雨に終わる夏の夜
雨……
雨……
雨……
その交差点に雨は流れる
青の光は
帰れない祖国を悲しむ女の背中から
黄色の光は
辿りつけない明日を笑う女の指から
赤い光は
血を忘れてしまった野良犬のわたしから
雨音……
雨音……
雨音……
傘を叩く止めどない滴は
全ての匂いを消していく
すれ違う甘い若さ
行違う苦い常識
追い抜いていった痺れるような流線形
それらは傘の内に暫くあり
風もなく消えた
なにか
思い出すようで
なにも
想うこともなくて
ただ
濡れている町
濡れている景色
そのなかのわたしとして
水……
水……
水……
雨なんてどうして降るのだろう