獣人の娘よ
獣人の娘よ。
その感情は勇者に恋する故に持ったものか。
恋に由来するものか。
貴女の望みは、故郷の村から出ることだったはず。
貴女を虐げる人たちから、逃げることだろう。
叶えられた今、どうしたいのだ。
連れ出してくれた勇者に好意を持つのは分かる。
勇者の力になりたいと思っているのだろう。
貴女は誰よりも早く危険を察知してみんなを助けてくれた。
魔王城で傷ついた彼を廃村に運んだのは貴女だ。
苦境から救ってくれた恩は十分返している。
勇者が魔王討伐に貴女の力を求めた。
勇者が王都に行くから、付いていく。
勇者の目的が貴女の目的になっていないか。
これ以上は依存ではないのか。
子供ではないというのなら、勇者に依存するのではなく、自分の足で立った生き方をすべきだ。
少なくとも自立を目指して行動すべきだろう。
私には囚われる相手を家族から勇者に替えただけに見える。
かまって貰えないから、不安なのだろう。
自分という存在が勇者にとってさほど大きくないことに。
彼女らの身代わりでしかないことに。
勇者の近くにはいつも女がいた。
恋というのなら、なぜ今日まで嫉妬しなかった。
獣人の娘よ。
勇者はモフモフしたいだけだ。