新たなる神
登場人物
ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。
カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。
ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。ハルナと同型の“マジカルチェンジャー”と魔法の杖“マジカルロッド”を駆使して戦う。
キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。
ドグマ:イヌのような容姿を持った妖精。魔法少女はいかなる場合においても世界を守る為に戦わなければならないという考えを持っている。
ディヴィニティ:特殊なマジカルチェンジャーによって変身した魔法少女。特殊なマジカルチェンジャーによって変身者の意志が消失しておりドグマの意志にのみ従って行動する。魔法の槍“マジカルスピア”を使用する。
アオイ:かつてミサキと共に闇の力と戦った魔法少女。ハルナの使用する物よりも低い音声を発する“マジカルチェンジャー”で変身し、魔法の杖“マジカルワンド”を使いこなす。
ハナコ:ハルナのクラスメート。極度のお人好しであり、元気の無い人を見ると放ってはおけない性格をしている。
ブラックナイト:漆黒の鎧を身に纏いし正体不明の剣士。時折姿を現しハルナのことをサポートするが……?
クローディオ:闇の皇子。時期尚早として世界の破壊に否定的な態度を示している。
クローディア:闇の皇女。
ソリーサ:闇の幹部。闇の魔法で世界を脅かす。
シン:闇の幹部。闇の機械で世界を脅かす。
ケミル:闇の幹部。闇の薬で世界を脅かす。
ゼノ:闇の幹部。宇宙より邪悪な意思を持つ者を呼び寄せて世界を脅かす。
イオ:闇の幹部。闇の生物兵器で世界を脅かす。
夏休みの間に闇の力によって平和が脅かされることがありましたが、ハルナの通う中学校は無事に新学期を迎えることになりました。
魔法少女として世界の平和を守りながらも夏休みの宿題をちゃんと終わられていたハルナは穏やかな気持ちで学校へと通うことが出来ていました。その一方で、ハルナが所属しているライトノベル部に出した悲劇は、心に傷を負った少女の作った哀しい作品として他の部員達に受け入れられていました。
「ハルナちゃん、ライトノベル部での話聞いたよ?」その学校でただ一人ハルナが魔法少女であることを知っているハナコがハルナに話し掛けました。「一体どうしちゃったの?去年はあんなに明るい話を書いていたのに……。アレもハルナちゃんの正体をみんなに隠す為の演出なワケ……?」
「いやあ、去年の作品に対する世間の評価が私の期待するものじゃ無くてさ……。」ハルナが言いました。「それで今年はもっと別の作品を書いてみることにしたんだよね……。」
「そうなんだ……。」ハナコが言いました。「それで、期待通りの評価は得られたの……?」
「まあまあかな……。」ハルナが言いました。「まあ、ひとまずこれで私の今のイメージが保たれたなら、結果オーライかな……?」
「きっとみんなハルナちゃんのこと心配すると思うよ。」ハナコが言いました。「あの作品を見てたくさんの友達がハルナちゃんに話し掛けてくるようになるんじゃないかな?そうしたらハルナちゃんの正体がもっとたくさんの友達に知られることになっちゃうよ。」
「そんなこと無いんじゃない?」ハルナが言いました。「可哀想な子にいちいち構おうとする人なんてハナコちゃんくらいだよ。」
「そうかな……?」ハナコが言いました。
「今時ハナコちゃんみたいな子は珍しいよ。」ハルナが言いました。
実際のところハルナの予想通りにその小説の件でハルナに話し掛ける生徒はいませんでした。周りの生徒はただハルナのことを憐れむばかりで、ハナコのようにハルナを救おうと考える生徒はいませんでした。そしてそれはハルナが自身の正体を隠そうとする上では都合の良いことでした。
その日、ミサキはアオイと会っていました。
「久しぶりね、アオイ。」ミサキが言いました。
「ええ。」アオイが言いました。
「ドグマには会えた?」ミサキが言いました。
「ええ。」アオイが言いました。「夏の間探し回ってようやく見つけることが出来たわ。」
「そう。」ミサキが言いました。「それで、どうだった?」
「どうやら彼は完全な操り人形が欲しいみたい。」アオイが言いました。「魔力を持った人間の自我を奪い、闇の力と戦わせようとしているわ。」
「そんな……!」ミサキが言いました。
「彼の考えることは必ずしも間違ったことでは無いのかも知れない。」アオイが言いました。「闇の力からこの世界を守る為には、最後まで闇の力と戦い抜くことが出来る戦士が必要だわ。」
「……。」ミサキは黙っていました。
「でも、彼のしていることは少なからず非人道的な行為よ。私達の価値観からして許される行為では無いわ。」アオイが言いました。
