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聖女の掟 2



 素朴なお堂で、あまりに型式にとらわれた事をしても仕方ない。


 大きく深呼吸を数回した。


「聖歌を歌います」


 作詞作曲どっかの誰か。訳詞編曲サラ。

 歌いますは、国営放送の早朝に流される《レイディオ体操の歌》。


「ーーーーーーーーーー」


 私はアカペラで歌い始めた。

 ロレーヌ様は膝をつき、祈りの体勢をととる。



 歌詞の奇妙さは古代語にすることで深い意味があるように思わせ、曲は讃美歌調にして荘厳な感じを出した。

 神殿で歌うときは声の反響とかを気にするが、今日はロレーヌ様の耳に届けばいい。

 私は2番まで感情豊かに歌い上げた。


 聖女様の真摯な祈りのに私は罪悪感を覚えた。

 ふざけ過ぎた。



 呼吸を整え、ロレーヌ様と向きあった。

 私にはここからが重要だ。

 礼拝することで、この場を神聖な空間と変えたのだ。


 

「今後の話をするために、お呼びしました」


「…………王都に何時出発するかってこと? それはアント君と相談しないと」


「いえ、私がお話ししたいのは、王都に凱旋した後の事です」


 今までは魔王討伐が使命と行動し、また道半ばで命を落とす可能性も大きかった。ロレーヌ様は討伐が達成された後の身の振り方を考えてはいなかったのでしょう。


「えっと、」


 何か言おうとしたが、言葉にならなかった。


「神殿の意向を話してもよろしいですか」


「あっ、はい。お願いします」


 ロレーヌ様は神殿が選んだ聖女だ。神殿の意向を無視はできない。

 巫女見習いが神殿の意向なんて、本来はかってに話してはいけないけど、私の目的のため、利用させていただきます。神殿で育った私には想像は簡単にできる。


「このまま神殿に所属する聖女をた続けてでいただきたいと、考えています。同時にロレーヌ様は年頃の若い娘だということも理解しています」


「そう、……ですか」


 これだけだと、意図がわかりずらいでしょう。


「もし、故郷に恋人がいらっしゃるのでしたら結婚してもいいですよ」


「エエエ、そそそ、そんな人いないです」


 慌てて否定するけど、神殿はそんな事はとうに調べている。面倒な身内がいないことや、過去に飼っていたペットまで。


「ロレーヌ様はお美しいから、決まった方がいらっしゃると思っていました」


「やだ、やめてよサラ。まあ、そのね。気になる人はいるのだけど」


 照れてそんな事言うロレーヌ様は可愛らしいこと。やっぱり、勇者には勿体ない。


「その方は勇者ですか」


 指摘するとさらに顔を赤らめた。


 ロレーヌ様の手を取り、私は言った。


「勇者は、 ダメです。

 聖女の伴侶として相応しくありません」


「……なぜ、……そんな……こと……いうの」


 否定されるとは思っていなかったのでしょう。それも、年下の巫女見習いに。

 でもここはロレーヌ様の理性に訴える。感情面を揺さぶっても、勇者に傾くだけだ。


「王女との結婚が決まっているからです」


「でも妻を複数、持つことは……」


 忌々しいことに、この国では一夫多妻制が認められている。認められているが、女性の多数は望んでいない。

 ロレーヌ様がそれを知らないはずはない。


「ロレーヌ様、聖女の伴侶となる人には条件があります。

 その方は聖女をただ一人を一途に愛するというものです。

 その絶対の条件が満たされないため、勇者は聖女の伴侶には相応しくないのです」





 ーーーーーーーーーー 聖女よ







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