悪の進化
登場人物
ハルナ:どこにでもいそうな女の子と見せかけて実は魔法少女。魔法の腕輪“マジカルチェンジャー”を使って変身し、魔法の拳銃“マジカルブラスター”を使いこなす。
カーター:ハルナのパートナーであるネコのような容姿を持った妖精の男の子。持ち前の明るさと豊富な知識によりハルナの戦いをサポートする。
ミサキ:ハルナの先輩とも言える魔法少女。今は戦うことが出来ない。
キャサリン:ハルナのパートナーでありカーターの双子の姉に当たる妖精。
ブラックナイト:漆黒の鎧を身に纏いし正体不明の剣士。時折姿を現しハルナのことをサポートするが……?
クローディオ:闇の皇子。時期尚早として世界の破壊に否定的な態度を示している。
クローディア:闇の皇女。
ソリーサ:闇の幹部。闇の魔法で世界を脅かす。
シン:闇の幹部。闇の機械で世界を脅かす。
ケミル:闇の幹部。闇の薬で世界を脅かす。
ゼノ:闇の幹部。宇宙より邪悪な意思を持つ者を呼び寄せて世界を脅かす。
イオ:闇の幹部。闇の生物兵器で世界を脅かす。
街中に一体のエイリアンが姿を現しました。トネス星人ヴァンメークです。
力自慢のヴァンメークは近くに停めてあった車を叩き潰し投げ飛ばすなどして暴れ回り、その場にいた人々は恐れおののきながら逃げ惑いました。
闇の神殿で闇の幹部達が話していました。
「また新しいエイリアンがやってきたみたいだな。」ソリーサが言いました。
「トネス星人ヴァンメークだ。」ゼノが言いました。「トネスは文明の水準が低く、力のみがものを言うまさに弱肉強食の星だ。ヴァンメークはトネス星人の中でもとりあけ凶暴で宇宙全体をその力で支配しようと考えている。ヤツがこれまで様々な惑星で犯してきた罪の数々は宇宙の法における最大級の罰に値するものだが、宇宙の考え方によると未開の星の住人に対し宇宙の法は適用出来ないらしくよってこれまでその罰を免れてきたようだ。」
「なるほどな。また随分とイカレたヤツが来たみてえじゃねえか。」ソリーサが笑みを浮かべながら言いました。
「だがヤツがどれほど凶悪な犯罪者であろうとも所詮は遅れた文明のエイリアンだ。ヤツにはきっと闇の力による武装強化が必要だろう。」そう言ってゼノがその場を離れていきました。
「さて、どうなることやらな。」ソリーサが言いました。
街中で暴れているヴァンメークの前に、逃げ惑う人々と入れ替わりになる形でハルナとカーターが駆けつけました。
「何だテメエ?この俺様と勝負しようってのか?」ヴァンメークが言いました。
「その通り!街をメチャクチャにする悪党はこの私が容赦しないよ!」そう言ってハルナが構えました。「変身!」
「面白え!やってやろうじゃねえか!」変身したハルナを前に一歩も引かない調子でヴァンメークが言いました。
「ハアッ!」ハルナが召喚したマジカルブラスターでヴァンメークを撃ちました。しかしながらヴァンメークは魔法弾を受けてもビクともしませんでした。「……!」
「フン、その程度か。今度はこっちから行かせてもらうぞ!ウオオオオオオオッ!」ヴァンメークがハルナに襲い掛かりました。
「……!」ハルナが咄嗟に向かってきたヴァンメークを蹴ろうとしましたが、ヴァンメークはハルナの攻撃を片手で弾くと、もう片方の手でハルナを殴りました。殴られたハルナはマジカルブラスターを手放して地面に倒れ込みました。
「ハルナ……!」カーターが叫びました。
「フン!」ヴァンメークがうつ伏せに倒れているハルナの体を両手で掴み、自身の頭上まで持ち上げました。
「うわああああああっ……!」持ち上げられたハルナは驚いて声をあげました。
「トリャアッ!」ヴァンメークがそのままハルナを投げました。
