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魔法の砂糖

登場人物

ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。

カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。

ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。ハルナと同型の“マジカルチェンジャー”と魔法の杖“マジカルロッド”を駆使して戦う。

キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。

ドグマ:イヌのような容姿を持った妖精。魔法少女はいかなる場合においても世界を守る為に戦わなければならないという考えを持っている。

ディヴィニティ:特殊なマジカルチェンジャーによって変身した魔法少女。特殊なマジカルチェンジャーによって変身者の意志が消失しておりドグマの意志にのみ従って行動する。魔法の槍“マジカルスピア”を使用する。

アオイ:かつてミサキと共に闇の力と戦った魔法少女。ハルナの使用する物よりも低い音声を発する“マジカルチェンジャー”で変身し、魔法の杖“マジカルワンド”を使いこなす。

ハナコ:ハルナのクラスメート。極度のお人好しであり、元気の無い人を見ると放ってはおけない性格をしている。

ブラックナイト:漆黒の鎧を身に纏いし正体不明の剣士。時折姿を現しハルナのことをサポートするが……?

クローディオ:闇の皇子。時期尚早として世界の破壊に否定的な態度を示している。

クローディア:闇の皇女。

ソリーサ:闇の幹部。闇の魔法で世界を脅かす。

シン:闇の幹部。闇の機械で世界を脅かす。

ケミル:闇の幹部。闇の薬で世界を脅かす。

ゼノ:闇の幹部。宇宙より邪悪な意思を持つ者を呼び寄せて世界を脅かす。

イオ:闇の幹部。闇の生物兵器で世界を脅かす。

 その日、ハルナは一人で街を歩いていました。

 ハルナは夏休みに家の外に出ることを好んではいませんでしたが、夏休みも半分以上が過ぎてしまっていて家にいるとそれまで放置していた夏休みの宿題をやらなければならない気持ちに苛まれてしまうようになっており、その気持ちから逃れるべくハルナは外出することを選んでいたのでした。しかし、外に出たところでハルナの不安が収まることはありませんでした。

 ハルナは暗い表情を浮かべながら通りを歩いていました。

「そこのお嬢ちゃん。」近くの路地から声が聞こえてきました。

「えっ……?」ハルナがその路地の方を見ました。

「こっちだよお嬢ちゃん。さあおいで。」その声がハルナに呼びかけました。

 ハルナはその時感じていた不安な気持ちから逃れたい一心でその路地へと足を踏み入れました。


 その頃、アオイはとある廃屋でドグマを見つけていました。

「アオイ……。」ドグマが言いました。

「ようやく見つけたわよ、ドグマ!」アオイが言いました。

「俺に何の用だ?」ドグマが言いました。

「この間の続きよ!あなたを痛めつけてやるわ!」そう言ってアオイがマジカルチェンジャーを構えました。

「変わったな、アオイ。」ドグマが言いました。

「ええ、あなたもね!」アオイが言いました。「一体何を企んでいるの?」

「お前には関係の無いことだ。」ドグマが言いました。

「随分と冷たいじゃない。」アオイが言いました。「でもね、闇の勢力と事を構えるつもりなら少なからず私も関係するハズよ。」

「そうだな……。」ドグマが言いました。そしてディヴィニティが姿を現しました。

「誰……?」アオイが言いました。

「ディヴィニティ、今の俺のパートナーだ。」ドグマが言いました。

「へえ……なるほど……。」アオイが言いました。

「ディヴィニティはお前と違いこの俺を裏切ったりはしない。完全な魔法使いだ。」ドグマが言いました。

「裏切らないなんて、どうしてそう断言出来るの?」アオイが言いました。

「ディヴィニティには自我が無い。俺の魔法で変身した人間の意志は全て封印されている。」ドグマが言いました。

「要するに、ソイツは単なる操り人形ってワケね……。」アオイが言いました。

「……。」ドグマは何も言いませんでした。

「完璧主義のあなたのことだから、完全な魔法使いを手に入れた今となっては他の魔法使いは必要無いとか言い出すつもりなんでしょ?」アオイが言いました。「だったらソイツで私を消してみなさい!」

「お前がディヴィニティと戦うにはまだ早い。」ドグマが言いました。

「早いってどういう意味?」アオイが言いました。

「……。」ドグマは答えませんでした。

「良いからソイツを戦わせなさい。さもないとさっき言った通りあなたを痛めつけてやるわよ?」アオイが言いました。

「良いだろう。」ドグマが言いました。「ディヴィニティと戦わせてやる。」

ディヴィニティがアオイの前に立ちました。

「そう来なくっちゃ!変身!」アオイが変身しました。


 その路地には一人の老婆が立っていました。その老婆の手には紙に包まった何かがたくさん入ったバスケットが握られていました。

「お嬢ちゃん、暗い顔をしているね。」その老婆が言いました。「何かあったのかい?」

「……。」ハルナは黙っていました。

「お嬢ちゃんに良いモノをあげよう。」その老婆がそう言ってそのバスケットに入った何かをハルナに手渡しました。

「これは……?」そう言ってハルナがその何かを受け取りました。

「魔法の砂糖さ。」その老婆が言いました。

「……?」ハルナが怪訝そうな表情を浮かべました。

「スイーツは女の子の元気の源。それを食べればお嬢ちゃんもたちまち元気になれるよ。」その老婆が言いました。

「……。」ハルナは正直なところ老婆から渡された食べ物など汚そうで食べられないと思っていましたが、その気持ちをその老婆に悟られてしまうのも不本意であり、どうしようか考えました。考えた末に投げやりな気持ちでその何かを口に入れてみることにしました。

