獣人の尻尾 3
「貴女の持つモフモフは、極上。それを勇者だけに触らせるなんて…… ふんわりとしていて意外にしっかりとした耳。でも、力を入れたら壊れそうで。しなやかに動き、そして、何かの拍子で毛が肌に触れたときは、くすぐったさと暖かさに、腰砕けになってしまうわ。あの、なんとも言えぬ幸福感。触れたのはわずかな時間なのに、余韻が長く…………、あら」
モフモフの素晴らしさを語っているうちに犬娘がいなくなってしまった。
仕方なく聖女様が待つ部屋に戻ることにした。
「ズルいです、ズルいです。聖女様」
部屋には聖女様と犬娘がいた。
それに犬娘が聖女様に抱かれて、ぷるぷると震えている。耳なんてぺったりと垂れている。
羨ましすぎます、聖女様。
這うように近づくと、聖女様に静止するように言われる。
「そこで止まって、サラ。ビェタをこれ以上怯えさせないで」
あれ、聖女様の態度、まるで私が犬娘に何かしたみたい。
「誤解です。犬娘は自分に自信がないようだったから、犬娘の素晴らしさを少し話しただけです。しっぽは一日中愛でていられますからね」
そして、私にもしっぽを触らせろ!
犬娘はさらにピュルピュルと震えだした。
「サラ、落ち着きなさい。巫女の仮面が取れかかっていますよ」
あら、いけない。地が出ていた。
私と聖女様は信仰の対象と成りうる存在である。そのため、人前ではそれなりの行動が求められる。普段は清く正しく美しくを心がけていればいい。
「気が抜け過ぎでしたね。そう、疲れのせいです。もう寝ましょう」
聖女が一緒に寝ようと言ってくれたのだ。実行に移さねば。
いそいそとベッドメイクを始める。
枕3つ並べたところで、聖女様が言った。
「サラは一人で寝なさい」
そんな、聖女様と犬娘に挟まれて至福の時間を過ごすはずだったのに。
聖女の絶対命令に逆らえず、私はシーツを噛み締めて一人で寝ることになった。
犬娘は聖女様のベッドで寝た。
やっぱり聖女様、ズルいです。
私が入れてもらえなかったベッドから犬娘が声をかけてきた。
「サラが言ってくれたこと。ちゃんと考えるから」
「はい」
犬娘が聖女様に隠れながらだけど、真剣な声だったので、巫女の顔で返事をした。
何か特別なこと言ったかな?
モフモフの素晴らしさを語ることはモフリストとしては、当然のことだけど……
後は、子供じゃないなら自立しろみたいなこと言ったかな。
犬娘の自立って、もしかして、勇者のハーレムからの卒業?
それは、ロリが減るということになる。
まっずいわ!
新たにロリが補充される‼
勇者のまわりにいる女たちの中で一番年下は11歳の私だ。
強制的に加入させられるかも。
犬娘には悪いけど、このままハーレム要員でいてくれたほうが私的には助かる。でも、勇者にモフモフを独り占めされるのは嫌だな。
はっ、いたじゃない。永遠のロリ、女魔法使いが。
すでに、彼女に確たる地位を築いてもらったら、ロリを増やす必要がなくなる。
是非とも頑張ってもらわなければ!
明日話そう。