「そうね。」ミサキが言いました。
「それになにより……。」アオイが言いました。「私個人の価値観からすると、そもそも彼自体が気に食わないわ。」
「アオイ……。」ミサキが言いました。
「この際他の事情はどうだって良い。私は彼を痛めつけてやらないと気が済まない。だから彼を阻止しようと思ってる。」アオイが言いました。
「アオイがそれを望むと言うなら、私は何も言わないわ。」ミサキが言いました。
「ミサキ……。」アオイが言いました。
「何……?」ミサキが言いました。
「このことに関するあなたの考えを聞かせて貰える?」アオイが言いました。
「それを聞いてどうするの?」ミサキが言いました。
「今のところ特に何も考えてないわ。とりあえず聞いてみたいだけよ。」アオイが言いました。
「もし私が答えなかったら……?」ミサキが言いました。
「そうね。その時は痛めつけてでも聞き出してやるわ。」アオイが言いました。
「そう……。」ミサキが言いました。「それが今のあなたなのね……。」
「さあ、答えなさい。」アオイが言いました。
「分かったわ。でも、あなたには私の答えは分かっているハズよ。」ミサキが言いました。
「それでも聞きたいの。」アオイが言いました。
「私は人から自我を奪って戦わせるなんて行為は許せない。もしドグマがそんなことをしているのであれば阻止するわ。」ミサキが言いました。「でも、あなたが一人でそれをやりたいと言うのなら、私は決して手を出さない。」
「そうね。」アオイが言いました。「あなたならそう答えるわよね。」
「満足かしら?」ミサキが言いました。
「ええ、それなりにね。」アオイが言いました。「あなたは私が変わったことを知り、私はあなたが変わってないことを知った。それなりの成果と言えるわ。」
「そう……。」ミサキが言いました。「でも、あなたの中にまだ昔と同じあなたが残っていると私は思っているわ。」
「そうね。」アオイが言いました。「気が向いたらで良いから、私を助けて貰える?」
「ええ。」ミサキが言いました。「たとえもうあなたが完全に昔のあなたに戻れないのだとしても、少なくとも今より悪くならないようにしてみせるわ。」
「頼りにしてるわ。」アオイが言いました。
騎兵銃を持ったホムンクルスが一人の人物を襲っていました。壁際に追い詰められたその人物は恐怖におののいていました。そしてそのホムンクルスがその人物を騎兵銃で撃つと、その人物は生命を抽出されて消滅しました。
そこへハルナが通り掛かりました。
「あっ……!」ハルナが言いました。
「フン……。」そのホムンクルスがハルナの方を向きました。
「変身!」ハルナが変身しました。
ハルナがマジカルブラスターを構えました。その瞬間、そのホムンクルスが騎兵銃を撃ちました。
「うあっ……!」そのホムンクルスの攻撃を受けてハルナがマジカルブラスターを落としました。「くうっ……!」
そのホムンクルスが騎兵銃を構え直しました。
そこへミサキとアオイが駆けつけました。
「ハルナちゃん……!」ミサキが言いました。
「変身!」アオイが変身しました。
「ハアーッ!」アオイがそのホムンクルスに向かって走り出しました。
そのホムンクルスが向かってくるアオイを騎兵銃で撃ちましたが、アオイはその攻撃を受けても走り続けてそのホムンクルスを殴りました。殴られたそのホムンクルスは持っていた騎兵銃を手放しました。
「変身!」ミサキも変身しました。
アオイのパンチとキックを受けてそのホムンクルスが転倒しました。
アオイがマジカルワンドを構えると同時にその先端に魔法の刃が生成されました。
「ウアアッ……!」そのホムンクルスが逃げ出しました。
アオイがそのホムンクルスを追って走り出しました。
「アオイさん……!」ハルナがマジカルブラスターを拾って走り出しました。
「ハルナちゃん……!」マジカルロッドを手にしたミサキも走り出しました。
そのホムンクルスが通りの角を曲がりました。
「ウアアアアアアアッ……!」その瞬間、そのホムンクルスの叫び声が聞こえました。
「……!」走ってそのホムンクルスを追いかけていたアオイが、その角の手前で足を止めました。後ろを走っていたハルナとミサキも足を止めました。
「今のは……?」ハルナが言いました。
「気をつけて……!」ミサキが言いました。
「ウアアアッ……!」そのホムンクルスがふらふらとその角から姿を現しました。
「アアア……!」次の瞬間、そのホムンクルスが炎上して消滅しました。
「誰がやったの……?」アオイが言いました。
さらに次の瞬間、その角からディヴィニティが姿を現しました。
「あなたは……!?」ミサキが言いました。
「ドグマの操り人形よ。」アオイが言いました。
「ディヴィニティ……。」ハルナが言いました。
「あの時倒したハズ……。」アオイが言いました。
「うん……。」ハルナが言いました。
「別の人間が変身しているのね……!」アオイが言いました。
