漆黒の毒牙
登場人物
ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。
カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。
ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。ハルナと同型の“マジカルチェンジャー”と魔法の杖“マジカルロッド”を駆使して戦う。
キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。
アオイ:かつてミサキと共に闇の力と戦った魔法少女。ハルナの使用する物よりも低い音声を発する“マジカルチェンジャー”で変身し、魔法の杖“マジカルワンド”を使いこなす。
ハナコ:ハルナのクラスメート。極度のお人好しであり、元気の無い人を見ると放ってはおけない性格をしている。
ブラックナイト:漆黒の鎧を身に纏いし正体不明の剣士。時折姿を現しハルナのことをサポートするが……?
クローディオ:闇の皇子。時期尚早として世界の破壊に否定的な態度を示している。
ソリーサ:闇の幹部。闇の魔法で世界を脅かす。
シン:闇の幹部。闇の機械で世界を脅かす。
ケミル:闇の幹部。闇の薬で世界を脅かす。
ゼノ:闇の幹部。宇宙より邪悪な意思を持つ者を呼び寄せて世界を脅かす。
イオ:闇の幹部。闇の生物兵器で世界を脅かす。
ある日の夜、一人の男性が夜の通りを歩いていました。そしてその男性の前に突如として一体の魔人が姿を現しました。
その男性は魔人の姿を見て驚き、そして慄きました。
その怪人は恐怖に震えるその男性に向けて闇の力によって生成された牙を放ちました。
その男性はその牙を受けて苦しそうな表情を見せ、そしてそのまま倒れました。
その怪人はその様子を見届けた後、その場から姿を消しました。
その後倒れていたその男性がゆっくりと立ち上がり、落ち着いた様子で再び歩き始めました。そしてその体からは僅かに闇の力が発せられていたのでした。
次の日の朝、その男性が別の通りに姿を現しました。
うつろな雰囲気を漂わせながら歩くその男性が通りの真ん中で突然足を止めました。
そして次の瞬間、その男性が黙ったまま一瞬の間その目を光らせ、全身に闇の力を纏い始めました。
周囲にいた他の人々が呆気に取られる中、全身に闇の力を身に纏ったその男性が棒立ちのまま宙に浮き始め闇の力を纏ったその体から暗黒弾を繰り出しました。その男の体から放たれた暗黒弾は地面に直撃すると同時に爆発し、その周りにいた人々はふっ飛ばされました。
別の通りでは別の人物がその男性のように闇の力を身に纏って周囲を破壊していました。
また別の通りでも同様の被害が出ていたのでした。
闇の力を察知したカーターと共にハルナがとある通りに駆けつけました。
「ああっ……!」その瞬間、ハルナは思わず声を上げました。
その通りでは闇の力を身に纏った人々が無表情のまま宙を飛び回り、その体から次々と暗黒弾を放って街を破壊する光景が広がっていたのでした。
「これは一体……!?」カーターが言いました。「町の人々が闇の力に操られてる!?」
「このままじゃいけない……!」そう言ってハルナが構えました。「変身!」
ハルナがマジカルチェンジャーの力で変身しました。
「クククク……!」次の瞬間、ハルナ達の前にソリーサが姿を現しました。
「ソリーサ……!」ハルナが言いました。
「よお、久しぶりだな。」ソリーサが言いました。
「あなたの仕業なの……!?」ハルナが言いました。
「まあ、そんなところだ。」ソリーサが言いました。「オレのしもべ、魔人ボラックがこの町の連中に呪いをかけたのさ!」
「魔人……ボラック……!?」カーターが言いました。
「そう!ボラックの毒を受けた人間は心の闇が増幅され、さらには増幅された心の闇から破壊の力を生み出すようになるのさ!」ソリーサが言いました。
「そんな……!」ハルナが言いました。
「だが安心しな。」ソリーサが言いました。「ボラックを倒せば呪いの効力は切れ、暴れている連中も元には戻る。だが、この調子でいけば世界が滅ぶのも時間の問題かも知れねえな。」
「ソリーサ……!」カーターが言いました。
「教えて!」そう言いながらハルナがマジカルブラスターの銃口をソリーサに向けました。「その魔人はどこにいるの?」
「さあな。」ソリーサが言いました。「脅したってムダだぜ。お前にこのオレは倒せねえよ。」
「私は闇の皇女にも打ち勝った。あなただって倒せるよ!」ハルナが言いました。