「それじゃあ、頂きます。」ハルナはそう言ってその何かを口に含みました。

「フフフ……!」その老婆が言いました。

「あ……あれ……?」ハルナが顔に手を当てながら言いました。ハルナの視界がどんどんぼやけていきました。


 ハルナが気がつくと、そこには何もない暗い世界が広がっていました。

「あれ……?ここは……?」ハルナが呟きました。

 次の瞬間、どこからともなく少年の笑い声が響き渡りました。

「……!」ハルナがぞっとしました。ハルナはいつからか子供のことが怖くなっていたのでした。

 さらに次の瞬間、ハルナの周囲に無数の少年達が姿を現し、ハルナのことを笑いながら見つめました。

「やめて……!」ハルナが言いました。「そんな純粋な目で私を見ないで……!」

 その少年達が遠くからハルナに向かって手を伸ばしました。

「ダメ……!」ハルナが言いました。「私なんかを触っちゃダメだよ……!」

 その少年達が手を伸ばしたままハルナに向かって歩き出しました。

 次の瞬間、ハルナの手にマジカルブラスターが現れました。ハルナはすかさずそのマジカルブラスターを構えました。

「撃つよ……!」ハルナが言いました。「それ以上近づいたら撃つからね……!?」

 その少年達がいよいよハルナに向かって走り出しました。

「くっ……!」ハルナが言いました。「警告はしたよ?」

 ハルナが近づいてくる少年達を次々と撃っていきました。撃たれた少年達は叫び声を上げながら消滅していきました。

「君達には分からないかも知れないけれど、これが大人の世界なんだよ!」ハルナはそう言ってマジカルブラスターを撃ち続けました。

「裁判なんか起こしても無駄だよ、勝つのは私なんだから!」ハルナは撃ち続けながら叫びました。

「うあああああああっ……!」ハルナが叫びながらマジカルブラスターを撃ちました。

 次の瞬間、少年達はいなくなっていました。

「えっ……?」ハルナが困惑しながら周囲を見渡しました。

「ハルナ……!ハルナ……!」どこからともなくカーターの声が聞こえてきました。

「カーター……?」ハルナがそう言った次の瞬間、再びハルナの視界がぼやけ始めました。

「うう……!」ハルナが言いました。


 ハルナが気がつくと先程の路地に倒れていました。そのすぐ傍にはカーターがいました。

「ハルナ……!大丈夫……!?」カーターが言いました。「一体何があったの……?」

「うう……。」ハルナがゆっくりと体を起こしました。「分からない。」

「魔法の力が感じられる。きっと妖精の仕業だよ!」カーターが言いました。

「妖精……?確か私は変なお婆さんに声を掛けられて……。魔法の砂糖を……。」ハルナが言いました。

「魔法の砂糖……?それだ!妖精がお婆さんに化けて砂糖でハルナに魔法を掛けたんだ!」カーターが言いました。

「どういうコト……?」ハルナが言いました。

「要するに、ハルナは食べてはいけない物を口にしちゃったんだ!」カーターが言いました。「ハルナが食べたその砂糖には魔法の力が込められていたんだよ!」

「だから魔法の砂糖なんだ……。」ハルナが言いました。

「感心してる場合じゃないよ!」カーターが言いました。「一体どんな魔法を掛けられたんだろう……?」

「大丈夫だよ。私はもう大人なんだから、どんな魔法を掛けられたって平気だよ。」ハルナが言いました。

「まだ十分子供じゃないか!」カーターが言いました。「大人は知らない人から食べ物を渡されたって簡単にそれを食べたりしないよ!」

「私だって簡単には食べなかったよ!大人には大人の苦労があって、仕方が無かったんだよ!」ハルナが言いました。

「ハルナの苦労なんてどうせ夏休みの宿題が終わってないことなんでしょ?」カーターが言いました。

「うう……。」ハルナには返す言葉がありませんでした。

「それに大体、大人なんだから魔法を掛けられても平気ってのも筋が通らないよ。」カーターが言いました。

「だってホラ、もう子供じゃ無いんだし……。大人なんてダメになっていくだけじゃん……。」ハルナが言いました。

「ハルナ……。」カーターが言いました。

「でも、カーターと出会えて良かったと思うよ。」ハルナが言いました。

「えっ……?」カーターが言いました。

「魔法使いとして変身している時は、なんだかキレイな存在になってる気がする。」ハルナが言いました。

「ハルナ……。」カーターが言いました。

「まあとにかく、ハルナに掛けられた魔法の気配も無くなってきたしひとまず大丈夫そうかな。」カーターが続けて言いました。「でも、これからは気をつけるんだよ?」

「うん……。」ハルナが言いました。

