンビ達が次々とその人物に襲い掛かりますが、その人物に攻撃を加える前にその人物に切られ、倒れていきました。
「凄い……!」カーターが言いました。「彼は剣を知り尽くしている……!」
その人物が、自ら百体と見積もった大量のゾンビ達を全て倒し終えました。
それとほぼ同時に、プロトレインがハルナに攻撃を浴びせることに成功しました。
「うああっ……!」ハルナが地面に倒れ込みました。
プロトレインが今度はゾンビを倒したその人物に向かって走り出しました。その人物がプロトレインの接近に対し剣を構え直しました。
「行くぜ!」その人物が走り出しました。
その人物とプロトレインが激しい攻防を繰り広げました。立ち上がったハルナとその傍へと移動したカーターはその戦いを静観していました。
「ハアアッ!」その人物がプロトレインに剣の一撃を与えました。
プロトレインが怯みながら後退していきました。
「俺の剣は光をも超える。果たしてお前に見切れるか?」その人物がそう言って刀を鞘に収めるような形で剣を構えました。
「この構えは……?」カーターが呟きました。
体勢を立て直したプロトレインが再びその人物に向かって行きました。
「黒閃」その人物が目にも留まらぬ速さで向かって来たプロトレインを剣で切りました。
切られたプロトレインが凄まじい叫び声を上げました。そしてその人物が後ろへ振り返ると同時にプロトレインは倒れ、爆発しました。
「フッ、他愛も無い。」その人物がそう言って立ち去ろうとしました。
「待って……!」その瞬間、ハルナがその人物に言いました。
「ん……?」その人物がハルナの方を向きました。
「あなたは……一体……?」ハルナがおそるおそる訊ねました。
「ブラックナイト……俺はそれで構わない。」その人物が言いました。
「あ……。」ハルナは若干気まずい思いで言葉に詰まりました。この時ハルナは軽い気持ちでその人物の呼び名を決めたことを少々後悔していました。
「お前が戦いを続けていれば、或いはまた会うことになるかも知れない。じゃあな。」その人物はそう言って立ち去っていきました。ハルナ達は黙ってその人物が去るのを見届けました。
「一体何者なんだろうね?」カーターがハルナに言いました。
「さあ……?」ハルナが言いました。「でもまあ、こうなった以上もうブラックナイトで良いんじゃないかな。」
「さしあたりそれで行くしか無さそうだね。」カーターが言いました。
こうしてこの日もハルナは、ブラックナイトの力を借りながらも、世界の平和を守ったのでした。