「ハッハッハッハッハッハッハッハッ!」ソリーサが言いました。「確かにお前達は闇の皇女に勝利した。だがそれで闇の力が滅んだワケじゃねえ。この世界は何も変わっちゃいない。今も滅亡と隣り合わせのままだ。調子こいてんのは構わねえが、ちょっとは現実を見てみたらどうだ?」
「くっ……!」ハルナが言いました。
「ここでソリーサと戦っても時間のムダだ。」カーターが言いました。「一刻も早くその魔人を見つけ出して倒さないと、世界がメチャクチャになっちゃうよ!」
「その通りだぜ!」ソリーサが言いました。「オレも敢えてお前の邪魔をするつもりはねえから、ありがたく思って魔人探しに励むんだな!」
「くうっ……!」ハルナが言いました。
「クククククククク……!」そう言ってソリーサは姿を消しました。
「カーター、魔人の居場所を察知出来る?」ハルナが言いました。
「ザンネンだけど、それは出来ないよ。」カーターが言いました。「ボクの力じゃ闇の力で溢れているこの町の中で特定の気配だけを察知することは出来ない。」
「うん……。」ハルナが言いました。
「とにかく行くしかない!」カーターが言いました。
「うん!」そう言ってハルナは走り出しました。
別の通りでも闇の力を身に纏った人々による破壊活動が行われていました。
その通りにミサキとキャサリンとアオイが駆けつけてきました。
「これは……!?」アオイが言いました。「一体どうなっているの……!?」
「闇の力によるものね……!」キャサリンが言いました。「闇の力によって人々が操られているんだわ!」
「行くわよ、アオイ!」ミサキが言いました。
「ええ!」アオイが言いました。
「変身!」ミサキとアオイが変身しました。
ミサキとアオイはそれぞれの武器を手に、人々の放つ暗黒弾から街を守り始めました。
闇の力を身に纏った人々によって町中の至るところで爆発が起こっていました。
マジカルチェンジャーを身に着けた一人の魔法少女が時計塔の天辺に立ってその様子を見下ろしていました。
「……。」その魔法少女は黙って町の様子を眺め続けていました。
魔人ボラックがまた一人の人物に闇の牙を打ち込もうとしていました。
そこへハルナとカーターが駆けつけました。
ボラックが闇の牙を放つのを止め、ハルナの方を向きました。その間にその人物は走ってその場から逃げ果せました。
「ようやく見つけた!」ハルナが言いました。「あなたがソリーサの言っていた魔人だね!?」
「フン!」ボラックが構えました。
「あなたを倒して世界の平和を守ってみせるよ!」そう言ってハルナはマジカルブラスターを構えました。
ボラックがハルナに向かって走り出しました。
「ハアッ!」ハルナがマジカルブラスターを撃ちました。
「ウアッ……!」ボラックがマジカルブラスターから放たれた魔法弾を受けて怯みました。
「ハアーッ!」ハルナがボラックに向かって走り出しました。
「ハアッ!ハアッ!ハアーッ!」ハルナがボラックに左手のパンチを浴びせ、さらにマジカルブラスターの銃身で殴りつけた後、キックを繰り出しました。
「ウアアッ……!」ボラックはハルナのキックを受けてふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。
「ウウッ……!」ボラックがゆっくりと立ち上がりました。
「……。」ハルナが黙ってマジカルブラスターを構え直しました。
「ハアッ!」次の瞬間、ハルナが再びマジカルブラスターを撃ちました。
「フンッ!」その瞬間、ボラックが横に転がって飛んできた魔法弾をかわしました。
「……!」ハルナが驚いた様子を見せました。
「ハアアッ!」さらにボラックが闇の牙をハルナに向けて放ちました。
「うっ……!」闇の牙を受けてハルナが苦しそうな表情を見せました。
「ハルナ……!」カーターが叫びました。
「フン。」ボラックが構え直しながらハルナの様子を窺いました。
「ううっ……!」ハルナが苦しそうに呻きました。
「あの魔人の力か……!」カーターが言いました。「呪いの力でハルナがダメージを受けている!」
「くうううっ……!」ハルナは呻き続けました。
「このままじゃハルナが……!」カーターが言いました。
「くっ……!」ハルナが呻きながらもマジカルブラスターの銃口をボラックに向けました。
「ン……?」ボラックが意外そうな様子を見せました。
「ハアッ!」その瞬間、ハルナがマジカルブラスターを撃ちました。
「ウアアアッ……!」ハルナの攻撃を受けてボラックが転倒しました。
「ハルナ……!」カーターが言いました。