投げられたハルナは近くにあった木製のベンチに突っ込みました。ハルナがぶつかった衝撃によりそのベンチはバラバラになって壊れてしまいました。
「うう……いたい……。」ハルナが立ち上がろうともがきました。
「ほう、まだやろうってのか。その根性だけは褒めてやる。」ヴァンメークがハルナににじり寄りながら言いました。「だがお前は俺に勝つことは出来ない。」
「そんなことは……!」ハルナがよろめきながら立ち上がりました。
「フン!」ヴァンメークがハルナの頭に拳骨を振り落としました。
「うっ……!うう……。」ヴァンメークの拳骨を受けてハルナは頭を押さえながら地面に座り込みました。
「ワッハッハッハッハッ!どうだ思い知ったか?今回のところはこれくらいで勘弁しといてやる。だがもしもう一度俺様の前に立ってみろ。その時はお前の体を八つ裂きにしてその日の晩飯にしてやるぞ!ハッハッハッハッハッ!」ヴァンメークがそう言ってその場を後にしました。
カーターが頭を押さえるハルナの傍にやってきました。
「大丈夫、ハルナ?」カーターが言いました。
「うう、いたい……。」ハルナが頭を押さえたまま言いました。
「アイツ……これと言った特殊能力は持ち合わせていなさそうだったけど、あの攻撃力は厄介だな……。」カーターが言いました。
「しかもアイツ、私のこと食べるって言ってたけど……。」ハルナが言いました。
「どうせただのハッタリだよ。気にすることないさ。」カーターが言いました。
「うん……。」ハルナが言いました。
「でも、油断したら命は無さそうだよ。」カーターが言いました。
「それでもやるよ。次にアイツが姿を現した時に決着をつける。」ハルナが言いました。
「うん。」カーターが言いました。
その頃、ヴァンメークが路地で休んでいました。
「ふう、ひと暴れしたら疲れちまったぜ。少し休んでからまた暴れるとするか。」ヴァンメークが一人で言いました。
そこへゼノがやってきました。
「ん……?何だテメエは?」ヴァンメークがゼノに言いました。
「私はゼノ。お前に良い話がある。私と取引をしてみないか?」ゼノが言いました。
「取引だと……?」ヴァンメークがゼノの言葉について考えながら言いました。「断る!」
「ほう……。」ゼノが考えながら言いました。「会ったばかりの私のことが信用出来ないと言うのならそれは無理もない話だが、決して悪い話では無いことは保証しよう。せめて話だけでも聞いては貰えないだろうか?きっとお前の野望を叶える手助けになるハズだ。」
「断る!」ヴァンメークが言いました。
「何……?」ヴァンメークのきっぱりとした態度にゼノが動揺した様子で言いました。「何故だ……?」
「俺様は宇宙最強だ。誰の手も借りずともこの宇宙を支配してみせる。よってお前の話など聞く必要がない!さあ、この俺が機嫌を損ねる前にとっとと立ち去れ。さもなくば今この場でお前を八つ裂きにし食ってやるぞ。」ヴァンメークが言いました。
「くっ……!」ゼノが拳を握り締めて言いました。
「やはり取引が出来るような相手では無かったか……。この未開人め……!」そう吐き捨ててゼノが姿を消しました。
「フン。」ヴァンメークが言いました。
闇の神殿にゼノが戻ってきました。
「取引は上手く行ったのか?」イオがゼノに訊ねました。
「失敗だ。トネス星人と取引など無理があったようだ。」ゼノが答えました。
「フン。と言うことは僕の発明が日の目を見るのはまだ先になりそうだな。」シンが言いました。
「私のエリクシルが必要な時はまたいつでも声をかけてくれ。現時点で十分な準備が出来ている。」ケミルが言いました。
「ああ。」ゼノが言いました。