「そんな……。」ハルナが言いました。
「さて、今度の人間の魔力はどれくらいのものかしら……?」そう言ってアオイがマジカルワンドを構えました。
「待って……!」ミサキが言いました。「本当に戦うの……?」
「モチロンよ!」アオイが言いました。「彼を阻止するにはそれしか無いわ!」
「果たしてお前に私が倒せるかな?」ディヴィニティが言いました。
「ハアーッ!」アオイがディヴィニティに向かっていき、マジカルワンドを振り回しました。
ディヴィニティは瞬間移動を行ってアオイの攻撃をかわし続けました。
「ハアッ!」ディヴィニティがアオイを殴り飛ばしました。
「うあっ……!」アオイが地面の上を転がりました。
「ううっ……!」アオイがよろめきながら立ち上がりました。
ディヴィニティが瞬間移動でアオイの背後に姿を現し、アオイを殴りました。そしてさらに続けて瞬間移動を行って怯んだアオイを殴りました。
「くうっ……!痛い……!」アオイが言いました。
ディヴィニティがさらに瞬間移動でアオイとの距離を詰め、アオイを殴ろうとしたその瞬間、一発の魔法弾がディヴィニティに直撃しました。
「ウアッ……!」ディヴィニティが怯みました。
魔法弾を放ったのはハルナでした。
「ハルナ……!」アオイが言いました。
「手を貸します、アオイさん!」そう言ってハルナが走りながらマジカルブラスターを発砲しました。ディヴィニティは瞬間移動で魔法弾をかわしました。
「ハルナちゃん……!」ミサキが言いました。
「アイツが特殊能力で時を止めるにはかなりの魔力が必要になるハズ……。それなのに一体何度瞬間移動を行うの……?」アオイが言いました。
「う~ん……。」ハルナが言いました。
「どうやら今ディヴィニティに変身している人間は相当の魔力の持ち主のようね。」アオイが言いました。
「そんな……!」ハルナが言いました。
「そろそろ終わらせよう。」そう言ってディヴィニティがマジカルスピアを構えました。
「マジカルバインド!」その瞬間、魔法の紐がディヴィニティの体に巻き付きました。
「くっ……!ううっ……!」魔法の紐によりディヴィニティは身動きが取れなくなりました。
「今発動した私の魔法には相手の動き封じる力があるわ。」マジカルロッドを構えたミサキが言いました。「身動きが取れなければ、たとえ時間を止めたとしても何も出来ないでしょう?」
「お、おのれ……!」ディヴィニティが言いました。
「良いわ、ミサキ!」そう言ってアオイがマジカルワンドを構え直しました。
「待って、アオイ……!」ミサキが言いました。
「マジカルスラッシュ!」アオイはミサキの言葉に耳を貸さず、ディヴィニティに向かって走り出しました。「ハアーッ!」
「アオイさん……!?」ハルナが言いました。
「ハアッ!」アオイが魔法の刃でディヴィニティを切りつけました。
「ウアアアアアアアッ……!」ディヴィニティが爆発しました。
「アオイ……。」ミサキが言いました。
「ミサキさん……。」ハルナが言いました。
「ミサキ。」アオイが言いました。「今の私の目的はドグマを阻止することよ。」
「ええ……。」ミサキが言いました。
「その為には彼の操り人形を倒さなくちゃならない。」アオイが言いました。
「そうかも知れないわね……。」ミサキが言いました。
「ミサキさん、ディヴィニティにされた人を元に戻す方法があるんでしょうか?」ハルナが言いました。
「私には分からないわ……。」ミサキが言いました。
「あなたはただ魔法少女同士で戦いをしたくないだけよね。」アオイが言いました。
「ミサキさん……。」ハルナが言いました。
「ドグマはヤツの力で私達も消そうと考えているわ。そうである以上私達にヤツと戦わないという選択は存在しない。」アオイが言いました。「その上で変身している人間も救いたいと望むならば、それはあなたの自由よ。でも、私はそこまでは考えない。」
「アオイさん……。」ハルナが言いました。
「ひとまずこの辺りにドグマはいなさそうね。」アオイが言いました。「それじゃあ私は行くわ。じゃあね、ハルナ。」
アオイが去っていきました。
「ミサキさん……。」ハルナが言いました。
「ハルナちゃん……。」ミサキが言いました。「心配要らないわ。結論なら出てる。」
「ミサキさん……。」ハルナが言いました。
「もしあの魔法少女の自我を取り戻す方法が無いのだとしたら、私は彼女を元に戻すことを諦めるわ。そしてもしあの魔法少女が私の前に立ちはだかるものなら、私は彼女を倒すわ。」ミサキが言いました。
「私もその考えに賛成です、ミサキさん!」ハルナが言いました。
「でも、その前にきっとアオイが何とかしてくれるハズよ。」ミサキが言いました。
「はい。」ハルナが言いました。
「それじゃあ行きましょう、ハルナちゃん。」ミサキが言いました。
「はい!」ハルナが言いました。
こうしてこの日もハルナは、ミサキやアオイと共に世界の平和を守ったのでした。