「私は……負けない……!」そう言ってハルナはマジカルブラスターに魔力をチャージし始めました。
「ウウッ……!」ボラックがよろめきながら立ち上がりました。
「ハアッ!」ボラックがさらなる闇の牙を放ちました。その闇の牙がハルナに直撃しました。
「ハアーッ!」ハルナは闇の牙を全身に受けながらもマジカルブラスターを構え続けました。
「ンアアッ……!?」ボラックが驚いた様子を見せました。
「マジカルブラスト!」ハルナが大きな魔法弾を放ってボラックを攻撃しました。
「ウアアアアアアアッ……!」ボラックはハルナの攻撃を受けて爆発しました。
闇の力を身に纏った人々がゆっくりと地面に降りて元の状態に戻りました。
「これは……?」闇の力を身に纏った人々の攻撃から街を守っていたアオイが驚いた様子で言いました。
「闇の力が消えたわ!」キャサリンが言いました。
「ハルナちゃん……!」ミサキが嬉しそうにそう言って空を見上げました。
ボラックの呪いが消え、ハルナも落ち着いた様子を見せました。
「大丈夫、ハルナ?」カーターが言いました。
「うん、平気だよ。」ハルナが言いました。「ちょっと苦しかったケド……。」
「うん。」カーターが言いました。
そこへソリーサが姿を現しました。
「ソリーサ……!」ハルナが言いました。
「おめでとう。」ソリーサが言いました。「どうやら世界が滅びる前にボラックを倒すことが出来たようだな。」
「うん……!」ハルナが言いました。
「だがこれで終わったと思ってねえよな?」ソリーサが言いました。「魔人ボラックには倒された時に発動する特殊能力が備わっている!」
「くっ……!」ハルナが言いました。
「現れろ、魔獣ボラック!」ソリーサがそう叫ぶと同時に、ボラックが巨大な魔獣の姿となって復活しました。
「攻撃力を上げて蘇ったか……!」カーターが言いました。「でも、こっちにだって対抗手段はある!」
「うん!」ハルナが言いました。「マジカンダー、召喚!」
ハルナは魔法の力で巨大ロボットのマジカンダーを召喚し、そのコックピットへとワープしました。
ハルナの操縦するマジカンダーと魔獣と化したボラックが対峙しました。
ボラックが無数の闇の牙を放ちました。ボラックの放った闇の牙がマジカンダーの周囲の地面や建物に直撃し火花が飛び散りました。
「リストバルカン!」ハルナがそう言ってマジカンダーの操縦桿を動かすと同時にマジカンダーの右腕に内蔵された機関砲から魔法弾が連続で発射されました。
ボラックはマジカンダーの放った魔法弾を全身に受けて怯みました。しかしすぐさま体勢を立て直すと再び闇の牙を放ってマジカンダーに攻撃を仕掛けました。
「うわああっ……!」闇の牙によりマジカンダーが怯み、それと同時にコックピットにいるハルナも怯みました。
ボラックがマジカンダーに迫り、ゆっくりと横に回りながら尻尾を叩きつけて攻撃を行いました。マジカンダーはボラックの尻尾を受けて怯みながら後退しました。
「くうっ……!」そう言ってハルナが操縦桿を握り直しました。「ハアッ!」
体勢を立て直したマジカンダーが今度は左腕に内蔵された機関砲から魔法弾を放って攻撃を行いました。ボラックはマジカンダーの攻撃を受けて怯みながら後退しました。
「このまま決める!」そう言ってハルナが操縦桿を動かしました。「ラスティング・バースト!」
マジカンダーが両腕の機関砲から同時に魔法弾を放ちました。ボラックがマジカンダーの放った魔法弾を受けて怯みました。さらにマジカンダーは魔法弾を放ち続けました。絶え間なく放たれる魔法弾を受け続けてとうとうボラックは爆発しました。
「フッ、今日のところはオレの負けってコトにしておいてやるぜ!」ボラックの最期を見届けたソリーサがそう言って姿を消しました。「クククククククク……!」
町の様子を眺めていた魔法少女は尚も時計塔の天辺に佇んでボラックとの戦いに勝利したマジカンダーを見つめていたのでした。
戦いを終えたハルナはとある建物の屋上でカーターと落ち合いました。
「おつかれ、ハルナ。」カーターが言いました。
「うん。」ハルナが言いました。
「一時はどうなることかと思ったけれど、世界の平和を守ることが出来て良かったよ。」カーターが言いました。
「そうだね。」ハルナが言いました。
「闇の皇女との戦いに勝利したと言っても、まだまだ闇の勢力との戦いは大変そうだね。」カーターが言いました。
「うん。でも、私は負けないよ。」ハルナが言いました。「私の力で世界の平和を守ってみせる!」
こうしてこの日もハルナは世界の平和を守ったのでした。