「それと、宿題はちゃんと終わらせよう。」カーターが言いました。

「え~……。」ハルナが言いました。

「大丈夫!このタイミングで消化し始めれば少なくとも夏休みが終わる直前になって慌てふためくことは無いハズさ!」カーターが言いました。「ボクも協力してあげるよ!」

「カーター……!」ハルナが言いました。「さすがは私のダーティー・フレンドだよ!」

「ダーティーって何……?」カーターが困惑した様子で言いました。

「安心出来るってコト!」ハルナが言いました。


 アオイはディヴィニティと戦っていました。

 アオイはマジカルワンドの先端に魔法の刃を発生させ、それを剣のように振ってディヴィニティに攻撃を仕掛けましたが、ディヴィニティは瞬間移動をしてアオイの攻撃をかわし続けました。

「くっ……!」アオイが攻撃を止めて言いました。「何なの、この能力は?」

「ディヴィニティには時を止める隠された能力があるのだ。」ドグマが言いました。

「時を止める……?」アオイが言いました。

 次の瞬間、ディヴィニティがアオイの背後に姿を現し、アオイを殴り飛ばしました。

「うあっ……!」アオイが転倒して床の上を転がりました。

「お前に勝ち目は無い。」ディヴィニティが言いました。

「くうっ……!」アオイがゆっくりと立ち上がりました。

「これ以上の苦しみを味わいたくなければ大人しく降参サレンダーすることだ。」ディヴィニティが言いました。

「フフッ……。この程度の痛みで降参サレンダーするなんて……。この私を誰だと思ってるの……?」アオイが言いました。

「フンッ!」ディヴィニティが再び瞬間移動を行いアオイを殴りました。

「アアッ……!」アオイが怯みました。

「フン。」ディヴィニティがマジカルスピアを召喚し、その先端をアオイに向けました。「私の力を以ってすればお前に無限大の痛みを与えてやることも出来るのだぞ?」

「わ……分かったわ……!」アオイが言いました。「確かにあなたと戦うのは早過ぎたようね……!」

「フッ。」ディヴィニティが言いました。

「さあ、私にトドメを刺しなさい。」アオイが言いました。

「何……?」ディヴィニティが言いました。

「痛いのもイヤ。降参サレンダーもイヤ。だから一思いに殺して欲しいわ。」アオイが言いました。「それでこの戦いを終わらせましょう。」

「フン……。」ディヴィニティが言いました。「良いだろう。」

 ディヴィニティがマジカルスピアでアオイを突き刺そうと構えました。

「待て……!」ドグマが言いました。

「……!」ディヴィニティの動きが止まりました。

「ハアッ!」アオイがマジカルワンドでディヴィニティを突きました。

「ウアッ……!」ディヴィニティが後退しました。

「くっ……!」ディヴィニティがよろめきながら体勢を立て直そうとしました。

「ウアアアアアアアッ……!」その瞬間、ディヴィニティが消滅しました。

「能力の使い過ぎね。」アオイが言いました。「時間を止めるなんて芸当、ちょっとやそっとの魔力じゃ出来ないハズだわ。魔力を温存することは考えられなかったのかしら……?」

「フン……。」ドグマが言いました。「今の戦い、本来ならばお前にディヴィニティを倒すことは出来なかった。」

「でも、あなたはディヴィニティに攻撃を止めさせた。」アオイが言いました。「それはどうしてなのかしら?」

「……。」ドグマは答えませんでした。

「まあ良いわ。」アオイが言いました。「一応今日のところは私もあなたを見逃してあげるわ。」

「ほう……。」ドグマが言いました。

「でも次に会った時は容赦しないわよ?覚悟しておくことね!」アオイが言いました。

「良いだろう。」ドグマはそう言ってアオイと別れました。


 ハルナはカーターの協力を経て夏休みの宿題を一つ終わらせました。

「よし、終わった!」ハルナが言いました。

「このペースで進めていけば夏休みが終わるまでには余裕で全部片付くね!」カーターが言いました。

「そうだね!」ハルナが言いました。「それにしても夏休みの終わりじゃないのにこんなに集中して宿題が出来るなんて、ひょっとしてあの砂糖のおかげかな?」

「そんなこと無いよ!」カーターが言いました。「全部ハルナの実力さ!」

「ひょっとしてカーターがいてくれたから……?」ハルナが言いました。「そんなワケ無いか!」

「もう……ハルナ……!」カーターが言いました。

「よし、この調子で頑張るぞ!」ハルナが言いました。

 こうしてこの日、ハルナは自らの心の平和を守ったのでした。

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