「さて、ヴァンメークについてだが……。」イオがまた口を開きました。
「どうなることやらな。」ソリーサが薄ら笑いを浮かべながら言いました。
「フン、最早俺の知ったことか。」ゼノが言いました。
「フッ、ならばヤツは私の実験材料にさせて貰おう。」イオが言いました。
「ん……?」ゼノが言いました。
その頃、再びヴァンメークが街中に姿を現しました。
「アイツめ、俺のことをバカにしやがって……!どうにも気が収まらねえ!こうなったらもうひと暴れだ!」ヴァンメークがそう言って暴れ始めました。
またまた人々と入れ替わりでハルナとカーターが姿を現しました。
「そこまでだよ、悪党!」ハルナが言いました。
「テメエ……!」ヴァンメークが言いました。
「変身!」ハルナが変身しました。
「懲りないヤツめ!今度こそ容赦しねえ!ブッ潰してやる!」ヴァンメークがそう言ってハルナに襲い掛かりました。
ハルナが向かってきたヴァンメークを殴りましたが、ヴァンメークはビクともせずにハルナを殴り返しました。ハルナは怯んで後ずさりましたが、続くヴァンメークの攻撃をかわし、再びパンチを浴びせました。
ハルナとヴァンメークの殴り合いが続きました。素早さで上回るハルナはヴァンメークの攻撃をかわしながら次々と攻撃を当てていましたが、ヴァンメークは怯む様子を見せずに攻撃を続けました。
「そこだ!」ヴァンメークがハルナの動きを捉えてパンチを浴びせました。
「うっ……!」ヴァンメークの攻撃を受けたハルナの動きが止まりました。
「オリャアッ!」ヴァンメークがアッパーカットを繰り出しました。
「うわあああっ……!」ハルナがふっ飛ばされて地面に倒れ込みました。
「フン、手こずらせやがって。」ヴァンメークが倒れているハルナににじり寄りました。
「くうっ……!」ハルナがよろめきながら立ち上がりました。
「ほう、まだやるってのか?」ヴァンメークが言いました。
「マジカルブラスター!ハアッ!」ハルナがマジカルブラスターを召喚し、ヴァンメークに向けて撃ちました。
「うおっ……!」魔法弾を受けてヴァンメークが怯みました。「バ、バカな……!」
「……。」ハルナが黙ってマジカルブラスターを構え直しました。
「ハルナにはダメージを受ける度に攻撃力が上がる隠された能力がある!」カーターが言いました。
「何だと……!?」ヴァンメークが言いました。
ハルナが再びマジカルブラスターを発砲しました。
「うああああっ……!」ヴァンメークが再び怯みました。
ハルナがそのままマジカルブラスターのチャージを開始しました。
「くっ……!この俺が攻撃力で負けるなど……!」ヴァンメークがよろめきながら言いました。
「マジカルブラスト!」ハルナが大きな魔法弾を放ちました。
「ウアアアアアアアッ……!」大きな魔法弾がヴァンメークに直撃し、爆発が起こりました。
「やった!」カーターが言いました。
しかし次の瞬間、炎の中よりヴァンメークがよろめきながら姿を現しました。
「……!」ハルナが驚いた様子を見せました。
「まだだ……!まだ……終わらねえ……!」ヴァンメークが言いました。
「なんて耐久力だ……!」カーターが言いました。
「でも、最早私の勝利は揺るがない!」そう言ってハルナが再びマジカルブラスターを構えようとしました。
その次の瞬間、空の彼方より巨大な一つの目を持った不気味な生物達が飛んできてヴァンメークの体に取りつきました。
「うっ……!何だ……!?」ヴァンメークがもがきながら叫びました。
「……!」ハルナとカーターも予想外の事態に狼狽えました。
「何がどうなってやがる……!?ウワアアアアアアッ……!」その瞬間、その不気味な生物達がヴァンメークの体と融合し、ヴァンメークは複数の巨大な目を体に持つ怪獣へと変異しました。
闇の神殿でイオがその不気味な生物の一体を他の闇の幹部達に見せていました。
「何だその生き物は……?」ゼノが訊ねました。
「グランスを覚えているか?」イオが言いました。
「グランス……。」シンが呟きました。
「以前お前が作ったアンデッドのコードネームだったな。無限に進化し続ける生物兵器。」ケミルが言いました。
「そう。そしてコイツはグランスの細胞にあらゆる生物の持つ負の力を練り合わせて作り上げた闇の寄生生物、ヴァーミンだ。」イオが言いました。
「ヴァーミン……。」ゼノが言いました。
「なるほどな。確かにソイツにはグランスの特徴が出てやがるぜ。」ソリーサがヴァーミンの目を見ながら言いました。
「ヴァーミンはあらゆる生物に寄生してその肉体を変異させることが出来る。そして複数のヴァーミンを同時に寄生させることで急激な肉体の変異を引き起こしヤツのような巨大な姿へと一気に変異させることも可能なのだ。尤も、ヴァーミンに寄生された者は高い確率で自我を失い、破壊活動のみを行うようになるがな。」イオが言いました。
「そういうことか。」ゼノが言いました。
変異したヴァンメークが街を破壊し始めました。自我が失われながらもその攻撃力はヴァーミンによってさらに強化されており、その腕の一振りでビルが粉々になってしまいました。
「後もうちょっとで私の勝ちだったのに……!」ハルナが悔しそうに言いました。
「後もうひと踏ん張りだ!マジカンダーを呼ぼう!」カーターが言いました。
「うん!マジカンダー召喚!」
ハルナの操縦するマジカンダーが変異したヴァンメークと対峙しました。
ヴァンメークはマジカンダーを見るや否やビルを壊すのを止め、まっすぐにマジカンダーへと向かっていきました。
「ハアッ!」マジカンダーが右腕に内蔵された機関砲でヴァンメークを攻撃しました。
ヴァンメークは魔法弾を受けながらも怯むことなくマジカンダーへと近づいていきました。
「くっ……!」ハルナが言いました。
マジカンダーとヴァンメークが殴り合いました。ヴァーミンによりさらに防御力を増したヴァンメークはマジカンダーの拳を受けても怯まず、ヴァンメークの拳を受けたマジカンダーは徐々に後退していきました。
「ううっ……!」ヴァンメークの攻撃を受けて激しく揺れるコックピット内でハルナが怯みました。
ヴァンメークがさらにマジカンダーに攻撃を加えようとしました。
「ハアッ!」ハルナがマジカンダーの操縦桿を動かしました。
ヴァンメークの拳が直撃するよりも先にマジカンダーが左腕の機関砲をヴァンメークに向けて至近距離で発射しました。
魔法弾を受けてヴァンメークが呻き声をあげながら後退しました。
「マジカンダーの攻撃力は操縦者の攻撃力による影響を受ける。ダメージを受けたことでハルナの攻撃力がさらにアップしたことで同時にマジカンダーの攻撃力もアップしたんだ!」カーターが言いました。
「よし、このまま決めるよ!」ハルナがそう言って操縦桿を動かしました。「ラスティング・バースト!」
マジカンダーの両腕から絶え間無く発射される魔法弾を受けてヴァンメークは爆発しました。
戦いを終えてハルナとカーターが近くの建物で落ち合いました。
「ヤツを巨大化させた謎の生物、アレはひょっとしてイオの発明かな……?」カーターが言いました。
「誰の仕業にせよ連中はなんか色々な手を隠し持ってるよね。」ハルナが言いました。
「うん。」カーターが言いました。
「でも、敵がどんな手を使ってきてもこの世界の平和は私が守ってみせるよ!」ハルナが言いました。
こうしてこの日もハルナは世界の平和を守ったのでした。